(旧版)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン
II 骨粗鬆症の診断 |
C.椎体のエックス線写真の評価:骨粗鬆化と骨折の評価
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胸・腰椎のエックス線写真は,椎体の骨折・変形,退行性変化,骨粗鬆症に類似した疾患(腰背部痛,円背や低骨量を呈する疾患)の鑑別に必要である。
胸・腰椎(正面・側面像)のエックス線撮影時には,使用フィルム,エックス線焦点・フィルム間距離,撮影体位,エックス線の中心線,撮影時の呼吸状態を一定にする33)。
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骨粗鬆化の評価は,従来の骨萎縮度判定基準を参考にして行う9),10)(表12,図9)。
表12 椎体エックス線写真での骨粗鬆化の判定法(文献9,10より引用) |
椎体エックス線写真での骨粗鬆化 | 骨萎縮度判定基準 | 椎体のエックス線写真所見 | ||
なし | 骨萎縮なし | 縦と横の骨梁が密に走行 | ||
疑いあり | 骨萎縮度I度 | 縦の骨梁が目立つ | ||
あり | 骨萎縮度II度以上 | 縦の骨梁が粗となる | ||
縦の骨梁が不明瞭となる | ||||
図9 椎体エックス線写真での骨粗鬆化の評価 A:骨粗鬆化なし,B:骨粗鬆化の疑いあり,C・D:骨粗鬆化あり |
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椎体の前縁高(A),中央高(C)と後縁高(P)の計測には,山本らの方法90)や,National Osteoporosis Foundationの評価法91)が用いられる。
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椎体を,正常(grade0),軽度変形(grade1),中等度変形(grade 2)と高度変形(grade 3)に視覚的に分類する92)(図10)。
図10 椎体変形の半定量(SQ)評価法(文献92より引用) |
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Reproduced from J Bone Miner Res 1993;8:1137-48 with permission of the American Society for Bone and Mineral Research |
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日本骨代謝学会では,既存骨折の判定を椎体計測で行うことと定めている10)(表13)。
また,骨粗鬆症治療薬の臨床試験では,計測またはSQで既存椎体骨折の判定が行われている(表14)。
表13 椎体骨折の判定法(文献10より引用) |
椎体骨折の判定は,胸腰椎の側面エックス線写真を用いて以下の基準に従って行う。 | ||
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[エビデンステーブル] 表14 骨粗鬆症の臨床試験と,既存椎体骨折,新規椎体骨折の判定 |
薬 剤 | 試験名 | 文 献 | 既存椎体骨折 | 新規椎体骨折 | 骨折増悪 | |||
方 法 | 基 準 | 方 法 | 基 準 | |||||
海外 | ALN | FIT I | 34) | 計測 | -3SD以下 | 計測&SQ&調整 | -20%以上&-4mm以上 Gradeが1以上進行 |
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RIS | VERT-NA | 94) | 計測 SQ |
A/Pまたは C/P≦0.8 Grade1以上 |
(SQ+計測)&調整 | Gradeが1以上進行 -15%以上 |
Grade1から1以上進行&-4mm以上 | |
RLX | MORE | 95) | SQ | Grade1以上 | SQ&(SQ+計測)のうち2回以上 | Gradeが1以上進行 | ||
SCT | PROOF | 96) | 計測 SQ |
-3SD以上 Grade1以上 |
(SQ+計測)&(SQ+計測)&調整 | Gradeが1以上進行 -20%以上&-4mm以上 |
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Strontium | SOTI | 97) | SQ | Grade1以上 | SQ+計測 | -15%以上&-3mm以上 | ||
PTH | 98) | SQ | Grade1以上 | SQ | Gradeが1以上進行 | |||
Ibandronate | BONE | 99) | 計測 | 不明 | 計測 | 椎体高/椎体高比(A/P,C/P)が-20%以上&-4mm以上 | ||
国内 | ALN | 100) | 計測 | ![]() ![]() |
計測 | -20%以上 | ||
RIS | 101) | 計測 | ![]() ![]() |
計測 | -20%以上 |
ALN:アレンドロネート,RIS:リセドロネート,RLX:ラロキシフェン,SCT:サケ・カルシトニン,PTH:副甲状腺ホルモン |
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A-TOP研究会(資料「骨粗鬆症における医師主導型臨床研究:A-TOP研究会」参照)では,日本人女性について新規椎体骨折と椎体計測値(椎体高と椎体高比)との関係を報告している93)。
それによるとベースラインに比較して,椎体高比が15%以上低下し,さらに


骨粗鬆症治療薬の臨床試験で行われている新規椎体骨折の評価方法と判定基準を表14に示す。
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骨粗鬆症の疫学調査や治療薬による臨床試験には,椎体骨折の評価基準の設定が必須である。
既存椎体骨折の判定は,SQ,計測の単独または両方を用いることが多い。
新規椎体骨折については,SQと計測のほか,さらには判定結果の調整を行う場合もある。
計測では,ベースラインに対する椎体高比(%)と椎体高(絶対値)の変化の両方を評価する場合もある。
なお,新規椎体骨折の発生率は,既存椎体骨折の有無と密接な関係があることに留意する必要がある(グレードA)。
【参照】
「V 骨粗鬆症の治療 B.治療効果の評価と管理 c.椎体の変形と骨折 」