(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
 
総論


ガイドライン改訂作業の経過
1 Clinical Questionの選定と選択
1) 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』改訂作業の第1段階として,エビデンスブック作成委員会を立ち上げ,10名のエビデンスブック作成委員を委託した。
2) エビデンスブック作成委員は,京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野教授 中山健夫先生からガイドライン作成手順についての講義を受けた後,Clinical Questionを抽出した。
3) 2006年10月末までに全10名から216のClinical Questionが集まった(重複を含む)。
4) ガイドライン改訂委員長が,216のClinical Questionを第1版の項目に従って分類し,一部新たな項目を設けたうえで,41の包括的なClinical Question(表1)にまとめた。

表1 包括的にまとめた41のClinical Question
表1 包括的にまとめた41のClinical Question


2 Clinical QuestionのPECO,PICOフォーマットへの変換
以上の41のClinical Question をさらにまとめるとともに,PECO(patients exposure control outcome)フォーマット(表2),PICO(patients intervention control outcome)フォーマット(表3)への変換を行った。

表2 PECOフォーマット
表2 PECOフォーマット

表3 PICOフォーマット
表3 PICOフォーマット

3 系統的文献検索
1) 以上のClinical Questionに基づき検索式を立てた。
(1)期間:1966~2008年8月31日
(2)検索対象:PubMed,The Cochrane Library
(3) Human,Cohort+RCT
2) 47の検索式による16,511論文のうち,ガイドライン改訂委員の2名が適切と思われる16の検索式による697論文を抽出した。さらに697論文のタイトルとアブストラクトから不適切なものを除外し,492の論文に絞り込んだ。
3) 492論文のタイトルとアブストラクトをエビデンスブック作成委員10名の専門分野を考慮して分担し送付した。エビデンスブック作成委員は,タイトルとアブストラクトより今回のガイドライン改訂に必要かどうかを判断し,(A)必要:90論文,(B)必要かもしれない:135論文,(C)不要:135論文に選別した。論文の妥当性の評価は表41),2),3),4)の基準に従った。
4) (A)(B)ランクの論文の合計225編を財団法人日本医療機能評価機構の援助によりコピーし,10名のエビデンスブック作成委員に配分した。

表4 論文の妥当性評価
表4 論文の妥当性評価
文献1より引用)
(1.メタ分析のチェックリスト 文献2より引用)
(2.RCTのチェックリスト 文献3より引用)
(3.コホート研究のチェックリスト 文献4より引用)


4 構造化抄録の作成
1) 系統的文献検索とその後の作業で選択された225論文をガイドライン改訂委員長がエビデンスブック作成委員に専門性を考慮して配分し,エビデンスブック作成委員は各々の構造化抄録を作成した。
2) 構造化抄録はPDFファイル化し,各エビデンスブック作成委員で共有し,その後の作業に活用した。


5 ガイドライン改訂委員会の立ち上げと改訂作業の開始
1) 2007年10月にガイドライン改訂委員17名を委嘱した。
2) ガイドライン改訂委員は構造化抄録に基づき,改訂作業を行った。具体的には各章を2名で分担し,最終的にガイドライン改訂委員全員が内容を確認した。委員から出された問題点,疑問点についてはガイドライン改訂委員会で協議するとともに,電子メールにて協議を重ねた。
3) 開催したガイドライン改訂委員会は以下のとおりである。
(1)第1回 2007年12月11日(火)
於:八重洲倶楽部(東京都)
(2)第2回 2008年1月19日(土)
於:東京国際フォーラム(東京都)
(3)第3回 2008年2月15日(金)
於:福井商工会議所(福井県)
(4)第4回 2008年9月20日(土)
於:八重洲倶楽部(東京都)
(5)第5回 2008年11月8日(土)
於:チサンホテル新大阪(大阪府)
(6)第6回 2009年2月20日(金)
於:京王プラザホテル(東京都)
(7)第7回 2009年4月11日(土)
於:東京国際フォーラム(東京都)
(8)第8回 2009年9月13日(日)
於:東京慈恵会医科大学(東京都)


6 引用論文の追加
1) 2009年2月に前回と同様の系統的文献検索を実施し,2007年6月末~2008年12月末までの462編の論文を追加した。この論文に関する情報はガイドライン改訂委員に送付し,必要に応じて追加した。
2) 系統的文献検索にて抽出されなかったが,ガイドライン改訂委員が参考にする必要があると考えた論文は引用のうえ,[○○追加]と付記することとした。


