(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
第3章 高尿酸血症・痛風の治療
2.高尿酸血症の治療

2.尿酸降下薬の種類と選択

●ステートメント
現在わが国で使用できる尿酸降下薬は,尿酸排泄促進薬3種類および尿酸生成抑制薬2種類である。

尿酸排泄低下型に尿酸排泄促進薬,尿酸産生過剰型に尿酸生成抑制薬を選択することを基本原則とする。
エビデンス3コンセンサス2推奨度C

中等度以上[クレアチニン・クリアランス(Ccr),推算糸球体濾過量(GFR)30mL/分/1.73m2未満,または血清クレアチニン値2.0mg/dL 以上]の腎機能障害は尿酸生成抑制薬を選択し,慎重に投与する。
エビデンス3コンセンサス2推奨度C

アロプリノールを腎不全の患者に使用するときは腎障害の程度に合わせて投与量を調節する。
エビデンス3コンセンサス1推奨度B

尿路結石の既往ないし合併がある場合は尿酸生成抑制薬を選択する。
エビデンス3コンセンサス2推奨度C

尿酸排泄促進薬を使用する場合は尿路結石の発現に注意し,尿アルカリ化薬を併用する。
エビデンス3コンセンサス1推奨度B

ベンズブロマロンとブコロームはワルファリンカリウムの血中濃度を増加させるため,併用時は注意を要する。
エビデンス4コンセンサス1推奨度A


   尿酸降下薬は作用機序の違いによって,尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬に分類される。本邦では尿酸排泄促進薬として3種類,尿酸生成抑制薬に関しては,アロプリノール1剤であったが,2011年5月より本邦において新しい尿酸生成抑制薬としてフェブキソスタットが使用可能となった。表1)。

1.尿酸排泄促進薬
プロベネシドとベンズブロマロンは,近位尿細管の管腔側で発現し尿酸の再吸収を担っている尿酸トランスポーター1(URAT1)の作用を抑制することで尿酸排泄促進作用を発揮する1)。尿酸排泄促進薬の投与開始当初は,体内に貯留した余分な尿酸を洗い流すために一時的に尿中尿酸排泄量が増加するが,痛風結節がなく尿酸の体内プールが正常化した後は,尿酸クリアランスが上昇した状態でプリン体の過剰負荷がないかぎり尿中尿酸排泄量は一定であまり増加しない。しかし,尿酸排泄促進薬使用中は常に尿路結石の発現に注意し,尿量増加を指導するとともに尿アルカリ化薬を併用することが望ましい2)

1.プロベネシド
   プロベネシドは対症療法に頼らざるを得なかった痛風の根本治療を可能にした薬剤であり,1951年より痛風治療の中心的薬剤として広く用いられていた3)。尿酸の他にも多くの薬剤の体内動態に影響を与える。薬物相互作用に注意すれば,副作用は概して少なく大部分の患者で長期連用が可能である。

2.ブコローム
   非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の1つとしてわが国で開発された薬剤であり,尿酸排泄促進作用も有する。URAT1に対する阻害作用については検討されていない。副作用として胃腸障害があるが,その頻度は低い。薬物代謝酵素のCYP2C9阻害作用があり,CYP2C9で代謝される薬剤の血中濃度を増加させるため,特にワルファリンカリウムの併用時には注意が必要である4)

3.ベンズブロマロン
   現在わが国で最も多く使用されている尿酸排泄促進薬であり,尿酸排泄作用が最も強い。CYP2C9によって主として活性代謝物の6-ヒドロキシベンズブロマロンに代謝され,この生物学的半減期が18時間と長いため5),本剤は1日1回投与で良好な尿酸降下作用を維持できる。また,本剤はCYP2C9で代謝されるだけでなく,本酵素の阻害薬でもあるためCYP2C9で代謝される薬剤の血中濃度に影響を与える可能性があり,特にワルファリンカリウムとの併用時には注意が必要である5)。プロベネシドやブコロームは腎機能障害が進行すると尿酸降下作用が著しく減弱するが,本剤の尿酸排泄作用は強力で血清クレアチニン値が3.0mg/dL を超えても,投与量を増やすことで血清尿酸値の低下を期待できる6)。特異体質の患者に投与された場合に劇症肝炎などの重篤な肝障害をきたすことがある。副作用の頻度は低いが7),投与開始6ヵ月間は定期的な肝機能検査が義務づけられている。

