(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ12 アウトカムマネジメント
【CQ 12.1】
褥瘡予防に,病院ではどのような対策が有効か
【推奨文・推奨度】
褥瘡予防に,病院ではどのような対策が有効か
【推奨文・推奨度】
① | ブレーデンスケールによるアルゴリズムを用いた体圧分散マットレスの選択が強く勧められる。 [推奨度A] |
② | OHスケールによるアルゴリズムを用いて体圧分散マットレスを選択する。 [推奨度C1] |
③ | 多職種で構成する褥瘡対策チームを設置する。 [推奨度C1] |
④ | 皮膚・排泄ケア認定看護師を配置する。 [推奨度C1] |
⑤ | 褥瘡ハイリスク患者ケア加算を導入する。 [推奨度C1] |
⑥ | 包括的なプログラムやプロトコールを用いる。 [推奨度C1] |
【解説】
Bradenとsupport surfaceをキーワードに抽出された9本の論文を対象にし,急性期病院と大学病院におけるブレーデンスケールによるリスクアセスメントを用いた体圧分散マットレスの選択についてのメタ・アナリシスがある1)。この結果,ブレーデンスケールに基づいて体圧分散寝具を選択した群の褥瘡発生のオッズ比は0.335(95% CI=0.220-0.508)であったと報告されている。これにより,ブレーデンスケールによるリスクアセスメントを用いた体圧分散マットレスの選択は,褥瘡予防に効果があるといえ,強く推奨される。
198床の一般病院に入院した患者(実験群445名,対照群354名)を対象とし,OHスケールをもとに作成した体圧分散マットレス選択基準の効果を検証したヒストリカル・コントロール研究がある2)。この結果,実験群の褥瘡発生率が有意に低かった(P<0.05)。これにより,OHスケールをもとにしたアルゴリズムを用いた体圧分散マットレスの選択は褥瘡予防効果があるといえる。
大学病院の入院患者690人を対象とし,学際的な創傷ケアチームの活動による褥瘡予防効果を検証した時系列研究がある3)。この結果,褥瘡保有率は,活動開始年と1年後,2年後,3年後それぞれの間で有意に低下し(p<0.05),褥瘡発生患者数は,活動開始年と比較すると3年後で有意に低下した(p<0.005)。このほか,一般病院・急性期病院において,医師・看護師・栄養士・作業療法士・薬剤師・管理栄養士・医事課職員などの多職種で構成される褥瘡対策チームの活動前後で褥瘡発生率や褥瘡保有率が減少したというコホート研究が複数ある。これらより,多職種で構成される褥瘡対策チームの活動は褥瘡予防に対する効果があるといえる。
病院において皮膚・排泄ケア認定看護師による集合教育前後の褥瘡発生率を比較したヒストリカル・コントロール研究がある4)。この結果,集合教育開始前6ヵ月間にくらべて3年後の褥瘡発生率が有意に低かった(p<0.05)と報告されている。これにより,病院において皮膚・排泄ケア認定看護師を配置することは褥瘡予防効果があるといえる。
病院施設に勤務する皮膚・排泄ケア認定看護師190名(算定群111名,非算定群79名)を対象とした前向きコホート研究がある5)。この結果,褥瘡ハイリスク患者ケア加算算定群の院内推定褥瘡発生率が有意に低かった(P=0.008)。これにより,褥瘡ハイリスク患者ケア加算は褥瘡発生減少に効果があるといえる。
大腿骨頸部骨折の術後患者を対象にして,クリニカルパスの使用の有無で褥瘡発生を比較したメタ・アナリシスがある6)。6つの比較研究の対象者2935名における褥瘡発生のオッズ比は0.48(95% CI=0.30-0.75)と報告されている。また,大学病院の集中治療室(28床の成人患者399名を対象に,オランダ・AHCPR・EPUAPのガイドラインに準拠したケアの褥瘡予防効果を検証したヒストリカル・コントロール研究がある7)。褥瘡発生はベースライン3ヵ月,ガイドライン使用後3 - 6ヵ月,12 - 15ヵ月で有意に減少した(p=0.04)と報告されている。このほか,包括的な褥瘡予防プログラムの褥瘡予防効果を検証したコホート研究が複数ある。このように,クリニカルパス,ガイドライン,独自の包括的なプログラムに基づくケアは褥瘡予防に有効であるといえる。メタ・アナリシスが1件あるが,大腿骨頚部骨折の術後患者のクリニカルパスに限定されており,このほかはすべてコホート研究であるため,推奨度はC1とした。
【文献】