インプラントの画像診断ガイドライン 第2版

 
インプラントの画像診断ガイドライン


序論:
インプラント術前診査における口内法・パノラマX線撮影、断層撮影

CQ:インプラント診断におけるCT以外の撮影法の役割はなにか?

1)要約:欧米のガイドラインでは、インプラント術前検査において、単純X線撮影(口内法X線撮影、咬合法X線撮影、パノラマX線撮影、側方頭部X線規格撮影)に従来型断層撮影(1歯ないし小領域)あるいはCT(多数歯領域)を組み合わせることを推奨している。しかし、CT以外の撮影法の役割については十分な検討はなされていない。
2)推奨度:B(病変確認などのため、CTと組み合わせて単純X線撮影を行なうことが勧められる。)
3)委員会からのコメント:
  • 術前に必要とされる情報のうち,単純X線撮影で評価可能なのは,残存歯槽骨の高さ,骨形態,病変の存在,解剖構造の位置(上顎洞、下顎管、オトガイ孔,切歯管等)などである(EL. VI)。
  • パノラマX線撮影では,固有の拡大率により周囲解剖構造の位置把握の精度は低くなるが、参照体を用いることによりCTとの差は少なくなる(EL. V)。
  • 断層撮影は、欧米のガイドラインで顎骨の横断像を得る方法として推奨されている。従来型断層撮影装置とパノラマX線撮影装置に断層機能を付加した装置によるものと大別できる。適切な断層面の設定が重要であり、多数のインプラントの埋入が計画されている場合には、個々の計画部位に断層面を合わせる必要があるために、検査時間を要する。しかしながら、少数歯欠損の検査の場合には被曝線量は少ない。この画像の寸法精度は高く、また細かい骨梁構造を観察できることが報告されている(EL. V)。
  • デジタル撮影法は通常のフィルム法より、精度及び正確度が高い(EL. IV)。
  • 高度顎堤吸収を伴う患者の下顎前歯部インプラントの辺縁歯槽骨吸収評価では、口内法X線撮影とパノラマX線撮影との差は少ない(EL. V)。

(村上秀明,佐野 司,田口 明,林 孝文)


【エビデンス】

CQ:インプラント診断におけるCT以外の撮影法の役割はなにか?

作成者:田口 明
作成日:2007/3/9


I.はじめに
歯科用インプラントの術前、術後診査において、CT以外の撮影法(口内法撮影及び口外法撮影)の果たす役割について、特に診断精度に重点をおいて文献に従い考察した。

II.方法
1.PubMed、OVIDでの検索
PubMedでは、1991〜2006の文献について、“dental”and“implant”and“accuracy”and“panoramic”or“intraoral”で検索し、12編の論文が検索された。OVIDでは、“dental implants/ or osseointegration/ or dental implantation, endosseous/”で14,701の文献、“radiography, dental, digital/ or radiography/ or radiography, panoramic/ or radiography, bitewing/ ”で21,499の文献を得て、最終的に“accuracy”をキーワードとして、人体における項目(limit to human)に絞って、28編の論文が検索された。Systematic reviewでは、Cochraneについて検索を行ったが、関連論文は検索できなかった。医学中央雑誌では、2001〜2006について“インプラント”and“レントゲン”and“有用性”or“再現性”について検索したが、ヒットしなかった。得られた文献について、診断に言及しないもの、case report、review論文及び同一施設での同様の発表は除外とした。なお、これら文献に加え、American Academy of Oral and Maxillofacial Radiologyが報告しているposition paperを2編(2000、2001)、European Association for Osseointegration (E.A.O.)のガイドライン(2002)及び歯科放射線における防護に関するヨーロッパのガイドライン(Radiation Protection 136,The safe use of radiographs in dental practice, 2004)を基本参考文献として加えた。

