有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン
IV.結果
2. 検診方法の証拠
2)低線量CT
直接的証拠
低線量CTによる肺がん検診に関する研究は、日本やアメリカを中心に進められている。主たる研究の概要は表12のとおりである58),59),60),61),62),63),64),65),66),67),68),69),70)。ただし、これらがすべて直接的証拠となるものではない。低線量CTによる肺がん検診に関して、無作為化比較対照試験は1報存在する58),59)が、これは現在米国で行われている無作為化比較対照試験(The National Lung Screening Trial)の実行可能性を検討する目的の研究であったため、検診による死亡率減少効果は検証されていない。1970年代に行われたMayo Lung Projectと死亡率減少効果を比較した前向きコホート研究がSwensenらにより報告されたが、性、年齢、観察期間は交絡因子として勘案されたものの、データ不足によりその他の因子、例えば喫煙や治療法などに関しての統計学的調整は行われなかった60),61)。そして、この報告以外に死亡率に関して対照群と低線量CT検診群を比較した報告は現在までない。
Swensenらは1999年1月より12月までに、50歳以上85歳以下で喫煙歴20pack-years以上の1,520人の参加者を募り、登録時CTを実施し、その後、年一度の観察期CTを4回施行した60),61)。登録時CTにて31人の肺がんを発見(発見率2.04%)した。観察期に把握された肺がん例は35人認め、その肺がん死亡率は1.6/1,000人年であった。1970年代に行われたMayo Lung Projectでは45歳以上の喫煙歴20pack-years以上の男性を対象としていたため、死亡率の比較には50歳以上の男性のみで検討した。また、Mayo Lung Projectのデータは観察期間4年までの結果を使用し、CT検診群の観察期間と同一とした。なお、Mayo Lung Projectでは対照群と介入群の肺がん死亡率は3.2/1,000人年と3.0/1,000人年と有意差を認めなかったので両群のデータを合わせて対照群として利用した。その結果、CT検診群の肺がん死亡率は2.8/1,000人年、対照群のそれは2.0/1,000人年となり、両者に有意差を認めなかった。CT検診群と対照群の背景が喫煙歴や治療法などの点において未調整ではあるが、肺がん死亡率においてCT検診の有効性は認められなかったと言える。
表12 低線量CT検診報告概要 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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