(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)

 
I.ガイドラインの背景及び考え方

 
(6)インフォームド・コンセント

不整脈の非薬物治療のような高度の新医療技術を要する治療の適応決定にあたっては,患者が自ら理解しうる言葉で十分な情報を与えられたうえでの同意(informed consent)が不可欠である.その説明内容は個々の医師の知識と経験に基づく判断に影響されるが,具体的には下記の情報を患者に提供することが必要である.
すなわち,(1)病気に関わる情報(不整脈の種類,重症度,基礎心疾患など),(2)治療内容及びそれによってもたらされる効果に関わる情報(一般的情報のみならず当該施設における情報が必要),すなわち治療目的と内容(ペースメーカーや植込み型除細動器,両室ペースメーカー,両室ペーシング機能付き植込み型除細動器については機種名及び製造会社名を含む),その治療効果と成功率,付随する危険ないし合併症の種類,重症度及び発生頻度,管理と長期追跡時の合併症の種類,重症度及び発生頻度及び本治療法を選択した理由,(3)本治療法以外の治療法(薬物療法,他の非薬物療法,更に当該施設のみならず,他施設で可能な治療法)とそれによってもたらされる効果(各々の成功率と合併症など),(4)本治療法を行わずに放置した場合に予想される結果に関わる情報(予測される転帰とその確率など),(5)各種不整脈に対する本治療法の位置づけ,予測しえない合併症が存在しうること(短期及び長期),及び今後の進歩の可能性などである.
しかし上記情報を患者に十分提供することは必ずしも容易ではない.なぜならそれは現代医学自体の限界や,当該医師の知識と経験の限界に基づく場合もあれば,患者側の問題として情報によって混乱を招く場合もあり,インフォームド・コンセントの内容は重要な課題であろう.更に今後施設基準を満たした施設名及び学会による認定医の開示のみならず,実施症例と成績(成功率,合併症)の開示が求められるであろう.
非薬物治療の適応決定にあたっては“自己決定権”が最も重要であるが,「患者が強く希望するから」「患者が望まないから」ということを過大評価することには慎重でなければならない.なぜなら,その根拠となる医療情報を独占するのは医師である.医師はより正確かつ最新の情報を提供できるように自己研鑽に励み,かつ患者・家族の理解度に応じてわかりやすく説明できる手法を身につけるべきである.そしてインフォームド・コンセントが患者にとって利益と不利益を比較考慮し患者自身が“真の利益”を選択できる唯一の機会であることを医師は十分に認識しなければならない.

 

 
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