(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版
第2章 高尿酸血症・痛風の診断
4 二次性高尿酸血症・痛風
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基礎疾患,薬物投与など明らかな原因が見出される二次性痛風は全痛風症例の約5%を占める。診断に際しては,詳細な問診,服薬歴,身体所見,検査所見などより基礎疾患の存在や薬剤の服用に気づくことが重要である1)。二次性高尿酸血症においても,原発性と同様に尿酸産生過剰型,尿酸排泄低下型,混合型に大別される。
1 尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症
2 尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症
3 混合型二次性高尿酸血症
文献
1 尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症
1 基礎疾患
尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症を生じる主要な基礎疾患とその発症機序を表12),3)に示す。
2 抗悪性腫瘍薬
薬剤そのものは血清尿酸値を上昇させない。化学療法により腫瘍細胞が破壊され,細胞からの逸脱物質であり尿酸前駆物質である核酸が大量に放出され,その最終代謝産物として血清尿酸値が上昇する1)。
3 急性尿酸性腎症,腫瘍融解症候群
急性尿酸性腎症は,特に急性白血病や悪性リンパ腫など造血器腫瘍の急性期未治療時や化学療法開始直後に起こる急性腎不全である1)。腫瘍細胞が急速に崩壊し,細胞からの逸脱物質より生じた過剰の血中・尿中尿酸が腎尿細管や集合管を閉塞することにより生じる。腫瘍融解症候群はその劇症型として治療開始期に,1度に大量の腫瘍細胞が崩壊して起こる。特に,化学療法に感受性の高い腫瘍,造血器腫瘍や肺癌において生じやすい1),4)。本病態に際しては急性尿酸性腎症に加え,高カリウム血症,高リン酸血症,低カルシウム血症などの代謝異常を生じ,腎不全さらには死に至る場合もある。いずれの病態も緊急の対応を必要とする1)。
尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症を生じる主要な基礎疾患とその発症機序を表12),3)に示す。
2 抗悪性腫瘍薬
薬剤そのものは血清尿酸値を上昇させない。化学療法により腫瘍細胞が破壊され,細胞からの逸脱物質であり尿酸前駆物質である核酸が大量に放出され,その最終代謝産物として血清尿酸値が上昇する1)。
3 急性尿酸性腎症,腫瘍融解症候群
急性尿酸性腎症は,特に急性白血病や悪性リンパ腫など造血器腫瘍の急性期未治療時や化学療法開始直後に起こる急性腎不全である1)。腫瘍細胞が急速に崩壊し,細胞からの逸脱物質より生じた過剰の血中・尿中尿酸が腎尿細管や集合管を閉塞することにより生じる。腫瘍融解症候群はその劇症型として治療開始期に,1度に大量の腫瘍細胞が崩壊して起こる。特に,化学療法に感受性の高い腫瘍,造血器腫瘍や肺癌において生じやすい1),4)。本病態に際しては急性尿酸性腎症に加え,高カリウム血症,高リン酸血症,低カルシウム血症などの代謝異常を生じ,腎不全さらには死に至る場合もある。いずれの病態も緊急の対応を必要とする1)。
2 尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症
1 基礎疾患
尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症を生じる主要な基礎疾患とその発症機序を表25),6),7),8)に示す。
2 腎不全に伴う二次性高尿酸血症
腎機能低下に伴い尿酸クリアランスが低下し,尿酸排泄低下型高尿酸血症が引き起こされる9)。痛風関節炎の発症頻度は低い9)。
3 家族性若年性痛風腎症
常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性疾患で,40歳までの若年に高尿酸血症,高血圧,進行性腎不全を呈する。早期から尿酸の腎臓でのクリアランスが低下している。多くの遺伝家系でウロモジュリン(Tamm-Horsfall蛋白)をコードしているUMOD遺伝子の変異が認められている10)。
4 薬剤
さまざまな薬剤により血清尿酸値が上昇する。
a.サリチル酸
サリチル酸は少量(1〜2g)では血清尿酸値を上昇させ,大量投与(3g以上)では血清尿酸値を低下させる9)。極少量投与(100mg)でも尿酸排泄を低下させる11)。
b.抗結核薬
URAT1は近位尿細管上皮細胞の管腔表面に選択的に局在し,尿酸と他の内因性に産生される有機アニオンのほとんど(乳酸,ニコチン酸,ケトン体など)とを交換輸送する12)。URAT1は尿酸の主要な再吸収機構として働き,最も強力な血清尿酸値の制御機構と考えられている。抗結核薬ピラジナミドは,その代謝物ピラジン酸がURAT1における尿酸輸送の交換基質となり尿酸の再吸収を促進すると考えられる。投与早期から発現するが薬剤中止にて比較的速やかに回復する。
尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症を生じる主要な基礎疾患とその発症機序を表25),6),7),8)に示す。
表2 尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症とその発症機序


2 腎不全に伴う二次性高尿酸血症
腎機能低下に伴い尿酸クリアランスが低下し,尿酸排泄低下型高尿酸血症が引き起こされる9)。痛風関節炎の発症頻度は低い9)。
3 家族性若年性痛風腎症
常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性疾患で,40歳までの若年に高尿酸血症,高血圧,進行性腎不全を呈する。早期から尿酸の腎臓でのクリアランスが低下している。多くの遺伝家系でウロモジュリン(Tamm-Horsfall蛋白)をコードしているUMOD遺伝子の変異が認められている10)。
4 薬剤
さまざまな薬剤により血清尿酸値が上昇する。
a.サリチル酸
サリチル酸は少量(1〜2g)では血清尿酸値を上昇させ,大量投与(3g以上)では血清尿酸値を低下させる9)。極少量投与(100mg)でも尿酸排泄を低下させる11)。
b.抗結核薬
