(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2009年版

 
Clinical Questions

 


CQ19:大腸癌術後サーベイランスの意義
19B  重複がん
推奨カテゴリーB
遺伝性大腸癌以外の大腸癌の罹患歴は他臓器癌発生のリスク要因として確認されておらず,大腸癌術後に重複がんを対象とした特別なサーベイランスを組み込むことは不要である。



大腸癌には,大腸多発癌,重複がんの高い発生リスクを有する遺伝性大腸癌がある。日常診療においては,遺伝性大腸癌を鑑別することが極めて重要であり,遺伝性大腸癌に対しては適切なカウンセリングのもとに多重がんのサーベイランスを実施することが不可欠である。しかしこのようなサーベイランスを遺伝性大腸癌以外のsporadicな大腸癌に行うことは妥当ではない。sporadicな大腸癌についていえば,本邦における異時性重複がんの発生頻度は1〜5%とされる199),324),325),326),327),328)。同時性重複がんと同様に胃が最も多く,大腸癌術後の胃癌発生頻度は1%前後とされる199),324),325),326),327),328),329)。ほかにも,肺癌,肝癌の頻度が高いとされるが,いずれも一般人口の罹患率を上回るものではない199),325),326),327)。一方,前立腺癌330),334),335),336),子宮体癌327),331),334),335),336),卵巣癌327),331),334),335),乳癌334),小腸癌332),333),335),336),女性の甲状腺癌327),335)などの発生頻度が高いとする報告があるが,多くは欧米からの報告であり,遺伝性大腸癌との関連も明確ではなく,本邦においては重複がんのサーベイランスの有効性を支持するデータは存在しない。
以上から,重複がんのサーベイランスに関しては,医療経済的側面も考慮した検討が必要であり,重複がん発生リスクの評価基準の確立が急務であるが,現状では大腸癌術後に重複がんを標的とするサーベイランスを実施する根拠は乏しく,がん検診の必要性を啓発し,定期的な検診を勧めるのが妥当である199),325),328),337)


 

 
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