(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版
第3章 高尿酸血症・痛風の治療 |
3.合併症・併発症を有する患者の治療 |
1.腎障害 |
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高尿酸血症・痛風に合併あるいは併発する腎障害・尿路結石時の高尿酸血症治療に関しては以下のエビデンスがある。
高尿酸血症・痛風には腎障害,尿路結石が高頻度に合併することが知られている1)2)。
腎障害と高尿酸血症治療の関連については,腎機能低下を合併する痛風患者の血清尿酸値をコントロールすると,腎機能が改善するとされている3)- 6)。また,軽度~中等度の腎障害をもち,痛風をもたない慢性腎臓病(CKD)患者に対するアロプリノール治療は,血清尿酸値を低下させ腎機能の保持に有用であるとの成績がある7)。さらに腎機能が中等度以上に障害された症例では,尿酸排泄促進薬より尿酸生成抑制薬を用いたほうが腎機能悪化例は少ないとの報告がある8)。
腎移植患者においては,シクロスポリン治療中の高血圧をもつ者に対して,ロサルタンカリウムは尿酸排泄促進作用を示すとされている9)。またロサルタンカリウムとエナラプリルマレイン酸塩はともに血圧を低下させるが,血清尿酸値低下作用はロサルタンカリウムにおいてのみみられ,血清カリウム濃度上昇作用はエナラプリルマレイン酸塩に比してロサルタンカリウムのほうが少なかったと報告されている10)。一方,腎移植後の高尿酸血症のコントロールにはアロプリノール,benziodaroneの両者とも有効であるが,benziodarone のほうが有用性は高いとの成績がある11)。
維持血液透析患者において,高リン血症治療薬であるセベラマー塩酸塩治療はカルシウムベースのリン吸着薬に比して有意な血清尿酸値低下作用をもたらしたとの報告がある12)。
1.治療の適応と実際
腎障害のある例,尿路結石保有例あるいは既往のある例に対する尿酸降下薬は,尿酸生成抑制薬が中心となる(表1)。またクレアチニン・クリアランス(Ccr)が30mL/分以上の腎障害例では,腎機能が低下しても比較的効果の認められるベンズブロマロン(25~50mg/日)とアロプリノール(50~200mg/日)の併用療法も有効であり,アロプリノールの用量も減ずることができると報告されている13)14)。フェブキソスタットは,軽度から中等度の腎機能障害では減量が不要であるが,重度の腎機能障害[推算糸球体濾過量(GFR)30mL/分/1.73m2未満]がある場合については,使用経験が少なく安全性が確立していないため慎重に投与する。
シクロスポリン治療中の腎移植患者の高血圧・高尿酸血症コントロールにはロサルタンカリウムが有用であり,また腎移植後の高尿酸血症のコントロールには尿酸生成抑制薬より尿酸排泄促進薬の有用性が高いとされている。
セベラマー塩酸塩には血清尿酸値低下作用があるので,維持血液透析患者におけるセベラマー塩酸塩による高リン血症治療は高尿酸血症対策にもつながる。
表1 腎機能に応じたアロプリノールの使用量

Ccr:クレアチニン・クリアランス
注意事項
腎機能低下例にアロプリノールを使用する際には,腎機能に応じてアロプリノールの用量を減じる必要がある。
尿酸排泄促進薬は腎機能が低下してくるとその効果が減弱することが知られているため,腎障害例では尿酸生成抑制薬が使用されることが多い。しかし腎不全例では,アロプリノールの重篤な副作用の頻度が高いことが報告されており15),その原因としてアロプリノールの活性代謝産物である血中オキシプリノール濃度の上昇が考えられる16)。血中オキシプリノール濃度を安全域とされる20μg/mL 以下17)にするためには,腎機能の程度に応じて表1のようにアロプリノールの使用量を減じる必要がある。腎機能低下時に認められるアロプリノールの重篤な副作用として骨髄抑制(血球減少症,再生不良性貧血),皮膚過敏反応,肝障害には注意を要する。
腎機能低下例にアロプリノールを使用する際には,腎機能に応じてアロプリノールの用量を減じる必要がある。
尿酸排泄促進薬は腎機能が低下してくるとその効果が減弱することが知られているため,腎障害例では尿酸生成抑制薬が使用されることが多い。しかし腎不全例では,アロプリノールの重篤な副作用の頻度が高いことが報告されており15),その原因としてアロプリノールの活性代謝産物である血中オキシプリノール濃度の上昇が考えられる16)。血中オキシプリノール濃度を安全域とされる20μg/mL 以下17)にするためには,腎機能の程度に応じて表1のようにアロプリノールの使用量を減じる必要がある。腎機能低下時に認められるアロプリノールの重篤な副作用として骨髄抑制(血球減少症,再生不良性貧血),皮膚過敏反応,肝障害には注意を要する。
文献
1) | 米澤博:痛風における腎障害に関する研究.慈恵医大誌94:629-648,1979![]() |
2) | Okabe H, Hosoya T, Hikita M, et al : Analysis of urolithiasis in patients with gout and hyperuricemia using ultrasonography. Jpn J Rheumatol 9 :239-244,1999![]() |
3) | Perez-Ruiz F, Calabozo M, Fernandez-Lopez MJ, et al : Treatment of chronic gout in patients with renal function impairment an open, randomized, actively controlled study. J Clin Rheumatol 5 :49-55,1999![]() |