7 エビデンスレベル
第1版のものを基本とし,本ガイドラインの作成にあたっては,下記のエビデンスレベルの表示方法を採用した。

【エビデンスレベル】
エビデンス1a  ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスがあるか,複数のRCTの結果がほぼ一致している。
エビデンス1b  少なくとも1つのRCTがある。
エビデンス2a  よくデザインされた比較研究(非ランダム化)がある。前向きコホート研究を含む。
エビデンス2b  よくデザインされた準実験的研究がある。後ろ向きコホート研究を含む。
エビデンス3  よくデザインされた非実験的記述研究がある。ケースコントロールを含む。
エビデンス4  症例報告,対照群のない研究,質の低いコホート研究,横断的研究などに基づく。
エビデンス5  専門家の報告・意見・経験に基づく。

第1版ではAHCPR(agency of health care policy and research)分類を使用したが,第2版ではさらに「エビデンスレベル4」を設定し,各々の説明を補足した。


8 コンセンサスレベル-デルファイ法を用いた合意形成について
高尿酸血症・痛風の領域は,20年以上もの長い間,新規治療薬が開発されてこなかったこともあり,RCTをはじめとする良質なエビデンスは多くない。したがって,日常診療の現場では,一定のコンセンサスに基づく治療が体系化されていると考えられる。今回のガイドライン改訂では,RCTをはじめとする質の高いエビデンスが精力的に検索されたが,「エビデンスレベル1」に該当するものは少なく,「エビデンスレベル3」が最も多いという結果であった。それらをエビデンスがないとして否定することは臨床の現場に混乱を起こす可能性が高く,ガイドライン作成目的から考えて,好ましいものとは考えられない。そこで,臨床医によるコンセンサスがどの程度あるかを定量的に検証するため,デルファイ法を用いてコンセンサスレベルを決定することにした。
デルファイ法は,「専門家集団などがもつ直感的意見や経験的判断を反復型アンケートを使って,組織的・統計的に集約・洗練する意見収束技法」といわれているもので,各々のステートメントが日常診療のうえでどの程度一般化されているかを点数つきで評価するものである。
今回は,治療に関するステートメント55項目について,高尿酸血症・痛風の診療に携わっているガイドライン改訂委員15名がコンセンサスの程度を7段階(1は賛成,4は中立,7は反対)で評価した。評価者自身が日常診療で全く扱わない,ないしは合意の程度を評価するのは不適切であると判断した場合には0とした。そして,集計結果を公表したうえで,もう1度15名が評価し,2度目の中央値をコンセンサスレベルとした。
コンセンサスレベルは,エビデンスレベル,推奨度とは区別して各ステートメントに記載した。多くのステートメントではコンセンサスレベルは,エビデンスレベルや推奨度とほぼ一致していたが,一部のステートメントではエビデンスレベルが比較的低いものであってもコンセンサスレベルの高いものがあった。この点に留意して臨床現場で応用することを勧めたい。デルファイ法の経過5)表5に示す。

