有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン
III.方法
5. 対象文献の選択のための系統的総括
ガイドラインを作成する上で、証拠となりうる文献を抽出することは極めて重要である。コンセンサスや専門家の意見に基づく、系統的総括(Systematic review)によらないガイドラインは、現状の医学知識を的確に反映しているとは限らず、バイアスがある17)。系統的総括(Systematic review)とは、「医療による介入の効果を同定し証拠としてまとめ、研究結果の普遍性や一貫性、また矛盾点を明らかにするための効率的かつ科学的な技術」と定義される18)。SIGNあるいはNICEによるガイドラインでは、系統的総括を含むガイドライン作成手順の詳細を公開している15),19)。当研究班においても、諸外国におけるガイドラインを参考に、がん検診の評価のための系統的総括に関する方法を有効性評価に基づくがん検診ガイドライン作成手順9)としてまとめている。
文献検索により抽出した文献の抄録について、文献レビュー委員会のメンバーが2人1組(泌尿器科医と疫学及び関連分野の専門家で2人1組とした)で検討し、さらに両者の採否の評価を照合した。採否の判定や評価内容の不一致例は、前立腺がん検診レビュー委員会が採否の最終決定を行った。
抄録レビューにより抽出した文献を、文献レビュー委員会のメンバーが2人1組(泌尿器科医と疫学及び関連分野の専門家で2人1組とした)となり、研究方法別チェック・リストを用いて、論文レビューを行い、証拠として採用可能なものを絞り込んだ。研究方法の選別は図3のフローチャートに基づき、研究方法別チェック・リストを決定する。研究方法のフローチャートは、NICE及びCDC Community Guideのガイドライン作成手順に準じて作成したものである11),19)。第一段階で介入(検診)の有無を判断し、介入研究と観察研究を識別する。無作為割り付けのない比較対照試験はコホート研究用チェック・リストを用いて評価するが、証拠の検討段階では、通常のコホート研究と異なる研究デザインであることを明確にする必要がある。介入が行われ、対象集団に無作為割り付けが行われた研究は、NICE及びCDC Community Guideのガイドライン作成手順と同様に、無作為化比較対照試験として評価されることが原則である11),19)。従って、研究結果にかかわらず、恣意的にコホート研究やその他の研究の基準に当てはめて行われた評価は不適切な判断となる。個別研究の質の評価は、前立腺がん検診レビュー委員会のほか、研究班会議全体での討議も行い、バイアスや交絡因子の制御が適切になされているかを考慮し判定した。また、最終的な論文の採用には、文献レビュー委員を含めた研究班会議全体での討議で、全体の意見の合意を確認した上で決定した。その結果、各方法別に再検討した結果をエビデンス・テーブルとしてまとめ、検診方法別の証拠のレベルや不利益の判定を行った。
図3 研究デザインの判断基準

RCT:randomized controlled trial(無作為化比較対照試験)
CCS:case-control study(症例対照研究)
CL:check list
CCS:case-control study(症例対照研究)
CL:check list
【参照】
「IV.結果 2.検診方法の証拠 2)前立腺特異抗原(PSA)」