(旧版)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン

 
V 骨粗鬆症の治療

 
D.骨粗鬆症の薬物治療
b. 各薬剤の特徴とエビデンス
(5)ビスフォスフォネート製剤
 3)リセドロネート


解説

リセドロネートは,側鎖にピリジニル基を有する構造から第3世代のビスフォスフォネートに分類される。
リセドロネートは強力に骨吸収を抑制することにより,骨代謝回転を抑制し,骨密度の増加および骨折の予防効果を示す。
リセドロネート投与後の骨質の変化について,同一患者から投与前後に採取した腸骨の骨生検により検討されている。
骨石灰化に対するリセドロネート5mg,3年間および5年間の投与の効果が,閉経後骨粗鬆症女性で検討されている。リセドロネートは骨代謝回転を低下させ,それにより石灰化の程度が増加し,低石灰化骨分画/高石灰化骨分画比を減少させるとされる417),418)。また,3次元µCTによる骨微細構造の検討でも,プラセボ群では骨梁構造の劣化がみられたが,リセドロネート5mg,5年間の投与は,これを予防するとされる417)

骨密度に対する効果
リセドロネートの骨密度増加効果は,国内第III相二重盲検比較試験(投与期間:48週間)において検討され,最終評価時点の腰椎骨密度の増加率はリセドロネート群で4.93%,エチドロネート群で3.06%と,エチドロネート群に比べて有意に高い骨密度増加効果が認められた419)
わが国の臨床試験では2.5mg投与であるが,海外で使用される用量5mgと同程度の腰椎骨密度増加効果が認められた101)。用量の違いは主に消化管からの吸収の違いによる可能性が考えられている。
海外の臨床試験(5mg)では,大腿骨頸部と大腿骨転子部420)の骨密度増加が,プラセボより有意に高値であると報告されている。

骨折予防効果
リセドロネート群(2.5mg)と,エチドロネート群の新規椎体骨折の発症率を比較した,96週の国内の臨床試験によると,前者が12.3%,後者が14.2%であり,リセドロネートはエチドロネートに劣らないことが示されている101)
北米(VERT-NA)および欧・豪州(VERT-MN)の二つの大規模試験(5mg)では,リセドロネートは3年間の新規椎体骨折リスクを前者で41%,後者では49%抑制した94),424)。しかもこの椎体骨折抑制効果は,投与開始後1年目からすでに認められた。また,椎体以外の骨折についても発生リスクを40%以上減少させた94)
大腿骨頸部骨折の抑制効果を主要評価項目とした海外の大規模介入試験(HIP)(2.5mg,5mg)では,大腿骨頸部の低骨密度が確認された70〜79歳の骨粗鬆症患者5,445例(第1群),および骨粗鬆症以外の骨折危険因子を一つ以上有する80歳以上の女性3,886例(第2群)を対象として,大腿骨頸部骨折の発症と3年間のリセドロネートの効果が検証された193)。その結果,全体では大腿骨骨折発生率はプラセボ群の3.9%に対し,リセドロネート群で2.8%と,約30%減少した。
特に70〜79歳の骨粗鬆症患者(第1群)での大腿骨頸部骨折発生率は,リセドロネート投与により40%抑制された。試験開始時にすでに椎体骨折を有していた1,128例では60%の抑制効果が認められた。
骨粗鬆症以外の骨折危険因子を有する第2群では,たとえ高齢者であっても,大腿骨頸部骨折の発症はリセドロネートにより有意に抑制されなかった。
その他,ステロイド性骨粗鬆症421)や男性骨粗鬆症422)においても,椎体骨折予防効果が確認されている。

骨代謝マーカー
骨代謝マーカーについては,国内のリセドロネート2.5mg,48週投与の臨床試験では,尿中DPDは投与開始時より37.6%,尿中NTXは41.3%低下した419)
海外のリセドロネート5mg,3年間の臨床試験では,血中BAPは33%(プラセボ7%),尿中DPDは26%(プラセボ1%)低下した94)

QOLに対する効果
国内のリセドロネート2.5mgの96週の臨床試験で,SF-36(日本語版)を用いて検討された101)
リセドロネートは,投与前に比較して,日常役割機能(身体),体の痛み,活力,社会生活機能を改善した101)

