(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
第3章 高尿酸血症・痛風の治療
1.痛風関節炎・痛風結節の治療

●ステートメント
痛風発作の前兆期にはコルヒチン1錠(0.5mg)を用い,発作を頓挫させる。痛風発作が頻発する場合には,コルヒチン1日1錠を連日服用させる「コルヒチン・カバー」が有効である。
エビデンス3コンセンサス1推奨度B

痛風発作の極期には非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が有効であるが,短期間に限り比較的多量を投与して炎症を鎮静化させる(NSAID パルス療法)。副作用の発現に注意する。
エビデンス3コンセンサス1推奨度B

NSAIDが使用できない場合,NSAID 投与が無効であった場合,多発性に関節炎を生じている場合などには,経口にて副腎皮質ステロイドを投与する。
エビデンス1aコンセンサス1推奨度A

痛風発作時に血清尿酸値を変動させると発作の増悪を認めることが多いため,発作中に尿酸降下薬を開始しないことを原則とする。
エビデンス3コンセンサス1推奨度B

痛風結節の治療では摘出術が考慮されることもあるが,手術をした場合も薬物療法は必要である。
エビデンス3コンセンサス1推奨度B


   痛風発作は,尿酸塩結晶が誘発する急性関節炎である。一般に痛風関節炎は疼痛が激しく,短期間ではあるが患者の生活の質(QOL)を著しく低下させる。したがって,適切な治療を行うことにより患者の苦痛を除去し,QOLを改善することが痛風発作治療の目的である。加えて,痛風発作を経験した患者に対しては,痛風の原因となる高尿酸血症の長期治療への導入が重要であり,関節炎の鎮静化をもって治療が終了したと考えてはならないことも肝要である。

1.背景となるエビデンス
痛風発作の歴史は古く,遠く紀元前5世紀,古代ギリシアの医師ヒポクラテスに遡る。全く驚愕の事実であるが,ヒポクラテスは痛風治療薬としてイヌサフランからとれるコルチカム(コルヒチン)を記載していた。痛風発作の治療法に関する進歩は1980年代までに確立し,2000年代における進歩はほとんどない。しかし,十分とはいえないまでもエビデンスとなりうる臨床研究が報告され,痛風発作に対する治療法の有用性が証明されている。
   コルヒチンの有効性は歴史的に証明されているにもかかわらず(逆にそれゆえに),プラセボ対照試験の成績はほとんどない。かろうじて1987年に1つ報告がある1)。痛風発作におけるコルヒチンの効果は,その投与が発作が起きた後,早いほど有効性が高い。Gutman の報告では,536名の患者のうち80%が48時間以内に軽快している2)。欧米においては,発作の有意な改善,消化管障害の出現があるまで経口的にコルヒチンの投与を続けることが一般的である3)が,痛風発作の治療におけるコルヒチンの使用は国によりかなり異なる4)。フランスではほとんどの場合コルヒチンを用いるが,カナダ,ニュージーランド,日本などでは非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が主体である。
   一方,コルヒチンは治療的投与法のみならず,予防的投与法としても有用である。欧米の報告では1日1mgを用いる方法が多い。二重盲検試験により発作頻度が75~85%低下し,重症度も軽減したとの報告がある5)
   次に,NSAIDは急性炎症である痛風関節炎治療の中心的薬剤である。NSAIDはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し,アラキドン酸からのプロスタグランジン産生を減少させ,抗炎症・鎮痛・解熱作用を発揮する。痛風発作におけるNSAID の有効性はランダム化比較試験(RCT)で確認されている6)。NSAID を痛風発作の治療薬として投与する場合,常用量を漫然と投与するよりも,常用量以上の比較的多量を短期間に限って用いることが有用であるとされる7)-  9)。ただし,痛風発作に対してわが国で保険適応を有するNSAIDは意外に少ない。表1に示すとおり,各々の薬剤において関節リウマチなどに用いる投与量より多く設定されている。
   副腎皮質ステロイドは,強力な抗炎症作用を有するため,痛風発作の炎症も非特異的に抑制する。特に,NSAIDが禁忌である症例の痛風発作は副腎皮質ステロイドの適応である。これに対しては比較対照試験の成績があり,副腎皮質ステロイドの筋注の有効性と安全性が示されている10)11)。救急外来で急性痛風関節炎と診断された患者において,経口インドメタシン・アセトアミノフェン併用投与の有効性および有害作用を,経口プレドニゾロン・アセトアミノフェン併用投与と比較するRCTでは,急性痛風関節炎に対する両者の鎮痛効果は同等であった12)。痛風関節炎と診断された患者において,経口ナプロキセンと経口プレドニゾロンの鎮痛効果は同等であった13)。経口的に用いる場合には,あまり早く中止すると関節炎の再発が起こることが指摘されているが,プレドニゾロン30~50mg で開始し,徐々に減量して10日で中止するとリバウンドや副作用が起こりにくいことが報告されている14)。また,関節内への副腎皮質ステロイド注入も有効である15)