表5 デルファイ法の経過
第3章 高尿酸血症・痛風の治療  エビデンス
レベル
コンセンサス
レベル
推奨度   Delphi exercise第1回   Delphi exercise第2回
1.痛風関節炎・痛風結節の治療   n   中央値
median
最大値
max
最小値
min
最頻値
mode
  n   中央値
median
最大値
max
最小値
min
最頻値
mode
  1. 痛風発作の前兆期にはコルヒチン1錠(0.5mg)を用い,発作を頓挫させる。痛風発作が頻発する場合には,コルヒチン1日1錠を連日内服させる「コルヒチン・カバー」が有効である。 3 1 B   15 1 4 1 1   15 1 2 1 1
  2. 痛風発作の極期には非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が有効であるが,短期間に限り比較的多量を投与して炎症を鎮静化させる(NSAIDパルス療法)。副作用の発現に注意する。 3 1 B   15 2 4 1 1   15 1 2 1 1
  3. NSAIDが使用できない場合,NSAID投与が無効であった場合,多発性に関節炎を生じている場合などには,経口にて副腎皮質ステロイドを投与する。 1a 1 A   15 1 2 1 1   15 1 2 1 1
  4. 痛風発作時に血清尿酸値を変動させると発作の増悪を認めることが多いため,発作中に尿酸降下薬を開始しないことを原則とする。 3 1 B   15 1 2 1 1   15 1 2 1 1
  5. 痛風結節の治療では摘出術が考慮されることもあるが,手術をした場合も薬物療法は必要である。 3 1 B   15 1 4 1 1   15 1 2 1 1
2.高尿酸血症の治療
1)治療目標        
  1. 高尿酸血症の治療では,予後に関係する肥満,高血圧,糖・脂質代謝異常などの合併症もきたしやすい高尿酸血症の発症に関連する生活習慣を改善することが最も大切である。 2a 1 A   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  2. 痛風関節炎を繰り返す症例や痛風結節を認める症例は薬物治療の適応となり,血清尿酸値を6.0mg/dL以下に維持するのが望ましい。 2a 1 A   15 1 3 1 1   15 1 3 1 1
  3. 無症候性高尿酸血症への薬物治療の導入は血清尿酸値8.0mg/dL以上を一応の目安とするが,適応は慎重にすべきである。 3 2 C   15 2 5 1 1   15 2 4 1 2
2)尿酸降下薬の種類と選択        
  1. 現在わが国で使用できる尿酸排泄促進薬は3種類あるが,尿酸生成抑制薬はアロプリノールのみである。                              
  2. 尿酸排泄低下型に尿酸排泄促進薬,尿酸産生過剰型に尿酸生成抑制薬(アロプリノール)を選択することを基本原則とする。 3 2 C   15 2 4 1 1   15 2 4 1 2
  3. 中等度以上[クレアチニン・クリアランス(Ccr),推算糸球体濾過量(GFR)30mL/分/1.73m²以下,または血清クレアチニン値2.0mg/dL以上]の腎機能障害はアロプリノールを選択する。 3 2 C   15 2 3 1 1   15 2 3 1 2
  4. アロプリノールを腎不全の患者に使用するときは腎障害の程度に合わせて投与量を調節する。 3 1 B   15 1 4 1 1   15 1 3 1 1
  5. 尿路結石の既往ないし合併がある場合はアロプリノールを選択する。 3 2 C   15 2 2 1 2   15 2 2 1 2
  6. 尿酸排泄促進薬を使用する場合は尿路結石の発現に注意し,尿アルカリ化薬を併用する。 3 1 B   15 1 2 1 1   15 1 2 1 1
  7. ベンズブロマロンとブコロームはワルファリンカリウムの血中濃度を増加させるため,併用時は注意を要する。 4 1 A   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
3)痛風関節炎,痛風結節のない高尿酸血症(無症候性高尿酸血症)に対する治療        
  1. 無症候性高尿酸血症の段階で,高尿酸血症を基盤とする痛風関節炎,痛風結節,腎障害,尿路結石の発症を防ぐために血清尿酸値を低下させることが望ましい。 3 2 B   15 2 3 1 2   15 2 3 1 2
  2. 血清尿酸値を下げるために生活習慣の改善を指導することが重要であり,具体的にはアルコール飲料やプリン体,果糖,ショ糖やカロリーの過剰摂取を避け,また過激な運動は控えるように指導する。 3 1 A   14 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  3. 生活習慣の改善にもかかわらず血清尿酸値が9.0mg/dL以上の無症候性高尿酸血症では薬物療法を考慮する。また尿路結石,腎疾患,高血圧などの合併がある場合は,血清尿酸値が8.0mg/dL以上で薬物療法を考慮する。 3 2 B   15 2 6 1 3   15 2 4 1 3
