(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2006年版
CQ3 放射線療法
CQ3-3 放射線療法は切除不能膵癌のQOLを改善するか?
【明日への提言】
放射線療法で高率に除痛効果が期待できることは日常臨床においてよく経験されることである。癌性疼痛に鎮痛剤等の対症療法のみでなく,放射線療法を抗腫瘍効果とともに除痛効果として考慮する意義はあると思われる。
線量分割については,遠隔転移のない症例では,もし放射線治療が奏効した場合にはそれなりの予後が得られる可能性もあるため,晩期合併症にもある程度配慮した線量分割,すなわち一回線量2Gy前後の通常分割照射が望ましいと考えられ,最も報告の多い50.4Gy/28分割/5.5週もしくは50Gy/25分割/5週が推奨される。QOL改善目的の放射線治療では満足のゆく疼痛緩和が達成される線量でも十分であり,これ以上の総線量は要求されないと考える。
遠隔転移を伴う症例では,化学療法が主体となる。しかし,放射線治療を用いる場合は50.4Gy/28分割/5.5週を基本として,予後に応じ例えば40Gy/20分割/4週などのように総治療期間を短縮した治療計画とするが,治療期間短縮のために一回線量を上げると合併症の危険が増える。QOL改善目的の放射線治療でQOLを損ねては本末転倒であり,一回線量は3Gyを超えるべきではない。その場合の線量分割は30Gy/10分割/2週が妥当と考えられる。なお,上記いずれの場合も照射野設定が広くならないよう注意が必要である。