(旧版)科学的根拠に基づく「快適な妊娠出産のためのガイドライン」
Research Question
RQ5 産痛緩和
議論・推奨への理由(安全面をふくめたディスカッション)
臨床では経験的に行われている産痛緩和のケアが様々あるが、その効果を検証して報告している文献は少なかった。そのため文献からエビデンスがあったものに限定してあげることとする。
分娩第1期に自由な姿勢で、行動の制限なく過ごすこと、分娩第1期後半の入浴、マッサージや指圧、鍼は産痛の緩和に役立つと考えられる。しかし、いずれの産痛緩和法が他より優れているという根拠となるものはなかった。また、臨床で経験的に行われているケアのほとんどが、それを行うことによるデメリットも明らかにされていなかった。したがって、産婦のニーズ、分娩進行に応じて産痛緩和法を選択すること、それを実施する場合は安全面に配慮して観察を行う必要がある。
痛みの緩和法について、他者が行うマッサージなどの「触手療法」と自分だけで行う「非触手療法」を比較すると、「触手療法」を行った者の方が痛みの軽減が顕著であるという報告があり、実際にマッサージや指圧、鍼などケア提供者が産婦の身体に触れる方法は主観的評価が高かった。分娩中、他者に何かをしてもらうこと、人に触れてもらうということは、産婦が心地よさを感じ、産痛を緩和するためにも必要であると思われる。ただし、産婦によっては触れられることを拒否することがあるため、産婦の個別性を尊重した緩和法を提供するべきである。そのためには、医療従事者は様々な産痛緩和法を熟知しているとよい。また、産痛緩和法を実際行うことも大切であるが、臨床における経験から常に人がいること、話をしていること、さらに触ることや話をすることにより、産痛緩和法の効果がさらに高くなると考えられる。
鍼は産痛緩和に効果があるが、鍼を人体に刺すことは、鍼灸師の国家資格が必要であるため、どの施設でも、誰にでもできるわけではないが、今後は鍼灸師と協同した分娩を模索することができると考える。産痛緩和に使用する鍼は、注射針と同じ扱いで消毒ではなくディスポを使用することが必要である。
無痛分娩は実施している施設が限られており、妊婦が無痛分娩を希望する場合、それを実施できる施設を選択すると思われるが、鎮痛の長所だけではなく、短所についても説明される必要があるだろう。
代替療法・補完療法によって産痛緩和を行うことは、医療介入による鎮痛を減少させ、産婦の満足度を高めるであろう。
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