(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)
V.植込み型除細動器 |
(3)原因不明の失神既往例
Class I:
- 器質的心疾患に伴う原因不明の失神があり,電気生理検査によって血行動態の破綻する持続性心室頻拍または心室細動が誘発され,薬物治療が無効または使用できない場合
- 心機能低下を伴う器質的心疾患と原因不明の失神を有し,電気生理検査により血行動態の安定した持続性心室頻拍が誘発される場合で,薬物療法またはカテーテルアブレーションが無効または不可能な場合
- 心機能低下を伴う器質的心疾患と原因不明の失神を有し,電気生理検査により血行動態の破綻する持続性心室頻拍または心室細動が誘発され,薬効評価がなされていない,または不可能な場合
- 拡張型心筋症,肥大型心筋症に伴う原因不明の失神を有するが,電気生理検査により血行動態的に破綻する持続性心室頻拍または心室細動が誘発されない場合
- 原因不明の失神で,電気生理検査により持続性心室頻拍または心室細動が誘発されない場合
器質的心疾患,特に左室機能低下を伴う原因不明の失神発作患者で,電気生理検査によって臨床的に意義のある持続性心室頻拍・心室細動が誘発される場合には,失神再発と突然死のハイリスク患者であることが示されている277,278,279,280,281).このような患者では,持続性心室頻拍・心室細動の自然発作を有し,電気生理検査で持続性心室頻拍の誘発される群と同等のリスクを有する282).基礎心疾患に伴う原因不明の失神に対して植込み型除細動器療法が積極的に用いられ,持続性心室頻拍患者と同等の予後改善効果が得られており283),原因不明の失神発作患者で基礎心疾患,特に低心機能を有し,血行動態的悪化を来す持続性心室頻拍・心室細動が電気生理検査で誘発される場合には,植込み型除細動器が第一選択の治療法となりうる245,284,285,286,287,288,289,290,291,292,293).誘発された持続性心室頻拍・心室細動に対する薬効評価に意味があるか否かに関してはデータが乏しいが,特に心機能低下例では,薬効評価の有無に関わらず植込み型除細動器が予後を改善する可能性が高い293).持続性心室頻拍・心室細動の誘発条件,多形性心室頻拍・心室細動を特異的とするか否かに関しては多少異論がある284).
一方,原因不明の失神で,電気生理検査で持続性心室頻拍・心室細動が誘発されない場合,特に心機能が保たれている症例では,失神再発及び突然死のリスクは少ない285).
しかし,最近の報告では,非虚血性拡張型心筋症における原因不明の失神では異なった意見が出されている.拡張型心筋症に伴う原因不明の失神は突然死の高リスクであり294,295),一方,拡張型心筋症では冠動脈疾患と異なり,電気生理検査で心室頻拍・心室細動が誘発されない場合にも心室頻拍・心室細動の発生頻度が高いことより296),原因不明の失神を有する拡張型心筋症では,電気生理検査にて心室頻拍・心室細動が誘発されない場合にも植込み型除細動器治療が妥当とする報告もみられる297).