(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)

 
V.植込み型除細動器

 
(1)持続性心室頻拍・心室細動

Class I:
  1. 心室細動が臨床的に確認されている場合
  2. 器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍を有し,以下の条件を満たすもの
    (1) 心室頻拍中に失神を伴う場合
    (2) 頻拍中の血圧が80mmHg以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合
    (3) 多形性心室頻拍
    (4) 血行動態的に安定している単形性心室頻拍であっても薬物治療が無効または副作用のため使用できない場合や薬効評価が不可能な場合,あるいはカテーテルアブレーションが無効な場合
Class IIa:
  1. 器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍がカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合
  2. 器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍を有し,薬効評価にて有効な薬剤が見つかっている場合
Class III:
  1. 急性の原因(急性虚血,電解質異常,薬剤など)による頻拍で,その原因を除去することで心室頻拍・心室細動の再発が抑制できる場合
  2. 抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない頻回に繰り返す心室頻拍あるいは心室細動
  3. カテーテルアブレーションや外科的手術により根治可能な原因に起因する心室細動・心室頻拍:例えばWPW症候群に関連した心房性不整脈や特発性持続性心室頻拍
  4. 6ヶ月以上の余命が期待できない場合
  5. 精神障害などで治療法に患者の同意や協力が得られない場合
  6. 心移植の適応とならないNYHAクラスIVの薬剤抵抗性の重度うっ血性心不全患者

器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍・心室細動,心臓突然死からの蘇生例は不整脈再発のハイリスク患者であり,2年間の再発率は10〜20%と報告されている227).これらに対する治療法としては,ホルター心電図または電気生理検査ガイドによる抗不整脈薬療法,アミオダロンの経験的投与,手術療法,カテーテルアブレーション,植込み型除細動器などがある216,217,228,229,230,231,232,233,234,235,236,237,238,239).カテーテルアブレーションは,適応となる症例がマッピング可能な血行動態的に安定した心室頻拍に限られ229,230),その成功率は約70%と必ずしも高くなく,根治性にも限界があり殆どの症例で植込み型除細動器が選択される.しかし,植込み型除細動器は頻拍を停止させるという対症療法に過ぎないため,インセサント型や頻回の心室頻拍などに対しては一部カテーテルアブレーションの有用性がある231).I群抗不整脈薬は,催不整脈作用,陰性変力作用及び低い有効性のために限界がある.前向き無作為試験の結果から,電気生理検査ガイド下のソタロールや経験的アミオダロン投与はI群薬に比較して心室頻拍・心室 細動の再発予防に有用であることが示されている227)
これまでの報告から,器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍・心室細動患者に対して植込み型除細動器は抗不整脈薬療法よりも予後を改善することが示されている.特に,左室機能低下患者において,植込み型除細動器の予後改善効果が大きい240,241,242).植込み型除細動器とアミオダロンを比較した後ろ向きならびに前向き研究では,植込み型除細動器の方が生存率を改善することが示されている48,241,243,244,245). AVID(Anti-arrhythmics Versus Implantable Defibrillators)試験48)では,心室細動からの蘇生例及び重篤な症状を伴う持続性心室頻拍患者において,植込み型除細動器はアミオダロンに比較して,より生存率を改善することが示されている.植込み型除細動器の生存率改善作用は,左室駆出率が35%未満の患者において最も著明であり,35%以上の症例では抗不整脈薬群と差がなく,植込み型除細動器は低心機能症例の生存率改善に有用であった.
心室細動の多くは器質的心疾患に伴って発生するが,明らかな器質的心疾患を伴わない心室細動があり,これを特発性心室細動と呼ぶ.突然死例や心停止蘇生例の10〜20%は特発性心室細動である246,247,248).心停止の既往を有する特発性心室細動例は,不整脈イベント再発のハイリスク患者であり心臓突然死の年間発生率は11%にものぼると推定される246,247,248).薬物療法による再発予防効果は不確実であり,最近の限られた臨床データからは,植込み型除細動器植込みが最も有効な治療法と考えられる246,247,248,249,250)

 

 
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