(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
第3章 高尿酸血症・痛風の治療
2.高尿酸血症の治療

4.痛風発作(痛風関節炎)時と痛風間欠期の治療

●ステートメント
未治療例の痛風関節炎時には尿酸降下薬を投与せず,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)パルス療法で発作を寛解させる。
エビデンス2bコンセンサス1推奨度A

高尿酸血症の薬物療法は血清尿酸値を3~6ヵ月かけて徐々に低下させ,6.0mg/dL 以下にし,その後は6.0mg/dL 以下に安定する用量を続ける。
エビデンス2bコンセンサス2推奨度B

尿酸降下薬は痛風関節炎の寛解約2週後から少量(ベンズブロマロン12.5mg,アロプリノール50mg,フェブキソスタット10mg)で開始する。
エビデンス2bコンセンサス2推奨度B

尿酸降下薬の投与開始初期は,痛風関節炎を防止するために少量のコルヒチンを併用投与するとよい。
エビデンス1bコンセンサス2推奨度B

適量の尿酸降下薬投与時に痛風関節炎が起こった場合は,尿酸降下薬を中止することなく,痛風関節炎の治療に準じてNSAID パルス療法を併用する。
エビデンス2bコンセンサス2推奨度B


   高尿酸血症の尿酸降下薬による治療は,体内に蓄積した尿酸量を減少させ,痛風関節炎の防止,痛風結節の縮小,腎障害の改善にも効果がある1)-  3)
   しかし,痛風関節炎時においては血清尿酸値を変動させることにより発作が悪化するといわれており,また尿酸降下薬による血清尿酸値の急激な低下は痛風関節炎をしばしば発症させる4)5)。そのうえ,尿酸排泄促進薬による尿中尿酸排泄量の急激な増加は高尿酸尿症をきたし,尿酸結石や腎障害の原因となる4)。そのため尿酸降下薬の投与法には注意を払う必要がある。

1.治療の適応と実際
痛風関節炎時は尿酸降下薬を投与せず非ステロイド抗炎症薬(NSAID)パルス療法にて発作の寛解を待つ。寛解約2週後から,病型に即した尿酸降下薬を選択して6),少量で開始し徐々に用量を増加する。この場合,ベンズブロマロンは12.5mg(25mg 錠を半減して使用),アロプリノールは50mg(アロプリノール50mg 錠,他は100mg 錠を半減して使用),フェブキソスタットは10mg(フェブキソスタット10mg 錠,他は20mg 錠を半減して使用)での開始が望ましい7)。また,尿酸降下薬の投与開始初期は少量のコルヒチンを併用投与すると,痛風関節炎の発症を防止することができる8)。治療目標値は,尿酸の体液中での溶解限界と考えられる血清尿酸値64.mg/dLよりも低い60. mg/dL以下とし9),3~6ヵ月かけて低下させる。
   また,尿酸降下薬投与時に痛風関節炎が起こった場合は,尿酸降下薬を中止することなく同量を継続して,痛風関節炎の治療に準じてNSAID パルス療法を併用する。血清尿酸値が目標域に達していない場合は,痛風関節炎が寛解して約2週経過してから同様に尿酸降下薬を徐々に増量し,血清尿酸値を6.0mg/dL 以下にする9)。以後,尿酸降下薬は血清尿酸値が6.0mg/dL 以下に安定する用量を続ける。尿酸排泄促進薬の投与時は特にクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物(尿アルカリ化薬)(3~6g/日,3~4回に分服)も併用投与し,尿pH を6.0~7.0に保ち,尿酸結石の出現を防ぐ4)10)。また,尿酸結石を防ぐため日頃より水分摂取を励行し,1日尿量を2,000mL 以上にする。
   血清尿酸値の推移をみるためと,尿酸降下薬による副作用を早期にみつけるために定期的に血液検査を行うことが大切で,投与開始6ヵ月間は毎月検査することが望ましい。

文献
1)Li-Yu J, Clayburne G, Sieck M, et al : Treatment of chronic gout. Can we determine when urate stores are depleted enough to prevent attacks of gout? J Rheumatol 28 :577-580,2001エビデンス2b
2)Perez-Ruiz F, Calabozo M, Pijoan JI, et al : Effect of urate-lowering therapy on the velocity of size reduction of tophi in chronic gout. Arthritis Rheum 47 :356-360,2002エビデンス2b
3)Siu YP, Leung KT, Tong MK, et al : Use of allopurinol in slowing the progression of renal disease through its ability to lower serum uric acid level. Am J Kidney Dis 47 :51-59,2006エビデンス1b
4)Gutman AB, Yü TF : Uric acid nephrolithiasis. Am J Med 45 :756-779,1968エビデンス3
5)Yamanaka H, Togashi R, Hakoda M, et al : Optimal range of serum urate concentrations to minimize risk of gouty attacks during anti-hyperuricemic treatment. Adv Exp Med Biol 431 :13-18,1998エビデンス2b[SF 追加]
6)Boss GR, Seegmiller JE : Hyperuricemia and gout ; Classification, complications and management. N Engl J Med 300 :1459-1468,1979エビデンス4[SF 追加]
7)大山博司,諸見里仁,大山恵子,他:ベンズブロマロンの初回投与量の検討.痛風と核酸代謝31:9-13,2007エビデンス2b[SF 追加]
8)Borstad GC, Bryant LR, Abel MP, et al : Colchicine for prophylaxis of acute flares when initiating allopurinol for chronic gouty arthritis. J Rheumatol 31 :2429-2432,2004エビデンス1b
9)Zhang W, Doherty M, Bardin T, et al ; EULAR Standing Committee for International Clinical Studies Including Therapeutics : EULAR evidence based recommendations for gout. Part Ⅱ; Management. Report of a task force of the EULAR Standing Committee for International Clinical Studies Including Therapeutics(ESCISIT). Ann Rheum Dis 65 :1312-1324, 2006エビデンス4[SF 追加]
10)清水徹:尿アルカリ化薬.高尿酸血症と痛風9:41-46,2001エビデンス4[SF 追加]


本ページは、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版[2012年追補版]』にもとづいて作成しています。

 
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