(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
 
第1章 高尿酸血症・痛風の最近のトレンドとリスク


2 高尿酸血症・痛風の最近の動向

●ステートメント
高尿酸血症の動向:本邦の成人男性における高尿酸血症の頻度は,30歳以降では30%に達していると推定される。
エビデンス3推奨度C

高尿酸血症は現在も増加傾向にある。
エビデンス2b推奨度B

痛風の動向:痛風の有病率は,男性において30歳以降では1%を超えていると推定され,現在も増加傾向であると考えられる。
エビデンス3推奨度C



1 高尿酸血症の動向
1 高尿酸血症の性別・年齢別頻度
最近の本邦における2つの大規模な調査結果によれば,高尿酸血症の頻度は,成人男性において,21.5%あるいは26.2%と報告されている1),2)。年齢別の頻度では,30歳台,40歳台が最も高く,30歳台の頻度は30%に達した(図11)。また,10歳台における高尿酸血症の頻度は16.3%であった1)
これらの調査は,尿酸降下薬を内服中の者も含まれているが,その割合は不明である。厚生労働省による2004年の国民生活基礎調査によれば,「痛風で通院中」と回答した者は60歳台が最も多く,30歳台は6%(4.8万人)を占めるに過ぎない(図23)。これらの通院者の多くは尿酸降下薬を内服中と考えられ,通院者には高尿酸血症も含まれると考えられる。通院者の年齢分布は,前述の高尿酸血症の頻度の年齢分布とちょうど逆になっており(図11)図23)),高尿酸血症の頻度が30歳以降低下傾向であるのは,尿酸降下薬内服者の割合の増加を反映している可能性がある。すなわち,尿酸降下薬によって血清尿酸値が低下し,高尿酸血症がみかけ上減少している可能性がある。男性における血清尿酸値は,成人後は年齢の影響をほとんど受けないとされており,本邦における男性の高尿酸血症の頻度は,尿酸降下薬内服中の者が少ない30歳台のデータを基にするのが妥当と考えられる。上記の調査1)は3万人以上を対象とした大規模なものであり,この調査における30歳台の結果である30%が,本邦の成人男性における高尿酸血症(痛風を含めた)の頻度と考えられる。この数値はしかし,尿酸降下薬内服中の者も存在することを考えると,なお実際より低めである可能性がある。
女性では,閉経後に血清尿酸値が上昇することから,高尿酸血症の頻度は閉経を考慮に入れる必要があるが,明確に閉経前後で分けて検討した報告は本邦にはない。日本人女性の閉経年齢は45〜55歳とされているが,職域における調査で,女性の高尿酸血症の頻度は,50歳未満で1.3%,50歳以降で3.7%であった1)。人間ドックにおける調査でもほぼ同様の結果が得られている4)

図1 男性における高尿酸血症の年齢別頻度
図1 男性における高尿酸血症の年齢別頻度
2004年の職域における調査。
文献1より引用)

図2 男性における痛風による通院者の年齢別頻度
図2 男性における痛風による通院者の年齢別頻度
2004年の国民生活基礎調査において、「痛風で通院中」との回答から推定された男性の年齢別患者数。
文献3より引用)

2 高尿酸血症頻度のトレンド
高尿酸血症が増加傾向であるか否かについては,増加傾向であるとする報告が多い。職域における1996年から2004年にかけての調査では,男性において20〜60歳台のすべての年齢層で増加傾向であった(図31)。この調査において,同一人について1996年と2000年とで比較した検討でも,両年で喫煙習慣に変化のなかった者では,血清尿酸値の平均が0.3mg/dLの増加,途中で禁煙した者では0.7mg/dLの増加がみられた5)。別の職域での調査でも,尿酸降下薬内服のない同一人における検討で,1998年に比べて2003年では血清尿酸値の平均が0.3mg/dL増加していた6)。男子の大学新入生を経年的に調査した検討では,1991年から2002年にかけて,血清尿酸値の平均が0.3mg/dL増加していた7)。一方,人間ドックにおける調査2)では,1993年から2003年にかけて男性における高尿酸血症の頻度は不変あるいはやや低下傾向と報告されているが,尿酸降下薬の影響は検討されていない。
高尿酸血症と強く関連する肥満についての最近のトレンドをみてみると,厚生労働省による国民健康・栄養調査によれば,30〜60歳台のすべての年齢層の男性において増加傾向である8)。同調査によると,これらの年齢層の男性における1日あたりの摂取カロリーは,むしろすべて減少傾向であった8)。摂取カロリーが減少しているにもかかわらず,肥満者の割合が増加していることは意外であるが,1日あたりの歩数が減少傾向であることが同調査で示されており8),肥満の増加には運動不足が関連している可能性がある。
一方,喫煙習慣やアルコール摂取に変化のなかった者についての4年間の追跡調査で,BMIに変化がなかったにもかかわらず血清尿酸値が平均0.3mg/dL上昇していたこと5),男子大学新入生の経年調査でBMIが低下傾向にもかかわらず血清尿酸値が上昇傾向であったこと7)などは,体重増加以外の要因(おそらくは運動不足による体脂肪率の増加)も,血清尿酸値の上昇に結びつく可能性を示している。
肥満および運動不足が増加している現状は,高尿酸血症の今後のさらなる増加につながる可能性がある。

