(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2009年版

 
Clinical Questions

 


CQ17:直腸癌に対する術前化学放射線療法の意義
推奨カテゴリーC
欧米では直腸癌に対する術前化学放射線療法が標準的治療に位置づけられているが,本邦では有効性と安全性を示すエビデンスが乏しい。適正に計画された臨床試験として実施することが望ましい。



本邦の大腸癌専門施設においては,下部直腸進行癌に対してはTMEあるいはTSME+側方郭清が標準的に行われており,生存率が良好で,局所再発率も低いこともあり,欧米で標準である術前化学放射線療法は積極的には行われていないのが現状である。術前化学放射線療法の目的として,局所制御率の向上,生存率の向上,切除率の向上,括約筋温存の企図などがあるが,本邦では,それらの有用性を示すRCTはない。術前照射と側方リンパ節郭清の有無を比較した本邦における第III相試験では,両群の無再発率,全生存率に差はなく,側方郭清を施行しない群で有意に排尿障害,性機能障害が少ないことが報告されているが301),45例と少数例の検討であることから,この報告の意義は限定的である。一方,術前放射線療法には腸管障害,性機能障害などの有害事象があり,術前化学放射線療法が予防的側方郭清の代替になるか否かは,有害事象も考慮した適切に計画された臨床試験での評価が必要である。
現在,新規抗がん剤を併用することで術前化学放射線療法の有効性が高まることが示唆されており302),303),304),305),306 ,307),本邦においても検討の余地がある。また,新しい照射方法として,三次元原体照射の進化形であり,逆方向治療計画(インバースプラン)に基づき空間的,時間的に不均一な放射線強度をもつ照射ビームを多方向から照射することにより病巣部に最適な線量分布を得ることが可能な強度変調放射線治療(intensity modulated radiotherapy:IMRT)がある。骨盤照射において,腸管や膀胱,骨盤骨への線量を低減させて,消化器毒性,骨髄毒性の軽減を図ることができるが,その有用性については欧米において臨床試験で検討中である。

 

 
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