タップテストと持続ドレナージテスト

脳脊髄液排除試験は，iNPHの診断とシャント術の適否を検討する補助的検査として，世界で広く行われている^1）-31）。脳脊髄液（CSF）を排除する前後で，歩行障害，認知障害，排尿障害などの臨床症状の変化を注意深く観察して判定する。脳脊髄液排除試験は，タップテストと持続ドレナージテスト（external lumbar drainage；ELD）とに区別される。タップテストでは1回の腰椎穿刺で30～50mLのCSFが排除され^{1）-4）7）-9）12）14）16）-24）26）27）29）-31）}，ELDでは脳脊髄液体5～10mL/時間，もしくは100～250mL/日の速さで，1～5日間かけて排除される^{5）6）10）11）13）15）22）28）}。ELDは腰部くも膜下腔にカテーテルを長期間留置することで，歩行障害や認知障害を有する高齢者に動作制限を強いることとなり，カテーテルの自己抜去，神経根痛，髄膜炎などの合併症リスクの懸念もあることから，わが国においてはあまり行われていない。脳脊髄液排除試験の施行前に，できるだけ脊髄MRI検査を行い，脊椎管狭窄病変によるCSFの通過障害がないことを確認しておく。また，脳脊髄液排除試験時にクエッケンシュテット試験（両側頸静脈の圧迫後10秒以内に腰部脳脊髄液圧10cmH₂O以上の上昇があれば正常）によりCSFの通過障害を確認する方法もある。腰椎穿刺部位より高位にCSFの通過障害が存在すると，神経症状を悪化させる可能性や，脳脊髄液排除の効果があらわれずに偽陰性となる可能性があることに留意する必要がある。

［文献］