図3 高尿酸血症の頻度の推移
図3 高尿酸血症の頻度の推移
1996年から2004年にかけての職域における調査
文献1より引用)

2 痛風の動向
1 最近の痛風有病率
痛風の有病率については,最近ほとんど報告がなかったが,2003年に和歌山県の一地域において行われた住民調査による検討で,全体の有病率は0.5%,男性における有病率は1.1%と報告された9)。これらの痛風患者はすべて30歳以上の男性であり,30歳以上の男性における有病率は1.7%であった。この地域の年齢構成は,日本における平均的なものとされており,ここで得られた有病率は日本人の男性が生涯のうちに痛風を発症する割合に近いといえるかもしれない。すなわち,日本人男性の約60人に1人が痛風を発症することになる。
国民生活基礎調査では,現在通院している疾患について本人が回答する形式で調査が行われているが,2004年の調査では,「痛風で通院中」と答えた者は全国で87万4,000人であった3)。この調査による痛風患者数は急速に増加傾向であり,2004年は1995年と比べて2.1倍,1986年と比べると3.4倍となっている(図4)。しかし,この調査では疾患の選択肢の中に高尿酸血症は入っておらず,痛風発作を生じていない無症候性高尿酸血症で尿酸降下薬による治療をすでに受けている者が含まれていると考えられる。
このように,痛風あるいは高尿酸血症で治療を受けている者は急速に増加傾向であり,このことは,尿酸降下薬の販売錠数の増加にも反映されている10)。したがって,調査対象によっては,高尿酸血症増減のトレンドが,尿酸降下薬による治療者数の増加によって影響を受けていることも十分考えられる。人間ドック受診者で報告された高尿酸血症の減少傾向2)もこのような現象で説明されるのかもしれない。

図4 国民生活基礎調査において「痛風で通院中」との回答から推定された痛風患者数の推移
図4 国民生活基礎調査において「痛風で通院中」との回答から推定された痛風患者数の推移


2 痛風有病率のトレンド
欧米において,痛風は増加傾向とされている11),12),13),14),15)。本邦では,1969〜1974年に,前述の和歌山県における2003年の調査9)と同一地域において調査が行われ,全体の有病率は0.3%,男性における有病率は0.6%と報告されている16)。2003年の調査結果(全体の有病率0.5%,男性の有病率1.1%)9)から,痛風は30年前と比べて増加傾向といえるかもしれない。
欧米では痛風の罹患率および有病率の増加は主として高齢者で観察されており,70歳台で最も高くなっている12),13),14)。本邦では痛風の罹患率をみた調査はなく,また住民調査における有病率の検討でも,痛風患者の年齢分布は示されていない。本邦の痛風専門外来における初診者の発症年齢を調査した報告では,30歳台の発症が最も多く,次いで40歳台,50歳台の順となっており,60歳以降は10%程度を占めるのみであった17)。したがって,痛風の年齢分布は欧米と日本とでかなり異なっている可能性がある。台湾における痛風専門外来受診者においても,発症年齢は30歳台がやはり最も多く,次いで40歳台,20歳台がほぼ同数,60歳以降は10%程度と報告されており18),日本と同様の傾向であった。
国民生活基礎調査による痛風患者(「痛風で通院中」と答えた者)の年齢分布は,2004年の調査で60歳台が最も多く,次いで50歳台と70歳台がほぼ同数となっている(図23)。この結果は,前述した痛風専門外来における患者の年齢分布とはかなり異なっており,高尿酸血症の項でも述べたように,痛風を発症していない高尿酸血症の段階で尿酸降下薬による内服治療を受けている者が年齢とともに増加していることを反映しているものと思われる。
欧米においては,痛風患者の男女比は3.5:1程度とされており12),13),14),日本とはかなり異なっている。すなわち,本邦の痛風専門外来における検討では,女性は全痛風患者の1.5%であり19),和歌山県の住民調査で検出された患者14人もすべて男性であった9)。台湾においては痛風患者に占める女性患者の割合は8%程度と報告されており18),20),欧米ほどではないが,日本よりはかなり高い。