2.結果
検索された論文の内訳は、術前の下顎での距離計測に関するものが3文献、術後インプラント辺縁部歯槽骨吸収に関するものが4文献、術後インプラント周囲透過帯評価に関するものが2文献であった。米国及びヨーロッパのガイドラインによれば、術前検査においては、単純X線撮影法(口内法、咬合法、パノラマ撮影法、側方頭部X線規格撮影法)に従来型断層撮影(1歯ないし小領域)あるいはCT(多数歯領域)を組み合わせることを推奨している。術前に必要とされる情報のうち、単純X線撮影で評価可能なのは、残存歯槽骨の高さ、骨形態、病変の存在、解剖構造の位置(上顎洞、下顎管、オトガイ孔、切歯管など)である。パノラマ撮影では、固有の拡大率により周囲解剖構造の位置把握の精度は低くなる(文献1)が、参照体を用いることにより、CTとの差は少なくなる(文献8)。術後歯槽骨吸収の評価には、口内法(フイルム保持器を用いた平行法撮影)が有効とされている。デジタル撮影法は、通常のフィルム法より、精度及び正確度が高いようである(文献2, 5)。高度顎堤吸収を伴う患者の下顎前歯部インプラントの辺縁歯槽骨吸収評価では、口内法撮影とパノラマ撮影との差は少ない(文献9)。インプラントの成否に関与するインプラント周囲透過帯の評価に関しては、実験的には診断能は低いが(文献6)、臨床的には診断能は高く、観察者内再現性も良好である(文献7)。

III.まとめとお勧め
「放射線防護に関するヨーロッパのガイドライン」にあるように、インプラントのためのX線検査に関するエビデンスに基づいたガイドラインは未だ乏しい。CT以外の撮影法の役割は、十分な検討はなされてはいない。今のところ、欧米の術前診断においては、パノラマ撮影、口内法撮影に加えて、従来型断層撮影かCTを用いることが推奨されているが、現状の日本ではCT(全身用あるいは頭頸部用)が一般的に用いられており、単純撮影で予備的診査を行い、CTを組み合わせるのが基本となる。術後は口内法(平行法)により、インプラント辺縁及び周囲を評価できるが、今後デジタル撮影法がフィルム法に取って代わる可能性は高い。


1) Bou Serhal C, Jacobs R, Flygare L, Quirynen M, van Steenberghe D. Perioperative validation of localisation of the mental foramen. Dentomaxillofac Radiol 2002;31(1):39-43.
2) De Smet E, Jacobs R, Gijbels F, Naert I. The accuracy and reliability of radiographic methods for the assessment of marginal bone level around oral implants. Dentomaxillofac Radiol 2002;31(3):176-81.
3) Gher ME, Richardson AC. The accuracy of dental radiographic techniques used for evaluation of implant fixture placement. Int J Periodontics Restorative Dent 1995;15(3):268-83.
4) Ludlow JB, Nason RH Jr, Hutchens LH Jr, Moriarty J. Radiographic evaluation of alveolar crest obscured by dental implants. Implant Dent 1995;4(1):13-8.
5) Matsuda Y, Hanazawa T, Seki K, Sano T, Ozeki M, Okano T. Accuracy of Digora system in detecting artificial peri-implant bone defects. Implant Dent 2001;10(4):265-71.
6) Sewerin IP, Gotfredsen K, Stoltze K. Accuracy of radiographic diagnosis of peri-implant radiolucencies--an in vitro experiment. Clin Oral Implants Res 1997;8(4):299-304.
7) Sundén S, Gröndahl K, Gröndahl HG.Accuracy and precision in the radiographic diagnosis of clinical instability in Brånemark dental implants. Clin Oral Implants Res 1995;6(4):220-6.
8) Tal H, Moses O. A comparison of panoramic radiography with computed tomography in the planning of implant surgery. Dentomaxillofac Radiol 1991;20(1):40-2.
9) Zechner W, Watzak G, Gahleitner A, Busenlechner D, Tepper G, Watzek G. Rotational panoramic versus intraoral rectangular radiographs for evaluation of peri-implant bone loss in the anterior atrophic mandible. Int J Oral Maxillofac Implants 2003;18(6):873-8.

 

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