4) | Tarng DC, Lin HY, Shyong ML, et al : Renal function in gout patients. Am J Nephrol 15 :31-37,1995![]() |
5) | Perez-Ruiz F, Calabozo M, Herrero-Beites AM, et al : Improvement of renal function in patients with chronic gout after proper control of hyperuricemia and gouty bouts. Nephron 86 :287-291,2000![]() |
★6) | Whelton A, Macdonald PA, Zhao L, et al : Renal function in gout ; long-term treatment effects of febuxostat. J Clin Rheumatol 17 : 7-13,2011 |
7) | Siu YP, Leung KT, Tong MK, et al : Use of allopurinol in slowing the progression of renal disease through its ability to lower serum uric acid level. Am J Kidney Dis 47 :51-59,2006![]() |
8) | 河野洋,米沢博,内藤裕郎:尿酸排泄剤と生成阻害剤の選択.日臨33:356-361,1975![]() |
9) | Kamper AL, Nielsen AH : Uricosuric effect of losartan in patients with renal transplants. Transplantation 72 :671-674, 2001![]() |
10) | Schmidt A, Gruber U, Böhmig G, et al : The effect of ACE inhibitor and angiotensin Ⅱ receptor antagonist therapy on serum uric acid levels and potassium homeostasis in hypertensive renal transplant recipients treated with CsA. Nephrol Dial Transplant 16 :1034-1037,2001![]() |
11) | Perez-Ruiz F, Gomez-Ullate P, Amenabar JJ, et al : Long-term efficacy of hyperuricaemia treatment in renal transplant patients. Nephrol Dial Transplant 18 :603-606,2003![]() |
12) | Garg JP, Chasan-Taber S, Blair A, et al : Effects of sevelamer and calcium-based phosphate binders on uric acid concentrations in patients undergoing hemodialysis ; A randomized clinical trial. Arthritis Rheum 52 :290-295,2005![]() |
13) | Hosoya T, Ichida K, Tabe A, et al : Combined therapy using allopurinol and benzbromarone for gout and hyperuricemia complicated with renal disorder. Jpn J Rheumatol 4 :77-90,1992![]() |
14) | 大野岩男,岡部英明,山口雄一郎,他:腎機能障害を合併する痛風・高尿酸血症症例におけるアロプリノール・ベンズブロマロン併用療法の有用性;オキシプリノール動態の検討から.日腎会誌50:506-512,2008![]() |
15) | Hande KR, Noone RM, Stone WJ : Severe allopurinol toxicity ; Description and guidelines for prevention in patients with renal insufficiency. Am J Med 76 :47-56,1984![]() |
16) | 佐治正勝:アロプリノール服用患者における血中オキシプリノール濃度と腎機能.日腎会誌38:640-650,1996![]() |
17) | Simmonds HA, Cameron JS, Morris GS, et al : Allopurinol in renal failure and the tumour lysis syndrome. Clin Chim Acta 160 :189-195,1986![]() |
★印は新規収載文献を示す。
本ページは、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版[2012年追補版]』にもとづいて作成しています。