4)痛風発作(痛風関節炎)時と痛風間欠期の治療        
  1. 未治療例の痛風関節炎時には尿酸降下薬を投与せず,NSAIDパルス療法で発作を寛解させる。 2b 1 A   15 1 4 1 1   15 1 2 1 1
  2. 高尿酸血症の薬物療法は血清尿酸値を3~6ヵ月かけて徐々に低下させ,6.0mg/dL以下にし,その後は6.0mg/dL以下に安定する用量を続ける。 2b 2 B   15 2 4 1 1   15 2 4 1 2
  3. 尿酸降下薬は痛風関節炎の寛解約2週後から少量(ベンズブロマロン12.5mg,アロプリノール50mg)で開始する。 2b 2 B   15 2 4 1 2   15 2 3 1 2
  4. 尿酸降下薬の投与開始初期は,痛風関節炎を防止するために少量のコルヒチンを併用投与するとよい。 1b 2 B   15 2 4 1 2   15 2 4 1 2
  5. 適量の尿酸降下薬投与時に痛風関節炎が起こった場合は,尿酸降下薬を中止することなく,痛風関節炎の治療に準じてNSAIDパルス療法を併用する。 2b 2 B   15 2 4 1 2   15 2 3 1 2
3.合併症・併発症を有する患者の治療
1)腎障害        
  1. 腎障害合併例,尿路結石保有例では,尿酸降下薬としてアロプリノールを使用する。また,腎障害合併例ではアロプリノールとベンズブロマロンの少量併用も有効である。 3 2 B   15 2 2 1 2   15 2 2 1 2
  2. 腎機能の低下に応じて,アロプリノールの使用量を減じる必要がある。 3 1 B   15 1 3 1 1   15 1 3 1 1
  3. アロプリノールによる高尿酸血症治療は慢性腎臓病(CKD)患者の腎機能保持に有用である。 1b 2 B   15 2 4 1 2   15 2 4 1 2
  4. ロサルタンカリウムはシクロスポリン治療中の腎移植患者の高血圧・高尿酸血症コントロールに有用である。 1b 2 A   15 2 4 1 2   15 2 4 1 2
  5. 腎移植後の高尿酸血症のコントロールには尿酸排泄促進薬の有用性が高い。 3 2 B   15 2 4 1 2   15 2 4 1 2
  6. 維持血液透析患者におけるセベラマー塩酸塩による高リン血症治療は高尿酸血症対策にもつながる。 1b 2 B   15 2 4 1 2   15 2 4 1 2
2)尿路結石        
  1. 飲水指導は,尿量を2,000mL/日以上確保することが目標である。 2b 2 B   15 2 3 1 2   15 2 3 1 2
  2. 尿路結石を合併する高尿酸血症の治療薬は,アロプリノールが第一選択である。 3 1 B   15 1 2 1 1   15 1 2 1 1
  3. 尿酸排泄促進薬は尿酸結石の形成を促進させるため,原則として尿路結石を合併している症例には使用しない。 3 2 B   15 2 3 1 2   15 2 2 1 2
  4. 尿アルカリ化はクエン酸製剤を中心とし,尿pHは6.0~7.0の維持を目標とする。並行してプリン体摂取制限などの食事療法が必要である。 3 2 B   15 2 2 1 2   15 2 2 1 2
  5. 高尿酸尿(症)を伴うシュウ酸カルシウム結石の再発防止には,アロプリノールや尿アルカリ化薬が有効である。 1b 1 A   15 1 4 1 1   15 1 2 1 1
  6. 尿酸結石の治療は,体外衝撃波砕石術(ESWL)が中心となるが,尿アルカリ化薬やアロプリノールによる結石溶解療法も選択肢となる。 2b 1 B   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
3)高血圧・心血管系疾患        
  1. 高血圧合併高尿酸血症患者に対しては,高尿酸血症の発症に関連する生活習慣を同時に改善する「総合的な臓器のリスク回避」を目指し,まず生活指導を行う。 2a 1 B   15 1 3 1 1   15 1 3 1 1
  2. 薬物療法は血圧管理を優先し,可能な限り尿酸代謝に悪影響を及ぼさない降圧薬を優先して用いることが望ましい。 2a 1 B   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  3. 生活指導ならびに尿酸代謝に好ましい降圧薬を用いても,血清尿酸値が8.0mg/dL以上の場合は,尿酸降下薬の投与開始を考慮する。治療中の血清尿酸値は6.0mg/dL以下に維持することが望ましい。 3 2 C   15 2 6 1 2   15 2 4 1 2
