(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)

 
I.ガイドラインの背景及び考え方

 
(5)非薬物治療の医療条件

不整脈の非薬物治療は高度の医療技術を必要とし,かつ進歩の速い領域である.従って,本ガイドラインを適用するにあたっては,医師及び施設の要素は極めて重要であり,具体的には医師として下記の条件が必要である.
     (1) 臨床心臓電気生理検査について十分な知識と経験を有する.
  (2) 抗不整脈薬療法について十分な知識と経験を有する.
  (3) 非薬物治療としてペースメーカー,カテーテルアブレーション,植込み型除細動器及び外科手術について十分な知識と医療技術を有する.かつ各々の合併症に対しても緊急手術など十分な対応が可能である.
また施設として下記の条件が保険上ないし学会から求められている.

1)植込み型除細動器

保険適用にあたっての条件として下記の施設基準が定められている.
     (1) 循環器科及び心臓血管外科を標榜している病院である.
  (2) 臨床心臓電気生理検査を年間50例以上実施している.なお,このうち5例以上は心室性頻脈性不整脈症例に対するものである.
  (3) 開心術を年間30例以上実施しており,かつペースメーカー移植術を10例以上実施している.
  (4) 循環器科及び心臓血管外科の常勤医師数がそれぞれ2名以上である.
  (5) 所定の研修を修了している常勤医師数が2名以上である.

2)カテーテルアブレーション

1990年に日本心臓ペーシング・電気生理学会(現・日本不整脈学会)により以下の施設基準が提起されており14),現在でも準拠されるべき点が多い.
     (1) 心臓電気生理学的検査について十分な知識と経験を有する.
  (2) 抗不整脈薬療法について十分な知識と経験を有する.
  (3) ペースメーカー療法について十分な知識と経験を有する.
  (4) カテーテルアブレーション施行時には心臓外科医および医療スタッフが待機し,緊急手術が可能である.

3)心臓ペースメーカー

植込み実施施設数は2,500施設を超えるとされている.未だその施設基準はないが下記の条件を満たすことが望ましい.
     (1) 年間10例以上のペースメーカー植込み術を施行していること
  (2) 臨床心臓電気生理検査を行えること
  (3) ぺースメーカークリニックなど自施設で行えるチェックシステムを持っていること
  (4) 循環器専門医または胸部外科認定医が常勤していること

4)両室ペーシングによる心臓再同期療法

保険適用にあたっての条件として下記の施設基準が定められている.
     (1) 循環器科及び心臓血管外科を標榜している病院である.
  (2) 心臓電気生理学的検査を年間50例以上実施している.うち5例以上は心室性頻脈性不整脈症例.
  (3) 開心術又は大動脈,冠動脈バイパス術を合わせて年間50例以上実施しており,かつ,ペースメーカー移植術を年間10例以上実施している.
  (4) 体外式を含む補助人工心臓等を用いた重症心不全治療の十分な経験のある施設である.
  (5) 循環器科及び心臓血管外科の常勤医師数がそれぞれ2名以上である.
  (6) 所定の研修を修了している常勤医師数が2名以上である.
今後,植込み型除細動器,心臓再同期療法の施設基準の改定も必要になると考えられるが,更にカテーテルアブレーションのみならず,心臓ペースメーカーに関しても保険政策上,一定の施設基準の設定が検討されるであろう.いずれにしても非薬物治療を有効かつ安全に実施するために各施設において人材の育成,設備の充実,そしてシステムの確立をはかることが不可欠と考えられる.
本邦では日本不整脈学会が臨床心臓電気生理検査,カテーテルアブレーション,植込み型除細動器,及び心臓再同期療法に関するセミナーを実施している.現在その教育研修システムの充実と専門医制度が検討されている.更に,日本不整脈学会が行っている「心臓ペースメーカー技士養成のためのセミナー」の発展による企業サイドの人材育成もまた今後の重要課題である.

 

 
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