表1 痛風関節炎に適応のあるNSAID一覧
表1 痛風関節炎に適応のあるNSAID一覧

2.痛風関節炎の治療
   治療手段としては,コルヒチン,NSAID,副腎皮質ステロイドの3つの手段を選択しうる。いずれも臨床的効果は確認されている。痛風発作の前兆期にはコルヒチン1錠を経口的に投与し,極期にはNSAIDを短期間のみ比較的多量に投与して炎症を鎮静化させる方法が一般的である。しかし,副腎皮質ステロイドも十分に有効な薬剤であり,経口,筋注,関節内注入などの患者の状態に合わせた投与ルートが選択できる利点がある。

1.コルヒチンの投与法
a.痛風発作の前兆期の投与法
   わが国におけるコルヒチンの投与法は,欧米とは異なり発作の早期に少量用いる方法が一般的である16)。すなわち,コルヒチンは痛風発作の前兆期に1錠(0.5mg)のみ用い,発作を頓挫させる。このために痛風患者にはコルヒチンを処方し,携行することを勧める。発作の極期に開始すると大量投与しても十分な有効性が得られない。また大量投与は副作用が多い。副作用として最も多いものは腹痛と下痢であり,嘔吐,筋痙攣などがそれに次ぐ。これらはいずれも24時間以内に出現する。また,末梢神経障害,汎血球減少症などの報告もある。

b.痛風発作の予防措置としての投与法
  痛風発作が頻発する場合,また尿酸降下薬の投与開始後に血清尿酸値の低下に伴う痛風発作17)が予測される場合は,コルヒチン1日1錠を連日服用させる(コルヒチン・カバー)。後者の目的で用いる場合は1~3ヵ月間投与し,その後中止する。

2.NSAIDの投与法
   痛風発作に対するNSAID は,短期間のみ比較的多量に投与することが原則である(NSAID パルス療法)。具体的には,たとえばナプロキセンの場合,300mg を3時間ごとに3回,1日に限って投与する。その後も疼痛が軽減しない場合には,3回投与後,24時間の間隔を置いてもう1度,300mg を3時間ごとに3回服用させる。多くの場合,この処置により痛風発作は軽快する。激痛が軽減した後も関節痛が持続して,日常生活に支障をきたす場合には,NSAID を常用量投与する。痛風関節炎が軽快すればNSAID は中止する。
   NSAID投与時の一般的な問題点としては,胃粘膜病変(特に胃潰瘍)の誘発や増悪,腎障害の増悪,ワルファリンカリウムとの薬剤相互作用などがある。痛風患者では軽度の腎障害が存在することが多く,NSAID 投与によりプロスタグランジン産生抑制が起こると腎血流量の低下を招くことがある。腎障害の存在が確認されている患者や下肢の浮腫がある患者に対しては,腎障害が少ないとされるNSAID の選択が好ましい。またNSAID を使わずに副腎皮質ステロイドを用いるのもよい。ワルファリンカリウム投与中の患者ではNSAID を使わず,副腎皮質ステロイドを用いる。

