(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
 
第1章 高尿酸血症・痛風の最近のトレンドとリスク


3. 高尿酸血症のリスク

2)腎障害

●ステートメント
血清尿酸値は慢性腎臓病(CKD)の発症や進展と関係する。
エビデンス2b推奨度A

一般集団において高尿酸血症は腎不全の危険因子である。
エビデンス2b推奨度A

IgA腎症において高尿酸血症は腎機能予後に関する危険因子である。
エビデンス3推奨度B

CKDと痛風を併せもつ症例には体内鉛蓄積が関与している可能性がある。
エビデンス1b推奨度A



最近,一般集団および慢性腎臓病(CKD)の両者において,高尿酸血症と腎障害とは密接な関連を有していることが示されてきている。以下にそのエビデンスを示す。
(1) 集団健診に参加した6,403人(男性4,222人,女性2,181人)を2年間観察した結果,血清尿酸値は血清クレアチニン高値(男性≧1.4mg/dL,女性≧1.2mg/dL)への進展と正の相関を示していた。血清尿酸値が8.0mg/dL以上の集団の相対危険度は,血清尿酸値5.0mg/dL未満と比較して,男性では2.9(1.8〜4.8),女性では10.4(1.9〜56.6)であった1)
(2) 5,808人を用いたコホート研究において,血清尿酸値が高いほど推定糸球体濾過量(GFR)60mL/分/1.73m²未満の割合が高く,また血清尿酸値のレベルと腎機能低下の進行とは有意に関連していた2)
(3) 1万3,338人を用いた8.5±0.9年間のコホート研究において,各種因子の補正後においても血清尿酸値は腎臓病の発症リスクと関連していた(血清尿酸値1.0mg/dL上昇あたりのオッズ比は,GFR低下の観点でも血清クレアチニン値上昇の観点でも1.1であった3))。
(4) 集団健診の受診者4万8,177人(男性2万2,949人,女性2万5,228人)を8年間観察した結果,女性において高尿酸血症(血清尿酸値≧6.0mg/dL)は末期腎不全(end-stage renal disease ; ESRD)の独立した予測因子であった(補正ハザード比5.8,p=0.0002)。しかし男性では,高尿酸血症(血清尿酸値≧7.0mg/dL)はESRDの独立した予測因子とはいえなかった4)
(5) 4万9,413人の日本人男性を用いた平均5.4年の観察において,高尿酸血症(血清尿酸値≧8.5mg/dL)は血清尿酸値5.0〜6.4mg/dLと比較して腎不全の相対危険度(年齢補正相対危険度8.5,p<0.01)と強く関係していた5)
(6) 高尿酸血症(血清尿酸値≧7.0mg/dL)はIgA腎症の腎機能予後に関する危険因子である6)
(7) 高中性脂肪血症と高尿酸血症(血清尿酸値:男性> 7.6mg/dL,女性> 5.5mg/dL)はIgA腎症進行の危険因子である7)
(8) CKDと痛風を併せもつ症例の体内鉛蓄積は,CKDだけの症例より多かった。さらにCKDと痛風を併せもつ症例に対して,キレート治療により体内鉛蓄積を減少させると尿酸クリアランスは著明に改善した。また,慢性の低レベル環境鉛蓄積は,CKD患者の尿酸排泄を阻害していることが示唆された8)


文献
1) Iseki K, Oshiro S, Tozawa M, et al: Significance of hyperuricemia on the early detection of renal failure in a cohort of screened subjects. Hypertension Res 24: 691-697,2001 エビデンス2b
2) Chonchol M, Shlipak MG, Katz R, et al: Relationship of uric acid with progression of kidney disease. Am J Kidney Dis 50: 239-247,2007 エビデンス2a
3) Weiner DE, Tighiouart H, Elsayed EF, et al: Uric acid and incident kidney disease in the community. J Am Soc Nephrol 19: 1204-1211,2008 エビデンス2a
4) Iseki K, Ikemiya Y, Inoue T, et al : Significance of hyperuricemia as a risk factor for developing ESRD in a screened cohort.Am J Kidney Dis 44 :642-650,2004 エビデンス2b
5) Tomita M, Mizuno S, Yamanaka H, et al: Does hyperuricemia affect mortality? A prospective cohort study of Japanese male workers. J Epidemiol 10 :403-409,2000 エビデンス2b[IO追加]
6) Ohno I, Hosoya T, gomi H, et al : Serum uric acid and renal prognosis in patients with IgA nephropathy. Nephron 87: 333-339,2001 エビデンス3[IO追加]
7) Syrjanen J, Mustonen J, Pasternack A: Hypertriglyceridaemia and hyperuricaemia are risk factors for progression of IgAnephropathy. Nephrol Dial Transplant 15: 34-42,2000 エビデンス3 [IO追加]
8) Lin JL, Yu CC, Lin-Tan DT, et al: Lead chelation therapy and urate excretion in patients with chronic renal diseases andgout. Kidney Int 60: 266-271,2001 エビデンス3エビデンス1b


 

 
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