(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)

 
V.植込み型除細動器

 
植込み型除細動器はMirowskiらにより1980年に初めて植込まれた216).その成績が極めて良好であったことより,1985年には突然死予防の有力な治療法として米国FDAにより承認された.初期の植込み型除細動器は250cc,225gと大きく腹部への植込みと開胸による心外膜への大きなパッチの装着を必要とした217).その後,通電波形を単相性から二相性に変えることにより除細動閾値が改善し,開胸が不要となり,植込み型除細動器本体も現在では約40cc,80gと小型軽量化が進み,胸部への植込みが可能となった.現在では,ペースメーカー植込み術と同様に局所麻酔により植込み,静脈麻酔で除細動閾値を測定することで,心機能低下症例でも比較的安全に植込みを行うことが可能である.このような植込み型除細動器の進歩を背景に,手術死亡は1%未満,手術合併症は5%未満と著しく減少した218)
植込み型除細動器の直流通電ショックは疼痛・不快感を伴う.頻回のショックは疼痛・不快感の問題だけではなく心機能を悪化させ,心不全症例の予後を悪化させる.抗頻拍ペーシングにより心室頻拍を停止させる第三世代以降の植込み型除細動器は,ショックのみの第二世代植込み型除細動器に比較して心不全例の心不全死及び突然死を予防することが示されている.アミオダロンとβ遮断薬の併用は心室頻拍発作を減らし,ショックの回数を減少させる219)ことで予後を改善する可能性が期待できる.
インセサント型心室頻拍や頻発する心室頻拍に対しては,停止を目的とする植込み型除細動器には限界があり,アミオダロンによる心室頻拍の予防やカテーテルアブレーションによる心室頻拍の治療を植込み型除細動器と組み合わせて行う併用療法が必要となる.
また,植込み型除細動器の問題点は,心房細動・心房粗動などの上室性頻脈性不整脈の際の不適切な作動である.デュアルチャンバー植込み型除細動器(第五世代植込み型除細動器)は心房電極を付加することにより心房細動や心房粗動,洞頻脈に対する不適切な作動の頻度を減少させることが可能になった.従来の植込み型除細動器の抗徐拍ペーシングは心室抑制型(VVI)ペーシングであったが,第五世代植込み型除細動器ではDDDペーシングも可能である.心機能低下症例では心房-心室同調運動の維持は血行動態的に重要な要素であり,デュアルチャンバー植込み型除細動器は血行動態的有用性も高い.しかし,不必要な右室ペーシングは心機能を悪化させ,心不全を惹起する可能性があることに注意する必要 がある220)
植込み型除細動器の著しい進歩と大規模試験の結果に伴い,2002年のACC/AHA/NASPEのガイドラインでは一次予防としての植込み型除細動器が広く容認されている12)
わが国では1990年1月より臨床試験が開始され221,222,223,224,225,226),1994年7月には厚生省薬事承認を受け,1996年4月に保険償還が認められ,植込み数は急速に増加している.

 

 
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