URAT1は近位尿細管上皮細胞の管腔表面に選択的に局在し,尿酸と他の内因性に産生される有機アニオンのほとんど(乳酸,ニコチン酸,ケトン体など)とを交換輸送する12)。URAT1は尿酸の主要な再吸収機構として働き,最も強力な血清尿酸値の制御機構と考えられている。抗結核薬ピラジナミドは,その代謝物ピラジン酸がURAT1における尿酸輸送の交換基質となり尿酸の再吸収を促進すると考えられる。投与早期から発現するが薬剤中止にて比較的速やかに回復する。
3 混合型二次性高尿酸血症
1 基礎疾患
混合型二次性高尿酸血症を生じる主要な基礎疾患とその発症機序を表3に示す。尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症,尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症の両特徴に配慮する。
2 アルコール摂取
飲酒家に高尿酸血症発症頻度が高く,また飲酒が痛風発作を誘発する13),14)。
混合型二次性高尿酸血症を生じる主要な基礎疾患とその発症機序を表3に示す。尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症,尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症の両特徴に配慮する。
表3 混合型二次性高尿酸血症とその発症機序


2 アルコール摂取
飲酒家に高尿酸血症発症頻度が高く,また飲酒が痛風発作を誘発する13),14)。
文献
1) | 上田孝典:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン;尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症.痛風と核酸代謝26(Suppl.1):61-62,2002 |
2) | Erickson AR, Enzenauer RJ, Nordstrom DM, et al: The prevalence of hypothyroidism in gout. Am J Med 97: 231-234,1994 ![]() |
3) | Yamamoto T, Moriwaki Y, Suda M, et al: Theophylline-induced increase in plasma uric acid--purine catabolism increased by theophylline. Int J Clin Pharmacol Ther Toxicol 29: 257-261,1991 [TY追加] |
4) | Kalemkerian GP, Darwish B, Varterasian ML: Tumor lysis syndrome in small cell carcinoma and other solid tumors. Am J Med 103: 363-367,1997 ![]() |
5) | Lin JL, Tan DT, Ho HH, et al: Environmental lead exposure and urate excretion in the general population. Am J Med 113: 563-568,2002 ![]() |
6) | Yu TF, Gutman AB: Study of the paradoxical effects of salicylate in low, intermediate and high dosage on the renal mechanisms for excretion of urate in man. J Clin Invest 38: 1298-1315,1959 [TY追加] |
7) | Lin HY, Rocher LL, McQuillan MA, et al: Cyclosporine-induced hyperuricemia and gout. N Engl J Med 321: 287-292, 1989 ![]() |
8) | Kanbay M, Akcay A, Huddam B, et al: Influence of cyclosporine and tacrolimus on serum uric acid levels in stable kidney transplant recipients. Transplant Proc 37: 3119-3120,2005 ![]() |
9) | 大野岩男:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン;尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症.痛風と核酸代謝26(Suppl.1):64-66,2002 |
10) | Hart TC, Gorry MC, Hart PS, et al: Mutations of the UMOD gene are responsible for medullary cystic kidney disease 2 and familial juvenile hyperuricaemic nephropathy. J Med Genet 39: 882-892,2002 [TY追加] |
11) | Caspi D, Lubart E, Graff E, et al: The effect of mini-dose aspirin on renal function and uric acid handling in elderly patients. Arthritis Rheum 43: 103-108,2000 ![]() |
12) | Enomoto A, Kimura H, Chairoungdua A, et al: Molecular identification of a renal urate anion exchanger that regulates blood urate levels. Nature 417: 447-452,2002 [TY追加] |
13) | 上田孝典:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン;混合型二次性高尿酸血症.痛風と核酸代謝 26(Suppl.1):63,2002 |
14) | Choi HK, Atkinson K, Karlson EW, et al: Alcohol intake and risk of incident gout in men; A prospective study. Lancet 363: 1277-1281,2004 ![]() |