(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ10 体圧分散用具
【CQ 10.5】
周術期にどのような体圧分散マットレスや用具を使用すると褥瘡予防に有効か
【推奨文・推奨度】
周術期にどのような体圧分散マットレスや用具を使用すると褥瘡予防に有効か
【推奨文・推奨度】
① | 褥瘡発生リスクがある患者には,手術台に体圧分散マットレスや用具を使用するよう勧められる。 [推奨度B] |
② | 術中に,マットレス以外に踵骨部,肘部などの突出部にゲルまたは粘弾性パッドを使用するよう勧められる。 [推奨度B] |
③ | 術中・後に,圧切替型エアマットレスを使用してもよい。 [推奨度C1] |
④ | 大腿骨頸部骨折手術を受ける患者には,術中にビーズベッドシステムを使用してもよい。 [推奨度C1] |
⑤ | 心臓外科手術を受ける患者には,術中に体温動作付粘弾性フォームを使用してもよい。 [推奨度C1] |
【解説】
周術期患者を対象に褥瘡発生率を比較した報告はシステマティック・レビューまたはメタ・アナリシスが2編1,2),ランダム化比較試験が6編3-8)ある。
システマティック・レビューでは,手術台においても体圧分散マットレスを使用することが術中・後の褥瘡発生予防に有効であるとされているが,どの体圧分散マットレスがより褥瘡予防に有効かについての結論は出されていない。
国外の文献は,ゲルまたは粘弾性パッド,圧切替型エアマットレス,ビーズベッドシステム,体温動作付粘弾性フォームの有効性に関するものであった。ゲルまたは粘弾性パッドの使用が対照群とくらべて有意に褥瘡発生率が低かった3,4)。術中の圧切替型エアマットレス使用については,論文によって褥瘡予防効果に関する結果が異なっていた5,6)。ビーズベッドシステムの褥瘡発生率は対照群と比較し有意に低かったが,15.6%7)であり十分な予防効果とはいえない。また体温動作付粘弾性フォームは対照群と比較し有意差がなかった8)。わが国におけるランダム化比較試験はなかった。以上から,ゲルまたは粘弾性パッド使用については推奨度B,その他の体圧分散用具については推奨度C1とした。
わが国においてエビデンスを活用するには術式,手術室の環境,患者のリスクを考慮したうえで意思決定すべきである。論文で対象となった手術は,砕石位または仰臥位で3時間以上の一般外科,血管外科・婦人科の手術,心臓外科手術,大腿骨頸部骨折手術であった。
【文献】