2.尿酸生成抑制薬
1.アロプリノール
   アロプリノールはプリン代謝経路の最終ステップに働くキサンチンオキシダーゼを阻害する酵素阻害薬である。1964年より痛風治療に導入され,広く使用されている8)。血清尿酸値の低下とともに,尿中の尿酸排泄量も減少させるため尿路結石の治療にも有用である9)。アロプリノールの酸化体であるオキシプリノールにも強力なキサンチン酸化酵素の阻害作用があり,この血中半減期が18~30時間と長いため,本剤による尿酸生成抑制効果は長続きする。オキシプリノールは尿酸排泄機構を共有して腎臓から排泄される10)。このため腎不全や尿酸排泄低下型ではオキシプリノールの血中濃度が増加しやすい11)12)。ことに腎不全の患者に漫然とアロプリノールを投与すると,オキシプリノールが大量に血中に蓄積して致死的な過敏性血管炎を起こすことがある11)。本剤は種々の薬物と相互作用を示す(表1)。
   また,アロプリノールは稀に皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)などの重症薬疹を発症することがあるが,HLA-B5801 保有者に高率に生じることが漢民族13),日本人14),ヨーロッパ人15)にて報告されている。なおHLA-B5801 の保有率は漢民族20~30%に対し,日本人およびヨーロッパ人では1~2%である。

2.フェブキソスタット
   フェブキソスタットはわが国で創製され,2011年に尿酸生成抑制薬として約40年ぶりに承認された薬剤で,適応症は「痛風」「高尿酸血症」である。フェブキソスタットはその構造にプリン塩基を含まないことから,キサンチンオキシダーゼへの選択性が高い16)17)。また,アロプリノールとは異なるキサンチンオキシダーゼへの阻害様式を示し,強力な阻害活性を有する18)19)。本邦および海外での臨床試験において,血清尿酸値の治療目標値である6.0mg/dL 以下への高い達成率を示した20)-  24)。また本剤の特徴として,肝臓で代謝された後,糞便中・尿中にほぼ均等な割合で排泄されるため,腎機能が軽度から中等度低下している場合においても減量することなく,血清尿酸値の低下をもたらすことが可能である25)26)

3.尿酸降下薬の選択
   尿酸排泄促進作用の強いベンズブロマロンのほうがアロプリノールと比較して血清尿酸値の目標達成率が良好であるとの報告もあるが27),腎機能障害例を除くと,いずれの薬剤で治療しても満足できる血清尿酸値の減少効果が得られる28)
   尿中の尿酸排泄量が多い患者では尿路結石の合併頻度が高く18),尿酸排泄促進薬の投与では尿中尿酸排泄が増加して尿路結石を発症させやすい29)。したがって,尿酸排泄量の多い尿酸産生過剰型に尿酸排泄促進薬は不適であり,尿酸生成抑制薬の投与が望ましく,尿路結石を合併している症例には尿酸排泄促進薬を使用すべきでない。また,アロプリノールに関しては,尿酸排泄低下型ではオキシプリノールの血中濃度が増加しやすく,オキシプリノールの蓄積に関連した副作用の危険が高まる可能性がある。このようなことから,主として副作用回避を目的に,尿酸排泄低下型に対しては尿酸排泄促進薬を,尿酸産生過剰型に対しては尿酸生成抑制薬を適応することが基本原則である30)表2)。
   一方,本邦で使用可能となった尿酸生成抑制薬であるフェブキソスタットは,尿中尿酸排泄量での層別による尿酸産生過剰型以外の病型に対しても有効であり,副作用を増加させることがなかったとの報告がある31)。フェブキソスタットの使用において病型による使い分けが必要であるか否かについては,さらなる検討が必要である。
   尿酸排泄促進薬使用時には尿アルカリ化薬を併用して尿路結石の防止に努める2)。腎機能障害時におけるベンズブロマロン使用の安全性は十分に確認されていないため,中等度以上[クレアチニン・クリアランス(Ccr),推算糸球体濾過量(GFR)30mL/分/1.73m2未満,または血清クレアチニン値2.0mg/dL 以上]の腎機能障害を合併している場合は尿酸生成抑制薬を選択する32)。ただし,アロプリノールは,重篤な副作用を回避するために腎障害の程度に合わせた投与量の調整が推奨される11)フェブキソスタットは,軽度から中等度の腎機能障害では減量が不要であるが,重度の腎機能障害がある患者に対しては使用経験が少なく安全性が確立していないため慎重に投与する。なお,フェブキソスタットの腎機能低下患者を対象とした薬物動態試験においては,重度の腎機能低下患者において血中におけるフェブキソスタットのAUC は上昇したが,尿酸低下効果に腎機能低下の影響は認められず,安全性上問題となる有害事象は認められなかった33)。副作用によって当該薬剤が使用できない場合は,基本原則を外れた薬剤の使用は致し方ない。

