(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
 
第2章 高尿酸血症・痛風の診断


1 尿酸の測定法

●ステートメント
ほとんどの施設で,自動分析装置によるウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法が用いられている。
エビデンス2b推奨度A

測定値の変動は血清成分の影響も考慮して9.0%,施設間差は2.7〜6.8%であり,信頼できる測定法といえる。
エビデンス3推奨度B

高尿酸血症の判定について,採血時期は空腹時でなくてもよいが,恒常的な高尿酸血症の判定には複数回の測定が必要である。
エビデンス3推奨度B



血清尿酸値の正常と異常を論ずるためには精度の高い測定法を用いる必要がある。
尿酸の測定法には尿酸の還元性を利用した「還元法」,尿酸酸化酵素であるウリカーゼを用いた「酵素法」,高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography; HPLC)を用いた「分離分析法」などがある(表1)。このうち,広く一般の臨床検査法として使用されているのは,ウリカーゼとペルオキシダーゼを用いた「酵素法」である1)

表1 尿酸測定法の種類
表1 尿酸測定法の種類


1 試料と装置
血液中の尿酸濃度は,全血を凝固させたのち,遠心分離して得られる血清を試料とする。また,検査施設に設置した自動分析装置を用いて測定する。尿や血漿を試料として測定することもできる。血清中の尿酸は,室温保存で数日間,安定である2)

2 測定法
1970年代初めは尿酸の還元性を利用したリンタングステン酸法が主流だったが,現在は酵素法で測定している施設がほとんどである。
酵素法は,尿酸がウリカーゼの作用によって酸化されてアラントインおよび二酸化炭素と過酸化水素を生ずることを利用するもので,この反応は尿酸に特異的であり薬剤などの妨害物質の影響は少ない。ウリカーゼを加える前後で292nmにおける紫外部吸光度(ultra violet;UV)を測定し,その差から尿酸値を求めるUV法と,ウリカーゼ反応により産生した過酸化水素を利用して発色物質を生じさせ,これを比色定量する方法がある。UV法は精度が高く,米国では尿酸測定の実用基準法にされている。
反応により産生した過酸化水素を利用する方法としては,ウリカーゼ・カタラーゼ法とウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法がある。ウリカーゼ・カタラーゼ法は,反応で生成した過酸化水素とカタラーゼでメタノールを酸化してホルムアルデヒドとし,これをアセチルアセトンと重合させることによって,3,5-ジアセチル-1,4-ジヒドロルチジンを生じさせて比色定量する方法である。
ウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法は,尿酸とウリカーゼとの反応で生成した過酸化水素を,ペルオキシダーゼ存在下で4-アミノアンチピリンとアニリン系またはm-トルイジン系の色素源と酸化的に縮合させることによりキノン色素に導いて発色させ,これを比色法によって定量する方法である1)。この方法は除蛋白が不要で,短時間で発色が終わるため,各種の自動分析装置に適用され,現在ほとんどの施設における尿酸測定がウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法で行われている3)。アスコルビン酸などの還元剤や溶血によるヘモグロビンで誤差を生ずることもあるが,発色色素を選んで測定波長を変えることにより誤差を減らす工夫がされている。また,装置のキャリブレーションや,既知濃度の標準液と管理用試料による精度管理が必要とされている4)。そのため,測定された血清尿酸値の施設間差は変動係数(coefficient of variance;CV)2.7〜6.8%と改善されている3)。除蛋白した試料をHPLC(ODSカラム)で他成分と分離して測定する分離分析法も用いられる。尿酸を波長284nmで検出してピーク面積を求めて定量する。HPLCを用いた尿酸の測定は,精密度,正確度の点で優れており日本臨床化学会では尿酸測定の実用基準法として採用している5)が,操作が煩雑であるため日常検査には適さない。

3 測定誤差と生理的変動
測定方法の改良および日常の精度管理により,尿酸の測定値に対する信頼性は高く,測定誤差は2.0%程度である。これに血清中の他成分の影響などを加えると9.0%程度の変動となり,血清尿酸値が4.6mg/dLの場合,測定値は4.6±0.4(4.2〜5.0mg/dL)の範囲で得られることとなる6)。この誤差は避けられないため,境界値の場合は何回か検査を行うのが望ましい。
血清尿酸値の正常と異常を判断するには生理的変動も考慮する必要がある。血清尿酸値には日内変動や季節変動が観察される。普通食を摂っている健常者の日内変動は0.5mg/dL程度で,明け方が高く夕方に低下する7)。また,飲酒,食事,運動,精神活動などでも変動する(運動により1.04倍,昼食により1.1倍)8)。血清尿酸値はプリン体,大豆摂取や飲酒の後に上昇し,動物性蛋白の摂取後はわずかに低下する9)。高尿酸血症のスクリーニングを目的とする場合に採血は空腹時である必要はないが,恒常的に高尿酸血症状態が持続するかどうかは複数回測定した結果で判断すべきである。

文献
1) Fossati P, Prencipe L, Berti G: Use of 3,5-dichloro-2-hydroxybenzenesulfonic acid/4-aminophenazone chromogenic system in direct enzymic assay of uric acid in serum and urine. Clin Chem 26: 227-231,1980 エビデンス2b
2) Henriksen GM, Pedersen MM, Nφrgaard I, et al: Minimally processed fresh frozen human reference sera; Preparation, testing, and application to international external quality assurance. Scand J Clin Lab Invest 64: 293-308,2004 エビデンス3
3) 仁科甫啓:血清尿酸の測定.高尿酸血症と痛風5:39-43,1997 エビデンス3
4) クラスII汎用・生化学検査用シリーズ 尿酸キット アクアオート カイノス UA 試薬添付文書(第3版).2008年2月改訂 エビデンス3[KK追加]
5) 日本臨床化学会試薬専門委員会:HPLCを用いる血清尿酸測定の勧告法.臨化22:300-307,1993 エビデンス3
6) Fuentes-Arderiu X: Influence quantities and uncertainty of measurement. Clin Chem 47: 1327-1328,2001 エビデンス2b
7) Kanabrocki EL, Third JL, Ryan MD, et al: Circadian relationship of serum uric acid and nitric oxide. JAMA 283 :2240-2241, 2000 エビデンス3
8) Statland BE, Winkel P, Bokelund H : Factors contributing to intra-individual variation of serum constituents ;2. Effects of exercise and diet on variation of serum constituents in healthy subjects. Clin Chem 19: 1380-1383,1973 エビデンス3
9) Garrel DR, Verdy M, PetitClerc C, et al: Milk- and soy-protein ingestion; Acute effect on serum uric acid concentration. Am J Clin Nutr 53 :665-669,1991 エビデンス3


 

 
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