(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)

 
I.ガイドラインの背景及び考え方

 
(1)本邦における非薬物治療の現状

不整脈に対する非薬物療法として徐脈性不整脈に対するペースメーカー療法は,本邦では1974年に保険償還され,急速に普及し,1980年代にはペースメーカーの小型化,電池寿命延長,生理的ペースメーカーの開発により年間植込み症例数は昨年には44,000例を超えている.一方,頻脈性不整脈に対する治療は1950年代以降薬物療法が中心であったが,1989年CAST(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)報告以来1),薬物療法は大きな転換期を迎え,非薬物療法の位置づけが飛躍的に向上した.頻脈性不整脈の根治を目的として1970年代から1980年代には外科手術が進歩した.更に1980年代にカテーテルアブレーション(catheter ablation)と植込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator: ICD)が開発され1990年代には欧米で急速に普及した.カテーテルアブレーションは開胸術を必要としない,不整脈発生源に対する根治療法として確立している.また,米国では心臓突然死が年間約40万人でその80〜90%が心室細動・心室頻拍によると考えられており2,3),植込み型除細動器は最も強力な突然死予防法として位置づけられている.慢性心不全症例に20〜30%合併する左脚ブロック型心室内伝導障害が独立した予後規定因子となることから,1996年以降,両室ペーシングによる心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy: CRT)が確立され,欧米では急速に普及しつつある.更に慢性心不全の死因は40〜50%が突然死であり,その多くは心室細動によると考えられることから,両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)が開発されている.
本邦では1994年にカテーテルアブレーション,1996年に植込み型除細動器の保険適用が認められた(図1).各々の非薬物療法は進歩の著しい領域であり,現在なお普及過程にある(図2).本邦での心臓突然死の実態は必ずしも明らかではないが4),6〜8万人と推定される.その直接死因の多くは心室性頻脈性不整脈と考えられる5,6)が,その基礎心疾患は植込み型除細動器植込み症例の分析からは欧米と異なることが示唆されている7)(図3).また2004年には心臓再同期療法の保険適用が認められ,2006年7月には両室ペーシング機能付き植込み型除細動器が保険償還を受けた.
従って,本邦において薬物療法と非薬物療法の使い分けのみならず,カテーテルアブレーションと植込み型除細動器と外科手術の使い分けが必要であり,現時点における非薬物治療のガイドライン作成の臨床的意義は極めて高い.


図1 不整脈に対する薬物療法および非薬物療法の歴史
図1 不整脈に対する薬物療法および非薬物療法の歴史


図2 日本における植込み型除細動器症例数の経時的変化
図2 日本における植込み型除細動器症例数の経時的変化


図3 日本と米国における植込み型除細動器症例の基礎心疾患
図3 日本と米国における植込み型除細動器症例の基礎心疾患

 

 
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