(1) | サーベイランスの目的 ・ | 再発を早期に発見し治療することで予後を改善することを目的とする。欧米で行われたRCTのメタアナリシスから,大腸癌治癒切除術後のサーベイランスが,再発巣の切除率向上と予後の改善に寄与することが示されている180),181),182),183),184)。(CQ-19) | |
(2) | 再発率,再発臓器,再発時期 ・ | 図1〜2および表7〜10(「資料」参照)に,大腸癌研究会のプロジェクト研究の検討結果を示す。対象はプロジェクト参加14施設での1991〜1996年の治癒切除大腸癌症例で,追跡期間は6〜11年である。 | 1.再発期間と再発部位(「資料」,図2,表7,表9〜10参照)。 | ・ | 再発は術後3年以内に約80%以上,術後5年以内に95%以上が出現した。 | ・ | 術後5年を超えての再発は全症例の1%以下であった。 | ・ | 肺再発のうち5%は術後5年を超えて出現した。 | ・ | 吻合部再発の95%以上は術後3年以内に出現した。 | ・ | 局所再発と肺再発は直腸癌に多かった。 | ・ | 欧米では,治癒切除後の再発の約50%が術後1年以内,約70%が術後2年以内に出現し185),186),ほとんどの症例は5年以内に再発したことを示す報告がある186)。 | 2.Stage別特徴(「資料」,図1,表7〜8参照) | 1)StageI | ・ | pSM癌の再発率は結腸癌,直腸癌とも約1%であった。 | ・ | pMP癌の再発率は6.4%で,結腸癌では5.0%,直腸癌では8.3%であった。 | ・ | 術後3年以内に再発の2/3が出現し,5年を超えての再発は全症例の0.2%以下であった。 | 2)StageII,StageIIIa,StageIIIb | ・ | Stageが進むに従って再発率が増加した。 | ・ | 術後3年以内に再発の78〜90%が出現し,5年を超えての再発は全症例の1%以下であった。 | |
(3) | 再発巣検索法 1.問診・診察 | ・ | 患者の訴えを聴取し,身体所見をとる(腹部所見,直腸指診など)。 | ・ | 直腸指診は,低位前方切除術後の吻合部再発や直腸子宮窩,直腸膀胱窩の再発の診断に有用である。 | 2.腫瘍マーカー | ・ | 血清CEAと血清CA19-9を測定する。 | 3.胸部CT,胸部単純X線検査 | ・ | 胸部CTにて肺転移を検索する。 | ・ | 胸部CTを省略して胸部単純X線検査を行う方法もある187)。 | 4.腹部CT,腹部超音波検査 | ・ | 腹部CTにて肝転移等の腹部再発巣を検索する。疑診例には腹部MRI(magnetic resonance imaging)を行う。 | ・ | 腹部CTを省略して腹部超音波検査を行う方法もある187)。 | 5.骨盤CT | ・ | 直腸癌の局所(骨盤内)再発を検索する。 | ・ | 再発巣と術後の瘢痕との鑑別は困難である。そのため,基準となる骨盤CTを術後早期に行う方法もある188)。 | ・ | 骨盤内再発疑診例には骨盤MRI,EUS(endoluminal ultrasonography),PET(positron emission tomography)/CTを考慮する189),190),191)。 | 6.MRI | ・ | 肝転移巣や骨盤内再発巣の確認にMRIを考慮する。 | 7.PET/CT | ・ | 再発部位の検索と確定にPET/CTは有用である192)。 | 8.大腸内視鏡検査 | ・ | 吻合部再発を検索する。 | ・ | 異時性多発癌病巣の発見にも有効である。 | ・ | 狭窄などのために,術前に全大腸を十分に検索できなかった場合は,術後6カ月以内に残存大腸の検査を行うことが望ましい193),194),195)。 | |
(4) | サーベイランスの有効性の検証 ・ | 「8.大腸癌手術後のサーベイランス 1)大腸癌根治度A切除後の再発に関するサーベイランス」に示したサーベイランススケジュールは,Stageごとの再発頻度,再発の好発部位や発生時期,本邦におけるサーベイランスの現況等を考慮して作成した。これは欧米のガイドライン187),194),196)と比較して過密である。現在のところ予後への寄与度が高く,医療経済学的に効率的なことが科学的に検証されたサーベイランスプロトコールは存在しない。 | |
(5) | 大腸癌根治度B切除後と再発巣切除後のサーベイランス ・ | 肝切除後の残肝,肺切除後の残肺など,切除した転移巣や再発巣と同一部位に再発,再々発することが多い。 | ・ | 術後2年間は転移・再発巣の切除臓器のサーベイランスをよりintensive(3〜6カ月毎)に行う方法もある196),197)。 | ・ | 推奨すべきサーベイランス期間に関する知見はない。 | |
(6) | 異時性多重がんのサーベイランス ・ | Stageにかかわらず大腸癌の罹患歴は,異時性大腸癌発生のリスク要因である198),199)。 | ・ | 推奨される大腸内視鏡検査間隔は,報告によって1〜5年の開きがある200)。 | ・ | 大腸癌術後に他臓器がん(重複がん)の精査を定期的に行う必要性を示す知見はない。(CQ-19) | |