(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2009年版

 
Clinical Questions

 


CQ4:切除不能な遠隔転移例における原発巣切除
推奨カテゴリーB
原発巣切除の適否は,原発巣による症状,遠隔転移の状態,全身状態等,個々の状況に応じて決定すべきである。他の療法では制御困難な原発巣による症状があり,耐術能に問題がなく,過大侵襲とならない切除であれば,原発巣切除が望ましい場合が多い。



切除不能な遠隔転移を有する大腸癌の原発巣切除の適応は議論の多い課題である。閉塞や出血など,保存的療法では制御困難な症状を緩和する目的で行われる原発巣切除あるいは人工肛門造設などによる腸管空置術については異論が少ないが223),無症状ないし症状が軽微な症例に対する適応にはさまざまな考えがある。無症状例に対して,予測される症状の出現に先んじて原発巣切除を行うことの有用性が問題となるが,限られた生命予後のなかで原発巣の症状緩和がどれほどQOLの改善に寄与するかを予測することは容易ではない224)。しかも,本病態は高度の進行坦癌状態であり,手術合併症や手術死亡のリスクが高いことも負の要因である。
近年著しく進歩した全身化学療法によって切除不能な転移巣が切除可能となる症例を経験することが少なくなくなり,症状緩和とは別に,根治も視野に入れた原発巣切除の意義が見直されるようになってきている225),226)。しかし,現状では実際に根治が得られることは例外的であり,身体機能や免疫能の低下をもたらす手術を回避し,有効な全身化学療法を可及的に早く開始することが原発巣のコントロールにも有効であるという考えもある227),228),229)。たとえば,腸管閉塞に対しては,ステント留置の有用性も報告されており230),切除以外の手段による症状コントロールが可能な症例があることにも留意すべきである。
以上より,原発巣切除の適応は,原発巣の症状,転移の状態,全身状態のほか,生命予後,手術のリスク231),切除による症状緩和の効果予測を症例ごとに評価して決定すべきである。

 

 
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