(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)
VII.外科手術 |
不整脈に対する外科手術は根治療法として開発され,カテーテルアブレーションなど他の非薬物療法の発展に寄与しただけでなく,不整脈の解剖学的電気生理学的理解にも大きく貢献した. 不整脈外科は1959年にCouch331)が行った心室頻拍に対する心室瘤切除術に始まり,1967年には頻脈性心房粗細動に対する房室ブロック作成術が行われた.しかし,電気生理学的機序に基づいた根治的外科治療は,1968年のSealy332),1969年のIwaら333)によるWPW症候群に対する心内膜からの副伝導路切断術に始まる.その後,人工心肺を必要としない心外膜アプローチも開発され,WPW症候群に対する外科治療は1980年代には95%以上の成功率が得られるようになり,広く普及した.1978年以降には,心室頻拍334),房室結節リエントリー性頻拍,通常型心房粗動などに対する手術法が開発された.さらに1991年には,それまでは根治的な非薬物療法は不可能と考えられていた心房細動に対するmaze手術が開発された335,336).同じ頃,虚血性心室頻拍に対する心内膜切除と凍結凝固と左室形成術を組み合わせたDor手術337)も開発された.これらの不整脈外科手術によって得られた成績と知見に基づいて1990年代にはカテーテルアブレーションが急速に進歩し,広く普及した.その結果,maze手術とDor手術を除く他の不整脈外科手術の適応はカテーテルアブレーションの不成功例や施行困難例及び他の心臓手術を同時に行う場合などに限られるようになった.今後はこれらの不整脈手術の長期成績の評価とともに,心房細動や心室頻拍の電気生理学的機序の解明と外科用アブレーションデバイスの開発に伴い,より低侵襲な不整脈外科手術の開発が期待される.