有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン

 
IV.結果

 
2. 検診方法の証拠

2)低線量CT
証拠のレベル
低線量CT:2-

低線量CT検診による死亡率減少効果を検討した直接的証拠はこれまでに1報のみであり60),61)、胸部X線写真による検診群と比較して死亡率に有意差を認めなかった。ただし、この研究は、低線量CT検診群のみの前向きコホート研究として行われたもので、当初より対照群を設定して行われた研究ではなかったため、比較のための胸部X線写真による検診群は1970年代に行われたMayo Lung Projectのデータを利用しており、交絡因子の制御が不十分である。従って、現時点では死亡率減少効果に関する質の低いコホート研究があるのみで、死亡率減少効果に関して検討するための十分なデータが存在しないと言えよう。
死亡率減少効果の傍証として、発見がん中の早期がん割合の増加・進行がん割合の減少だけでなく、検診受診者中の進行がん発見率の減少を認める事が挙げられるが、低線量CT検診の報告において、これを明確に示した研究は認められない。特に中間期がんの把握無しに進行がん割合の減少程度を調査することは不可能である。また、コホート全数の経過観察が行われなければ、肺がん発見率や予後に関するデータの信頼性に疑問が持たれるのはやむを得ない。中間期がんの把握やコホート全数の把握が高い精度で行われたのは、Mayo Clinicの報告のみである60),61)ため、主として本邦の報告に認められる極めて高いI期割合のみを根拠にCT検診による死亡率減少効果の傍証が得られたと理解すべきではない。
結局、低線量胸部CT 検診の有効性を支持する直接的証拠は現在まで存在しない。

 

 
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