(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版
第3章 高尿酸血症・痛風の治療 |
3.合併症・併発症を有する患者の治療 |
6.二次性高尿酸血症・痛風 |
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1.目的
基礎疾患・薬物投与などに合併した二次性高尿酸血症・痛風を治療し,痛風発作・臓器障害を防止する。
二次性痛風は全痛風症例中約5%を占める。原発性の場合と同様に尿酸産生過剰型,尿酸排泄低下型,混合型に大別される(⇒
2.治療の適応と実際
1.基礎疾患・病態の治療
原因となる基礎疾患の治療や原因薬剤の中止,減量が最も重要である。このためには,問診,身体所見,一般検査所見などより基礎疾患・病態の存在に気づくことが重要である。ただし,原因によっては,疾患・薬剤の性質上,その改善に限界がある場合も多い。
2.高尿酸血症の治療
a.尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症
治療の適応は原発性に準ずる。尿酸生成抑制薬の使用が原則である。血清尿酸値6.0mg/dL 未満を目標とする。尿量・尿pH の管理も,1日尿量を2,000mL とする水分摂取,尿pH6台を目標に,特に血清尿酸値がコントロールできるまでは,原発性の高尿酸血症・痛風に準じて十分に行う。
b.尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症
主に腎機能低下例が対象となる。特に,ヌクレオチド代謝異常症,家族性腎疾患が対象となる。原発性の場合の治療の適応に準じ,痛風発作の既往のある者,血清尿酸値が9.0mg/dL 以上の患者に対しても行われる3)。第一選択はベンズブロマロンであるが,腎機能低下が進行すれば,原発性に準じてアロプリノールを併用する。同じ尿酸生成抑制薬であるフェブキソスタットも同様と推測されるが,現時点ではエビデンスがない。高血圧を合併するシクロスポリン使用中の腎移植患者においては,ロサルタンカリウムの使用により有意に最低血圧の低下と血清尿酸値の低下を認める4)。また慢性腎臓病(CKD)患者において,アロプリノールは,血清尿酸値低下のみならず腎障害の進展の抑制にも有用である5)。クレアチニン・クリアランス(Ccr)30mL/分未満では尿酸生成抑制薬の単独使用も行われる6)。フェブキソスタットは重度の腎機能障害のある患者に対する使用経験は少なく安全性が確立していないため,慎重に投与する。なお腎不全に合併する二次性高尿酸血症では,痛風関節炎発作の頻度は低く,高尿酸血症の是正が腎機能を改善するとのエビデンスも乏しく,一定のコンセンサスはない7)8)。
c.尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症
尿酸産生過剰型,尿酸排泄低下型両者の特徴に配慮しつつ原発性に準じた治療を行う。
3.痛風発作の治療
原発性痛風に準ずる。
注意事項
①基礎疾患の消長に即した治療
基礎疾患の消長に応じて,投薬量の変更など治療内容を調節する必要がある。特に基礎疾患の改善後も漫然とアロプリノール,フェブキソスタット,ベンズブロマロンをはじめとする尿酸降下薬の投薬を継続しないように注意する。
②薬物相互作用
二次性の場合,基礎疾患に対する薬剤との併用が一般的であり,その相互作用には十分注意する。
特にアロプリノールの多彩な薬物相互作用の中で,抗腫瘍薬では,骨髄抑制が増強されるメルカプトプリン(6-MP)(3分の1程度に減量)・シクロホスファミド(注意して使用)との併用や,ペントスタチン(注意して使用)との併用による重症血管炎に注意する。フェブキソスタットについては,メルカプトプリン,アザチオプリンとの併用は禁忌である。
③急性尿酸性腎症(acute uric acid nephropathy)
主に白血病・リンパ腫の急性期の未治療時や治療開始時に起こる。重要な点として,最終的な予後は基礎疾患への治療の効果によるが,本腎症自体は迅速かつ適切な治療により,大部分が回復可能である。水分負荷とフロセミドの併用により,尿量を100mL/時以上に保ち,重炭酸ナトリウム(重曹)に,場合によってはアセタゾラミドを併用して尿pH を7.0以上に保ち,尿酸の溶解を促す。尿酸生成抑制薬の併用も行う。上記治療に反応不良の際には血液透析も併用し,積極的に治療する9)。なお,欧米では遺伝子組換え型ウレートオキシダーゼ製剤であるrasburicaseが使用され著効を示しており,本邦でも2010年より市販されている10)。
④腫瘍融解症候群(tumor lysis syndrome)
造血器腫瘍を中心とした悪性疾患の発症時あるいは治療開始期に,1度に大量の腫瘍細胞が崩壊して起こる。本疾患では血清尿酸値だけにこだわることなく,緊急疾患としての全身管理が必要である。本疾患自体は,急性尿酸性腎症の治療を中心とした適切な治療により可逆性であることが多い9)。
①基礎疾患の消長に即した治療
基礎疾患の消長に応じて,投薬量の変更など治療内容を調節する必要がある。特に基礎疾患の改善後も漫然とアロプリノール,フェブキソスタット,ベンズブロマロンをはじめとする尿酸降下薬の投薬を継続しないように注意する。
②薬物相互作用
二次性の場合,基礎疾患に対する薬剤との併用が一般的であり,その相互作用には十分注意する。
