(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)
IV.カテーテルアブレーション |
(2)心房細動
Class I:なし
Class IIa:
Class IIa:
- 症状またはQOLの低下を伴う薬物治療*抵抗性または副作用のため薬物が使用不能な発作性心房細動
- パイロットなど職業上制限となる場合
- 症状またはQOLの低下を伴う薬物治療*抵抗性または副作用のため薬物が使用不能な慢性心房細動
- 薬物治療*が有効な心房細動
- QOLの著しい低下を伴わない心房細動
(*抗不整脈薬による治療)
心房細動では,動脈塞栓症のリスクの増大,また,心房収縮の欠如,不適切な心室拍数による心機能低下や胸部症状が出現しうる.心房細動では心房細動持続期間,器質的心疾患の有無や年齢などによって治療戦略は異なる.ここでは,7日以内(多くは24時間以内)に自然停止するものを発作性,自然停止しないものを慢性と定義する.
薬物治療にはリズムコントロールとレートコントロールがある.AFFIRM(Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Rhythm Management)試験では,QOLと生命予後において両治療に有意差を認めていない158).抗不整脈薬を用いたリズムコントロールに比べ,肺静脈アブレーション(後述)が洞調律維持効果に優れているとの報告が増えてきた159,160,161).発作性心房細動の多くの患者においてはトリガーが肺静脈内に存在し,左右の肺静脈を左房から電気的に隔離するアブレーション法により心房細動の再発が予防可能である.現在,4つの肺静脈を個別に隔離する方法162)あるいは同側上下の肺静脈をまとめて隔離する広範肺静脈隔離術163)が実施されるが,いずれも再発例に対しては2回目あるいはそれ以上のアブレーションが必要であり,特有の合併症発生のリスクが存在する.心房細動根治率は,前者で58〜76%,後者で62〜95%,合併症として前者では肺静脈狭窄,後者では左房食道瘻,左房起源心房頻拍,またいずれの方法でも動脈塞栓症,心タンポナーデ,迷走神経障害(消化管運動障害),横隔膜神経障害などが報告されている164,165).
慢性心房細動に対するアブレーションの有効性に関する報告も数多くなっている159,160,164,166).最近,6ヶ月以上存在する慢性心房細動症例において,電気的除細動後に抗不整脈薬を投与した群(58%)より,カテーテルアブレーション実施群(74%)において12ヶ月後の洞調律維持率が有意に(p<0.05)高いことが報告された.この報告では,広範肺静脈隔離術+左房後壁(あるいは天蓋部)線状アブレーション+僧帽弁峡部線状アブレーションが実施されている.心房細動が持続するための基質(右房,左房)をアブレーションする方法167)も含めた慢性心房細動のアブレーション成功率は50〜60%とされる.
房室接合部アブレーションによる房室ブロック作成術は,心房細動時の薬物による心室拍数コントロールが不良な場合に有用な治療手段である168).カテーテルアブレーションによる心房細動の根治の適応がない場合に考慮すべき方法と考えられる.