(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)
IV.カテーテルアブレーション |
(1)WPW症候群・房室結節リエントリー性頻拍
房室結節リエントリー性頻拍
Class I:
- 失神などの重篤な症状や軽症状でもQOLの著しい低下を伴う頻拍発作の既往がある場合
- 頻拍発作があり,薬物治療の有無に関わらず患者がカテーテルアブレーションを希望する場合(ただし完全房室ブロックとペースメーカー植込みの合併症に関して十分な説明を受けていることを前提とする)
- 頻拍発作の心電図が確認されている患者で,電気生理検査で頻拍が誘発されず二重房室結節伝導路のみが認められた場合
- 他の頻拍に対するカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された房室結節リエントリー性頻拍
- 頻拍発作の既往のない患者において,電気生理検査中に二重房室結節伝導路が認められるが,頻拍は誘発されない場合
WPW症候群(Kent束)や房室結節リエントリー性頻拍に対する高周波カテーテルアブレーションの治療効果は著しく141,142,143,144,145,146,147,148,149,150,151,152,153),わが国において急速に普及した154,155,156,157).対症療法である薬物療法とは異なり,カテーテルアブレーションは根治的治療法なので,患者のQOL改善度においても医療経済的な視点においてもより優れた治療法であると言える.現在では症状のある患者に対する第一選択治療として用いられることも多い.
WPW症候群では,初回発作で多くの人命に関わる可能性のあるパイロットなどの特殊な職業人に対しては,無症状であってもハイリスク群(参考値:心房細動時の最短RR時間≦220msec,副伝導路有効不応期≦250msec)と考えられる場合には治療が行われていることもあるため,その社会的適応についても十分考慮することが必要である.顕性WPW症候群においては,成功率が95%程度と高く再発率も5%程度,また合併症は1〜2%と低いことを考慮すると,症状のない症例に対して十分に合併症の説明をしてもなお,患者が希望する場合は治療の有用性は高いと考えられる.
房室結節リエントリー性頻拍に関しては,完全房室ブロックとペースメーカー植込みの合併症が1〜2%あることを含めて十分な説明を受けたうえで,患者がカテーテルアブレーションを希望することが必要である.