(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)
II.臨床心臓電気生理検査 |
(1)徐脈性不整脈
診断を目的とした心臓電気生理検査
Class I:
- 失神・めまい等の症状と,洞機能不全,房室ブロック,心室内伝導障害等による徐脈との因果関係が不明な場合
- 失神・めまいを有し,原因として徐脈が疑われる場合
- ペースメーカーの適応のある洞機能不全,房室ブロック症例で,洞結節機能や房室伝導障害の評価が必要な場合
- 症状のないMobitz II型第2度房室ブロック・第3度房室ブロック及び2枝または3枝ブロックの症例でブロック部位の同定及び洞結節機能評価が必要な場合
- 症状のない慢性2枝ブロック
- 症状のない洞徐脈,第1度房室ブロック,Wenckebach型第2度房室ブロック
診断を目的とした電気生理検査では診断の確定のみでなく,失神・めまいなどの自覚症状が徐脈性不整脈によるかを診断することが重要である.洞機能不全や房室ブロックなどの徐脈性不整脈において自覚症状は認められるが,モニター心電図やホルター心電図ではその関係が証明されない場合も多い.洞結節機能は洞結節回復時間と洞房伝導時間や洞結節電位記録法で評価される15,16,17,18,19).房室ブロック・心室内伝導障害の例ではHV間隔の測定,高頻度心房刺激法によるHVブロックの出現を確認し,自覚症状との関係を検討する20,21,22).ペースメーカー植込み後の症例でも失神・めまい等の自覚症状がある場合には電気生理検査を行い,他の不整脈,例えば頻脈性不整脈や過敏性頸動脈洞症候群,神経調節性失神の合併の有無を評価する.原因不明の失神・めまいを有する例では,その原因として徐脈性不整脈による場合が考えられる.過敏性頸動脈洞症候群,神経調節性失神では電気生理検査の診断的意義は高くなく,ホルター心電図,運動負荷心電図やhead-up tilt試験23)との組み合わせにより診断を行う.
ペースメーカーの適応のある洞機能不全,房室ブロック症例で,洞結節機能や房室伝導能を評価することはペースメーカーの機種選択を行ううえで重要である21).生理的ペーシングは患者のQOLを改善し,心房細動の予防ひいては生命予後の改善をもたらす16,24).無症状でもブロック部位がHis束内またはHis束以下の場合がある20,21,22).特に基礎心疾患を有する症例では無症状でもペースメーカーの適応となる場合がある.無症状の2枝ブロックは将来高度房室ブロックに進行する可能性は否定できないが25),電気生理検査を積極的に勧めるエビデンスはない.新たに出現したり,基礎心疾患を有する症例で心臓カテーテル検査をする場合に付加的に電気生理検査によりHis-Purkinje系伝導能を評価しておくことは意義があると考えられる.