(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)
I.ガイドラインの背景及び考え方 |
(4)非薬物治療の適応
不整脈の非薬物治療の目的は(1)心臓突然死の予防,生命予後(mortality)の改善,(2)不整脈に基づく症状の改善,生活予後(morbidity)の改善,及び(3)患者の社会生活上の満足度の改善にあり,(2)(3)は生活の質(quality of life, QOL)の改善といわれる.換言すれば,非薬物治療の適応は医学(生物学)的側面からと社会(医学)的側面からの検討が必要である.すなわち,前者としては不整脈によるAdams-Stokes発作(失神,眼前暗黒感を伴うめまいなどの脳虚血症状),動悸,胸内苦悶感,胸痛,心不全症状,血行動態の破綻などの症状を来しうるか,そして致死的になりうるかを評価することである.更に,基礎心疾患,心機能からみた評価,頻脈性と徐脈性不整脈との関係からみた評価,薬物や運動に対する反応からみた評価,臨床心臓電気生理検査,加算平均心電図,T wave alternansによる評価などが必要である.後者としては,患者を全人的に把握し,社会(家庭ないし職場など)人としての満足度と要求度を評価することである.例えば,飛行機のパイロット,電車や車の運転手及び高所での作業などの危険を伴う職業に従事する場合,若年者,特にスポーツ活動を希望する場合,妊娠を希望する場合,車の運転を希望する場合,遠隔地の居住者,頻回に旅行,出張(特に時差を伴う海外出張)をする場合,精神的及び肉体的ストレスの多い職業に従事している場合などである.