文献
1) 冨田眞佐子,水野正一:高尿酸血症は増加しているか?;性差を中心に.痛風と核酸代謝30:1-5,2006 エビデンス3[MH追加]
2) 藤森新,伊藤洋,加藤敬三,他:わが国の高尿酸血症・痛風は増え続けていない.痛風と核酸代謝30:13-20,2006 エビデンス3 [MH追加]
3) 厚生労働省大臣官房統計情報部編:平成16年国民生活基礎調査.東京,厚生統計協会,2006 エビデンス3 [MH追加]
4) 藤森新,伊藤洋:高尿酸血症・痛風は増えているか;1)わが国の動向.高尿酸血症と痛風12:114-119,2004 エビデンス3[MH追加]
5) 水野正一,冨田眞佐子,村山隆志:禁煙が血清尿酸値上昇に及ぼす影響(縦断研究).痛風と核酸代謝30:217-223,2006 エビデンス2b[MH追加]
6) Fukuda H, Haruyama Y, Nakade M, et al: Relationship between lifestyle and change of cardiovascular risk factors based on a five-year follow-up of employees in Japan. Ind Health 45: 56-61,2007 エビデンス2b[MH追加]
7) Ogura T, Matsuura K, Matsumoto Y, et al: Recent trends of hyperuricemia and obesity in Japanese male adolescents1991 through2002. Metabolism 53: 448-453,2004 エビデンス3
8) 健康・栄養情報研究会編:国民栄養の現状.東京,第一出版,2006 エビデンス3[MH 追加]
9) 川崎拓,七川歓次:住民検診による痛風の疫学調査.痛風と核酸代謝30:66,2006 エビデンス2b[MH追加]
10) 箱田雅之:疫学.新しい診断と治療のABC37―高尿酸血症・痛風,鎌谷直之編.大阪,最新医学社,15-23,2006 エビデンス3[MH追加]
11) Klemp P, Stansfield SA, Castle B, et al: Gout is on the increase in New Zealand. Ann Rheum Dis 56: 22-26,1997 エビデンス3[MH追加]
12) Arromdee E, Michet CJ, Crowson CS, et al: Epidemiology of gout; Is the incidence rising? J Rheumatol 29: 2403-2406,2002 エビデンス2b[MH追加]
13) Wallace KL, Riedel AA, Joseph-Ridge N, et al: Increasing prevalence of gout and hyperuricemia over 10 years among older adults in a managed care population. J Rheumatol 31: 1582-1587,2004 エビデンス2b[MH追加]
14) Mikuls TR, Farrar JT, Bilker WB, et al: Gout epidemiology; Results from the UK General Practice Research Database,1990-1999. Ann Rheum Dis 64: 267-272,2005 エビデンス2b[MH追加]
15) Roddy E, Zhang W, Doherty M: The changing epidemiology of gout. Nat Clin Pract Rheumatol 3: 443-449, 2007 エビデンス2b[MH追加]
16) 七川歓次:痛風の疫学.臨成人病5:331-337,1975 エビデンス3[MH追加]
17) 山中寿,作山理子,渡辺純子,他:女性,若年者における痛風;最近の傾向.高尿酸血症と痛風2:23-29,1994 エビデンス3[MH追加]
18) Yu KH, Luo SF: Younger age of onset of gout in Taiwan. Rheumatology(Oxford)42 :166-170,2003 エビデンス3[MH追加]
19) 作山理子,山中寿,鎌谷直之,他:本邦女性痛風患者43例の特徴.プリン・ピリミジン代謝17:17-23,1993 エビデンス3[MH追加]
20) Chen SY, Chen CL, Shen ML, et al: Trends in the manifestations of gout in Taiwan. Rheumatology(Oxford)42: 1529-1533,2003 エビデンス2b[MH追加]


 

 
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