(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2009年版

 
Clinical Questions

 


CQ12:StageII大腸癌に対する術後補助化学療法
推奨カテゴリーA
StageII大腸癌に対する術後補助化学療法の有用性は確立しておらず,すべてのStageII大腸癌に対して一律に補助化学療法を適応することは妥当ではない。



StageII大腸癌に対する術後補助化学療法による全生存率への上乗せ効果は3~5%程度と報告されている284),285),286),287),288)。3,238名の結腸癌と直腸癌(StageIIは91%)を対象とした5-FU/LV(+/-)levamisole群と手術単独群を比較したQUASAR試験では,化学療法群の再発率および生存率が良好で,5年生存率で3~4%の上乗せ効果がみられたが,StageIIのみでは有意差は得られなかった284)。また,T3N0を対象とした5-FU/LV群と手術単独群のRCTのpooled analysis(IMPACT B2)では再発率・生存率ともに有意差はなく285),メタアナリシス286),287)やSEER database review288)でも化学療法群の生存期間が良好な傾向があるものの有意差は得られなかった。
こうしたなかで,海外のガイドラインにはStageII結腸癌のなかに再発高リスク群を設定し,期待される効果と予想される副作用を十分説明したうえで,術後補助化学療法を行うという方針を示すものもあり,この場合,StageIII結腸癌と同じ治療法と投与期間が用いられている。再発高リスク要因としては,高レベルのエビデンスに基づくものではないものの,ASCO2004ガイドラインでは,郭清リンパ節個数12個未満,T4症例,穿孔例,低分化腺癌・印環細胞癌・粘液癌症例85),ESMOガイドラインでは,T4,低分化腺癌または未分化癌,脈管侵襲,リンパ管侵襲,傍神経浸潤,初発症状が腸閉塞または腸穿孔,郭清リンパ節個数が12個未満,高CEAレベルと規定している86)。再発高リスク群に対する補助化学療法の有効性は確認されていないが,StageIIのなかでも予後不良なサブグループに的を絞って補助療法を行うという戦略は,現時点では妥当な選択と考えられる。StageII直腸癌における再発高リスク因子は確立していないが,当面は上述の結腸癌のリスク因子を参考として術後補助化学療法の適応を決定し,前向き研究として検討していくことが望まれる。
以上から,StageII大腸癌に対する術後補助化学療法の有用性は確立されておらず,現時点ではStageII大腸癌に一律に術後補助化学療法を適応することは推奨されない。StageIIの手術単独療法の治療成績,補助化学療法による負の効果,すなわち抗がん剤の副作用,医療コストなどを斟酌し,個々の症例の再発リスクに応じて補助化学療法の適応を決定することが望ましい。現在,国内でStageIIを対象に手術単独群を対照においた大規模RCTが進行中であり,その結果が待たれるところである。

 

 
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