(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2006年版
CQ4 外科的治療法
CQ4-1 Stage IVa膵癌に対する手術的切除療法の意義はあるか?
【明日への提言】
本CQに対する推奨のエビデンスとなっている臨床試験1)は,切除手術の意義と画像による病期診断の精度についての2つの重要な成果をわれわれに明確に示している。臨床研究で対象となった病期の膵癌ではR0手術が可能であり,一部の患者では治癒を含む長期生存が得られる。したがって,治癒の可能性を期待した治療方針を選択する場合には,切除手術を実施することが理にかなっている。さらに群として生存期間の期待値の長短による比較を行った場合にも,手術切除群が放射線化学療法群に比較して利益がある。しかし,手術切除群が放射線化学療法群に勝ったとはいえ,その治療成績は決して満足できるものではないことを認識しなければならない。
この臨床試験のもう1つの成果は,現時点では術前の画像病期診断の正診率が低く,正確な病期診断には開腹所見が必要だということである。このことは外科医のみならず,手術治療にたずさわらない診断医,化学療法医,放射線治療医も十分認識すべきであり,画像のみを根拠に安易に治療方針を決定すべきではない。将来的には,さらに強力な診断技術の開発が行われることを期待したい。