  4. 尿酸降下薬の選択は病型分類に基づいて行うが,腎障害の程度,肝障害の有無によって治療薬,投与量を慎重に決定する。また,尿pHの測定を行い,尿アルカリ化薬併用も考慮する。 3 2 C   15 2 4 1 2   15 2 3 1 2
4)脂質異常症        
  1. 高尿酸血症の治療とともに動脈硬化性疾患の一因子となる脂質異常症を治療し,動脈硬化性疾患の軽減を図ることを目標とする。 1b 1 A   15 1 2 1 1   15 1 1 1 1
  2. 診断は,『動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)』の診断基準に従う。すなわち高LDL-コレステロール血症(LDL-コレステロール≧140mg/dL),低HDL-コレステロール血症(HDL-コレステロール<40mg/dL),もしくは高トリグリセリド血症(トリグリセリド≧150mg/dL)を脂質異常症と診断する。 1b 1 A   15 1 2 1 1   15 1 2 1 1
  3. 高尿酸血症・痛風に合併する脂質異常症の治療は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)』に基づいて行う。 1b 1 A   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  4. 脂質異常症治療薬の中には血清尿酸値に影響を与える薬剤があるので考慮する。特にフェノフィブラートは高トリグリセリド血症と高尿酸血症の合併,特に尿酸排泄低下型高尿酸血症の合併には有効な薬剤である。 3 1 A   15 2 3 1 1   15 1 2 1 1
5)メタボリックシンドローム        
  1. メタボリックシンドロームの治療の最終目標は,本症候群の臨床的帰結である動脈硬化性疾患や2型糖尿病の発症予防と進展阻止にある。 判定不能 1 A   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  2. 食事療法や運動療法,また禁煙などの生活習慣をまず改善することが,治療の基本である。 1b 1 A   15 1 2 1 1   15 1 1 1 1
  3. 本症候群に伴う各種病態(高尿酸血症を含む)は,食事療法や運動療法により改善し,特に両療法を併せて実践して体重が減量すれば,効果は大きい。 1b 1 A   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  4. 生活習慣の改善のみでは効果が乏しい場合や,十分な効果が期待できない場合に,個々の合併疾患に対する薬物療法を行う。薬物療法に際しては,尿酸代謝への影響も配慮して薬剤を選択する。 4 1 C   15 1 4 1 1   15 1 2 1 1
6)二次性高尿酸血症・痛風        
  1. 基礎疾患の消長に応じて,治療内容を調節する。 2b 1 B   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  2. 急性尿酸性腎症および腫瘍融解症候群は治癒を目指しうる緊急疾患である。 1b 1 A   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  3. 混合型二次性高尿酸血症の治療は,尿酸産生過剰型,尿酸排泄低下型両者の特徴に配慮しつつ,原発性に準じて行う。 3 2 C   15 2 3 1 2   15 2 2 1 2
  4. 尿酸排泄低下型高尿酸血症治療の第一選択は尿酸排泄促進薬のベンズブロマロンである。しかし腎機能低下例では尿酸生成抑制薬のアロプリノールの併用あるいは単独投与が適応になるが,その際には腎機能に応じて投与量を減じる必要がある。 3 2 C   15 2 3 1 2   15 2 3 1 2
第4章 高尿酸血症・痛風の生活指導
1.生活指導        
  1. 高尿酸血症・痛風は代表的な生活習慣病であり,生活習慣の是正を目的とした非薬物療法としての生活指導は,薬物療法の有無にかかわらず重要な役割を有する。 2a 1 B   15 1 3 1 1   15 1 2 1 1
  2. 高尿酸血症・痛風に対する生活指導は,食事療法,飲酒制限,運動の推奨が中心となり,肥満の解消は血清尿酸値を低下させる効果が期待される。 2b 1 B   15 1 2 1 1   15 1 2 1 1
  3. 食事療法としては適正なエネルギー摂取,プリン体・果糖の過剰摂取制限,十分な飲水が勧められる。 2a 1 B   15 1 2 1 1   15 1 2 1 1
  4. 身体活動(運動)は,メタボリックシンドロームの種々の病態を改善するため奨励できる。 3 2 C   15 2 2 1 2   15 2 2 1 2
         