その他(安全性を含む)
国内のリセドロネート2.5mgとエチドロネートの臨床試験によると,薬剤関連有害事象の頻度はおのおの31.5%(胃腸障害17.6%),32.8%(胃腸障害19.7%)で,両剤の頻度に有意差はみられなかった。身長の変化はエチドロネート群の-0.70±1.32(平均±SD)cmと比較して,リセドロネート群では-0.28±1.26cmであり,両群の差は有意であった101)

[エビデンステーブル]
表51 リセドロネートの骨粗鬆症における主な多施設臨床試験のまとめ
効果 文献 例数
(試験薬/対照薬)
試験デザイン 成績 エビデンス
レベル
骨密度 419) 118(RIS)/
117(EHDP)
RCT(国内,2.5mg,48週) 腰椎:RIS+4.93%,EHDP+3.06% II
  420) 177(RIS)/
180(プラセボ)
RCT(海外,5mg,2年) 腰椎:RIS+4.1%
大腿骨頸部:RIS+1.3%
大腿骨転子部:RIS+2.7%
II
骨折
(椎体)
423) 2,604 メタアナリシス
(海外,2.5〜5mg,2〜3年)
椎体:相対リスク0.64
(異質性P=0.89)
I
  101) 273(RIS)/
274(EHDP)
RCT(国内,2.5mg,96週) 椎体:骨折発生率
RIS12.3%,EHDP14.2%
II
  94) 813(RIS)/
815(プラセボ)
RCT(海外,5mg,3年) 椎体:相対リスク0.59 II
  424) 407(RIS)/
407(プラセボ)
RCT(海外,5mg,3年) 椎体:相対リスク0.51 II
(大腿骨) 193) 3,624(RIS)/
1,821(プラセボ)
RCT(海外,2.5mg,5mg,3年) 大腿骨:相対リスク0.6 II
(その他) 423) 12,958 メタアナリシス
(海外,2.5〜5mg,2〜3年)
非椎体:相対リスク0.73
(異質性P=0.81)
I
  94) 813(RIS)/
815(プラセボ)
RCT(海外,5mg,3年) 非椎体:相対リスク0.6 II
(ステロイド性骨粗鬆症) 421) 174(RIS)/
170(プラセボ)
RCT(海外,5mg,1年) 椎体:相対リスク0.3 II
(男性) 422) 158(RIS)/
158(alfacalcidol)
RCT(海外,5mg,1年) 椎体:相対リスク0.4 II
骨代謝マーカー 419) 118(RIS)/
117(EHDP)
RCT(国内,2.5mg,48週)
尿中DPD: RIS-37.6%
EHDP-22.5%
尿中NTX: RIS-41.3%
EHDP-26.6%
II
  94) 250〜253(RIS)/
241〜245(プラセボ)
RCT(海外,5mg,3年) 血中BAP:RIS-33%
尿中DPD:RIS-26%
II
QOL 101) 176(RIS)/
164〜166(EHDP)
RCT(国内,2.5mg,96週)
RIS: 日常役割機能(身体)体の痛み,活力,社会生活機能が改善
EHDP: 体の痛み,全体の健康感,活力,心の健康が改善
II
その他
(安全性を含む)
101) 273(RIS)/
274(EHDP)
RCT(国内,2.5mg,96週) 薬剤関連有害事象:
RIS31.5%,EHDP32.8%
II
  425) 83(RIS)/
81(プラセボ5年,RIS2年)
RCT(海外,5mg,7年) 上部胃腸有害事象:RIS9.6%,プラセボ+RIS8.6%(うち中等度〜高度:RIS3.6%,プラセボ+RIS3.7%) II


推奨

骨密度:骨密度増加効果がある(グレードA)。
椎体骨折:椎体骨折を防止する(グレードA)。
非椎体骨折:非椎体骨折を防止する(グレードA)。
骨密度増加効果,椎体骨折防止効果,大腿骨頸部骨折を含めた非椎体骨折全般の防止効果を示すエビデンスを有する。
(総合評価:グレードA)


Additional Statement
海外では,2年間の週1回投与(35mg/週)が連日投与(5mg/日)と比較されている426)が,新規椎体骨折,非椎体骨折,腰椎骨密度,有害事象に差がないとされる。最近,日本人においても,週1回投与製剤について,連日投与製剤と同等の効果,安全性が報告されている427)

 

 
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