(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2009年版

 
各論

 

4.血行性転移の治療方針


 1) 肝転移の治療方針



 ・  肝転移の治療は,肝切除,全身化学療法,肝動注療法および熱凝固療法に大別できる。
 ・  根治切除可能な肝転移には肝切除が推奨される。
 ・  肝切除術には系統的切除と部分(非系統的)切除がある。

肝切除の適応基準
(1) 耐術可能。
(2) 原発巣が制御されているか,制御可能。
(3) 肝転移巣を遺残なく切除可能。
(4) 肝外転移がないか,制御可能。
(5) 十分な残肝機能。

 ・  切除不能な肝転移で全身状態が一定以上に保たれる場合(PS 0〜PS 2)は,全身化学療法と肝動注療法の単独または併用を考慮する。
 ・  熱凝固療法にはマイクロ波凝固療法(MCT:microwave coagulation therapy)とラジオ波焼灼療法(RFA:radiofrequency ablation)がある。
 ・  全身状態が不良な場合(PS≧3)は適切な対症療法(BSC:best supportive care)を行う。


 コメント 

 [肝切除]
(1) 肝切除は,コホート研究や第III相試験から導き出された結論ではないが,選択された症例に対しては他の治療法と比較研究することが許容し難いほどの良好な成績が示されている。
(2) 肝切除後の5年生存率は20〜50%である32),33),34)。本邦で行われた多施設集計では,肝切除585例の3年生存率は52.8%,5年生存率は39.2%であった35)
(3) 転移巣の数,大きさおよび部位を評価し,転移巣の完全切除が可能か否かを判定する。
(4) 切除断端に癌が露出しない切除が重要である36),37),38)
 ・  切除断端距離は,1cm以上を推奨する報告と39),40),癌の露出がなければよいとする報告がある41),42),43),44)
(5) 同時性肝転移では,原発巣の切除を先行し,原発巣の根治性を評価してから肝転移を切除してもよい。
(6) 肝門部リンパ節転移例の予後は不良であることから,肝門部リンパ節転移は肝切除の適応の除外因子としている報告がある32),45),46)
 ・  本邦の集計では,肝門部リンパ節転移例で郭清した場合の5年生存率は12.5%であった35)
(7) 制御可能な肝外転移(主に肺転移)を合併した肝転移例において,肝切除の有効性を示している報告がある24),25),27),47)(CQ-7)
(8) 残肝再発に対する再肝切除で21〜48%の5年生存率が報告されている。残肝再発例に対しても前述の肝切除の適応基準に照らして切除を考慮する48),49),50),51),52),53),54),55)
(9) 肝切除後の全身化学療法・肝動注療法の有効性はいまだ確立されていない。(CQ-8)
(10) 切除可能な肝転移に対する術前化学療法の安全性は確立されていない。(CQ-9)
 [切除以外の治療法]
(1) 切除不能肝転移例には抗がん剤の全身化学療法または肝動注療法を単独または併用して行う。(CQ-10)
(2) 切除不能肝転移例に対して肝動注療法あるいは熱凝固療法を行う場合は,原発巣が制御されていることが望ましい。
(3) 熱凝固療法は低侵襲性が利点であり,局所制御効果および長期生存例が報告されている56),57)。ただし,いまだ十分な症例集積によって長期予後を検討した報告はなく,有効性の評価は定まっていない。切除に比べて再発率が高く,長期生存も不良であるという報告もある58)
(4) 全身状態が不良な場合は適切な対症療法(BSC:best supportive care)を行う。



 

 
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