    平均 1.46 3.22 1.00 1.37   平均 1.43 2.54 1.00 1.44


9 推奨度
推奨度は,前述の基準で評価されたエビデンスのレベルを基本とし,コンセンサスレベルを加味して決定した。推奨度は次の形式で記述した。

【推奨度】
(1)疫学・診断について(第1章,第2章)
推奨度A  言い切れる強い根拠がある
(1つ以上のエビデンス1の研究がある)
推奨度B  言い切れる根拠がある
(1つ以上のエビデンス2の研究がある)
推奨度C  言い切れる根拠がない(上記以外)

(2)治療に関して(第3章,第4章)
推奨度A  行うよう強く勧められる
(1つ以上のエビデンス1の研究がある)
推奨度B  行うよう勧められる
(1つ以上のエビデンス2の研究がある)
推奨度C  行うことを考慮してよい(上記以外)


10 リエゾン委員による関連領域の治療ガイドラインとの整合性の確認
高尿酸血症・痛風の領域は他の診療科と重複する部分も多く,他疾患の既存の治療ガイドラインとの整合性が問題になる場合があることが予想された。そのため,本改訂に際しては新たにリエゾン委員を指名した。リエゾン委員はガイドライン改訂委員の中から専門領域を考慮してガイドライン改訂委員長が選定し,関連領域の治療ガイドラインとの整合性を検討した。リエゾン委員の一覧は巻頭に示した。


11 学会員・外部評価委員によるパブリックコメント
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』のドラフトが完成したのは2009年7月である。こののち,ドラフトを日本痛風・核酸代謝学会評議員に公開し,パブリックコメントを求めた。同時に高尿酸血症・痛風で関連があると予想される11の学会の学会員(日本痛風・核酸代謝学会は非会員)をリエゾン委員が推薦し,当該学会の理事長の承認を求め査読をお願いした。これらの意見は内容に反映させた。


12 患者の視点からの評価
最近の治療ガイドラインでは,患者の視点(patient perspective)を加えることが推奨されており,患者の参加も試みた。従来のガイドラインではなかった新たな試みとして,患者さんの1人に外部評価委員としてドラフトを評価していただき,さらに外部評価を通して得られたコメントを記載していただいた。


13 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』改訂に関する利益相反の取り扱いについて
ガイドライン改訂にあたって,以下の指針により利益相反の管理を行った。

『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』と利益相反の管理   (2008年12月1日作成)
1. 本ガイドラインは,日本痛風・核酸代謝学会に設置されたガイドライン改訂委員会が作成した。ガイドライン改訂委員会の開催および活動に関わる経費は,日本痛風・核酸代謝学会の年間予算より支出され,他に財団法人痛風研究会の2006年度研究助成金が充当された。その他の資金提供は一切受けていない。
2. ガイドラインの記載内容は,ガイドライン改訂委員全員が詳細に検討したものであり,ガイドライン改訂委員は全内容につき,等しく責任を負う。
3. ガイドライン改訂委員会の利益相反に関しては,以下の基準に従い開示する。
1)  ガイドライン改訂委員が,ガイドライン改訂委員会が活動していた期間(2007年度,2008年度,2009年度)のいずれかの1年間において,当ガイドライン内に薬品名が記載された薬剤(以下,当該薬剤)に関する以下の場合に開示する。
 
(1)  当該薬剤に関する研究費が1企業あたり100万円を超えた場合
(2)  当該薬剤に関する講演料・指導料・原稿料・その他の報酬が1企業あたり総額で100万円を超えた場合
(3)  当該薬剤に関与する企業の株などによる収入が100万円を超えてあった場合
(4)  当該薬剤に関与する企業と雇用関係にある場合
2)  開示は上記の基準に従い各々のガイドライン改訂委員が自主申告した企業名をリストとして提示する。各委員の個別の情報は開示しない。
4. 上記の基準により,ガイドライン改訂委員のいずれかが該当する利益相反を以下に列挙する。
(1)  アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,塩野義製薬株式会社,第一三共株式会社,田辺三菱製薬株式会社,鳥居薬品株式会社,バイエル薬品株式会社
(2)  帝人ファーマ株式会社
(3)  なし
(4)  なし
5. なお,ガイドライン改訂委員長はガイドライン改訂作業を総覧する地位にいるため,利益相反に関しては明確に対処する必要があるが,上記(1)~(4)に該当して開示すべき利益相反はないことを明記する。


文献
1) Minds 診療ガイドライン選定部会監,福井次矢,吉田雅博,山口直人編:Minds 診療ガイドライン作成の手引き2007.東京,医学書院,2007
2) Oxman AD, Cook DJ, Guyatt GH: Users' guides to the medical literature. VI. How to use an overview. Evidence-Based Medicine Working Group. JAMA 272: 1367-1371,1994
3) Guyatt GH, Sackett DL, Cook DJ: Users' guides to the medical literature. II. How to use an article about therapy or prevention. A. Are the results of the study valid? Evidence-Based Medicine Working Group. JAMA 270 :2598-2601,1993
4) Elwood JM : Critical appraisal of epidemiological studies and clinical trials(2nd ed.). New York, Oxford University Press, 296,1998
5) Taylor WJ, Schumacher HR Jr, Baraf HS, et al: A modified Delphi exercise to determine the extent of consensus with OMERACT outcome domains for studies of acute and chronic gout. Ann Rheum Dis 67: 888-891,2008

 

 
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