3.副腎皮質ステロイドの投与法
   痛風関節炎において,NSAID が使用できない場合,NSAID 投与が無効であった場合,多発性に関節炎を生じている場合などには,経口にて副腎皮質ステロイドを投与する。一例として,プレドニゾロン15~30mg を投与し関節炎を鎮静化させ,1週ごとに3分の1量を減量し,3週間で中止する方法がある。重症例においては,少量(1日5mg程度)を数ヵ月間投与せざるを得ない場合がある。
   痛風患者で,膝・肘関節などに水腫を伴う関節炎を有する場合には,関節を無菌的に穿刺し,可及的に関節液を排液,除去した後に副腎皮質ステロイドを注入する。少しでも化膿性関節炎の疑いがある場合は,関節液を培養に提出する。この場合は,穿刺のみにして副腎皮質ステロイドを注入してはならない。
   なお,関節リウマチに適応を有する静注用リポ化デキサメタゾンパルミチン酸エステル(リメタゾン®)の投与も有効であるが,痛風発作に対する保険適応はない。

3.痛風結節の治療
   血清尿酸値を6.0mg/dL 未満に維持することで痛風結節の縮小,消失が認められ,再発を防止できる18)19)図120)図221))。自壊して感染を伴ったり(51%),機械的刺激となったり(27%),大きな塊を形成し腫瘍との鑑別(18%)や,神経圧迫による疼痛制御(4%)を必要とした場合に摘出術が考慮される22)。脊椎内痛風の外科治療と薬物療法の対比を解析した研究では,1995~2002年に手術した4例においてMRI やCT での脊椎内痛風結節の消失を確認し,感染を否定でき,脊椎内痛風結節と画像診断できれば薬物療法のみでよく,手術しても薬物療法は必要であるとしている18)23)。したがって,薬物療法が頼みの綱である。

図1 痛風結節消退と血清尿酸値との関係(文献20より引用)
表1 痛風結節消退と血清尿酸値との関係

図2 尿酸降下薬投与による痛風結節の消失
図2 尿酸降下薬投与による痛風結節の消失痛風患者に対するフェブキソスタット5年間長期投与試験(海外データ)による。
対      象痛風患者116例
n=所定の来院時に指標となる痛風結節をもつ患者数
N=ベースライン時および本試験の残りの所定の来院時における指標となる痛風結節をもつ患者数
投与方法 フェブキソスタット製剤80mg を1日1回から投与開始し,40mg/日または120mg/日への適宜増減を可能とし,最長5年間投与した。痛風発作予防薬として,4週間コルヒチン0.6mgを1日2回投与した。
(文献21より引用)

注意事項
1. 一般的注意として,痛風発作中はできるだけ患部の安静を保ち,患部を冷却し,禁酒を指示する。痛風発作中に尿酸降下薬の投与を開始すると発作を増悪させるので,投与を開始してはならない。ただし,尿酸降下薬の投与を行っている場合には,原則として投与を中止せずにそのまま服用させ,そこにコルヒチン,NSAID,副腎皮質ステロイドなどを加えて治療する。

2.高濃度のコルヒチンは微小管の抑制作用により細胞分裂を阻害し,また胎盤通過性を有するため,精子に対する影響,不妊や妊娠中の胎児奇形の問題も懸念されるが,他疾患の検討からも一般的な臨床用量では問題にならない4)。コルヒチンは,肝臓でチトクロームP450系(CYP3A4)で代謝されるため4),この酵素系に関与するシメチジン,エリスロマイシン,ニフェジピンなどとの薬剤相互作用の可能性がある。

3.アスピリンは少量投与で血清尿酸値を軽度に上昇させ,大量投与で血清尿酸値を低下させる。痛風発作中に血清尿酸値を低下させると痛風発作の増悪や遷延化をきたすが,鎮痛作用をもつ量のアスピリンは血清尿酸値を低下させるので,痛風発作にアスピリンは避けるべきである。

4.痛風発作の関節穿刺後には,細菌感染による化膿性関節炎と,注入した副腎皮質ステロイドの結晶によるステロイド誘発性関節炎が生じる可能性があり,注意を要する。

5.痛風関節炎が軽快すればNSAID は中止する。

文献
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23 Perez-Ruiz F, Atxotegi J, Hernando I, et al : Using serum urate levels to determine the period free of gouty symptoms after withdrawal of long-term urate-lowering therapy ; A prospective study. Arthritis Rheum 55 :786-790,2006エビデンス3[MN 追加]


印は新規収載文献を示す。
本ページは、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版[2012年追補版]』にもとづいて作成しています。

 
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