表1 尿酸降下薬の種類と投与量,副作用など
図1 尿酸降下薬の種類と投与量,副作用など
*:添付文書の記載に基づく

表2 尿酸降下薬の選択
図2 尿酸降下薬の選択
Ccr:クレアチニン・クリアランス,GFR:糸球体濾過量

文献
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22Naoyuki K,Shin F,Toshikazu H,et al : Placebo-controlled double-blind dose-response study of the non-purine-selective xanthine oxidase inhibitor febuxostat(TMX-67)in patients with hyperuricemia(including gout patients)in japan ; late phase2 clinical study. J Clin Rheumatol 17(4 Suppl. 2): S35-S43,2011
23Naoyuki K,Shin F,Toshikazu H,et al : An allopurinol-controlled,multicenter,randomized,open-label,parallel betweengroup, comparative study of febuxostat(TMX-67), a non-purine-selective inhibitor of xanthine oxidase,in patients with hyperuricemia including those with gout in Japan ; phase 2 exploratory clinical study. J Clin Rheumatol 17(4 Suppl. 2): S44-S49, 2011
24Kamatani N,Fujimori S,Hada T,et al : Multicenter,open-label study of long-term administration of febuxostat(TMX-67) in Japanese patients with hyperuricemia including gout. J Clin Rheumatol 17(4 Suppl. 2): S50-S56,2011
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26Hosoya T,Ohno I : A repeated oral administration study of febuxostat(TMX-67),a non-purine-selective inhibitor of xanthine oxidase,in patients with impaired renal function in Japan ; pharmacokinetic and pharmacodynamic study. J Clin Rheumatol 17(4 Suppl. 2): S27-S34,2011
27Perez-Ruiz F, Alonso-Ruiz A, Calabozo M, et al : Efficacy of allopurinol and benzbromarone for the control of hyperuricaemia; A pathogenic approach to the treatment of primary chronic gout. Ann Rheum Dis 57 :545-549,1998エビデンス2b
28山中寿,鎌谷直之,柏崎禎夫:尿酸代謝からみたアロプリノールとベンズブロマロンの作用の比較検討.高尿酸血症と痛風2:103-111,1994エビデンス2b[SF 追加]
29Gutman AB, Yü TF : Uric acid nephrolithiasis. Am J Med 45 :756-779,1968エビデンス3
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31Goldfarb DS,MacDonald PA,Hunt B,et al : Febuxostat in gout ; serum urate response in uric acid overproducers and underexcretors. J Rheumatol 38 :1385-1389,2011
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33Mayer MD,Khosravan R,Vernillet L,et al : Pharmacokinetics and pharmacodynamics of febuxostat,a new non-purine selective inhibitor of xanthine oxidase in subjects with renal impairment. Am J Ther 12 :22-34,2005


印は新規収載文献を示す。
本ページは、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版[2012年追補版]』にもとづいて作成しています。

 
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