特にアロプリノールの多彩な薬物相互作用の中で,抗腫瘍薬では,骨髄抑制が増強されるメルカプトプリン(6-MP)(3分の1程度に減量)・シクロホスファミド(注意して使用)との併用や,ペントスタチン(注意して使用)との併用による重症血管炎に注意する。フェブキソスタットについては,メルカプトプリン,アザチオプリンとの併用は禁忌である。
③急性尿酸性腎症(acute uric acid nephropathy)
主に白血病・リンパ腫の急性期の未治療時や治療開始時に起こる。重要な点として,最終的な予後は基礎疾患への治療の効果によるが,本腎症自体は迅速かつ適切な治療により,大部分が回復可能である。水分負荷とフロセミドの併用により,尿量を100mL/時以上に保ち,重炭酸ナトリウム(重曹)に,場合によってはアセタゾラミドを併用して尿pH を7.0以上に保ち,尿酸の溶解を促す。尿酸生成抑制薬の併用も行う。上記治療に反応不良の際には血液透析も併用し,積極的に治療する9)。なお,欧米では遺伝子組換え型ウレートオキシダーゼ製剤であるrasburicaseが使用され著効を示しており,本邦でも2010年より市販されている10)。
④腫瘍融解症候群(tumor lysis syndrome)
造血器腫瘍を中心とした悪性疾患の発症時あるいは治療開始期に,1度に大量の腫瘍細胞が崩壊して起こる。本疾患では血清尿酸値だけにこだわることなく,緊急疾患としての全身管理が必要である。本疾患自体は,急性尿酸性腎症の治療を中心とした適切な治療により可逆性であることが多い9)。
文献
1) | Wortmann RL : Disorders or purine and pyrimidine metabolism. in Harrison's Principles of Internal Medicine(17th ed.), ed by Wiener C, Fauci AS, Braunwald E, et al. New York, McGraw-Hill Professional,2444-2449,2008![]() |
2) | 板倉光夫,鎌谷直之編:高尿酸血症・低尿酸血症;痛風の治療新ガイドライン.日臨61(Suppl.),2003![]() |
3) | Stiefel M, Verberckmoes R, Ritz E : Is asymptomatic hyperuricemia in kidney-failure patients in need of therapy? Dtsch Med Wochenschr 114 :964-968,1989![]() |
4) | Kamper AL, Nielsen AH : Uricosuric effect of losartan in patients with renal transplants. Transplantation 72 :671-674, 2001![]() |
5) | Siu YP, Leung KT, Tong MK, et al : Use of allopurinol in slowing the progression of renal disease through its ability to lower serum uric acid level. Am J Kidney Dis 47 :51-59,2006![]() |
6) | Hosoya T, Ichida K, Tabe A, et al : Combined therapy using allopurinol and benzbromarone for gout and hyperuricemia complicated with renal disorder. Jpn J Rheumatol 4 :77-90,1992![]() |
7) | Rosenfeld JB : Effect of long-term allopurinol administration on serial GFR in normotensive and hypertensive hyperuricemic subjects. Adv Exp Med Biol 41 :581-596,1974![]() |
8) | Cameron JS, Simmonds HA : Use and abuse of allopurinol. Br Med J(Clin Res Ed)294:1504-1505,1987![]() |
9) | Bowman WP, Shuster JJ, Cook B, et al : Improved survival for children with B-cell acute lymphoblastic leukemia and stage Ⅳ small noncleaved-cell lymphoma ; A pediatric oncology group study. J Clin Oncol 14 :1252-1261,1996![]() |
10) | Goldman SC, Holcenberg JS, Finklestein JZ, et al : A randomized comparison between rasburicase and allopurinol in children with lymphoma or leukemia at high risk for tumor lysis. Blood 97 :2998-3003,2001![]() |
本ページは、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版[2012年追補版]』にもとづいて作成しています。