(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)
VII.外科手術 |
(2)その他の上室性頻拍
Class I:
- 通常型心房粗動または心房リエントリー性頻拍を有し,器質的心疾患に対する心臓手術を行う場合
- 心外導管を用いたFontan型手術(Total Cavopulmonary Connection: TCPC)などの術後に発生した上室性頻拍で,特殊な血液循環動態のためにカテーテルアブレーションが不可能あるいは困難な場合
- 薬物療法が無効で,重篤な症状またはQOLの著しい低下を伴うWPW症候群などによる上室性頻拍で,カテーテルアブレーションが不成功あるいは再発した場合
- 先天性心疾患に対する手術後に発生した上室性頻拍で,頻拍発作に伴って血行動態の破綻を来し,カテーテルアブレーションが不成功あるいは再発した場合
器質的心疾患に対する手術を必要とする患者で,通常型心房粗動あるいは心房リエントリー性頻拍を合併する例では,頻拍発作は手術後急性期の管理を困難にするだけでなく,術後遠隔期死亡の原因となることが知られている.術前あるいは術中のマッピング所見に基づいた不整脈手術の適応があり,その根治率も高い.
Fontan型手術やMustard手術,Senning手術など複雑な心房切開を必要とする乳幼児期心臓手術では,術後遠隔期に心房リエントリー性頻拍が発生することがあり,頻拍に伴う自覚症状だけでなく血行動態の悪化も生じる354,355,356,357,358,359,360,361).頻拍の機序として,峡部依存性の心房粗動(isthmus-dependent atrial flutter)と心房切開線を旋回するリエントリー(incisional atrial reentry)が考えられている362).通常は,カテーテルアブレーションが適応となるが,これが不成功あるいは再発した場合には,頻拍回路の切断を行う不整脈手術の適応がある363,364,365).特に,心外導管を用いたFontan型手術(Total Cavopulmonary Connection: TCPC)などの術後では,特殊な血液循環動態のためにカテーテルアブレーションが不可能あるいは困難であり,外科治療以外には根本的治療が不可能な例がある.
WPW症候群ではカテーテルアブレーションによる治療成績が優れているが,副伝導路が心外膜側に存在するなどの理由で,カテーテルアブレーションが不成功あるいは再発した例では外科的副伝導路切断術の適応となる366).