(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ7 皮膚の観察
【CQ 7.1】
褥瘡の深達度を予測するにはどのような方法を行うとよいか
【推奨文・推奨度】
褥瘡の深達度を予測するにはどのような方法を行うとよいか
【推奨文・推奨度】
① | d1の予後予測には二重紅斑(濃淡のある発赤),骨突出部から離れた位置の発赤サインの観察を行ってもよい。 [推奨度C1] |
② | 超音波画像診断法を行ってもよい。 [推奨度C1] |
③ | 踵部褥瘡の深達度予測には足関節上腕血圧比(ABI)の測定を行ってもよい。 [推奨度C1] |
【解説】
消退しない発赤であるステージI褥瘡(NPUAP 分類)の予後予測(表皮または真皮以上の皮膚欠損にいたるか否か)として発赤の経過を追跡し,臨床サインの有無と予後の関連を検討した研究1)が1編ある。発赤部位の観察から,二重発赤(二重紅斑),ガラス板圧診法による消退しない発赤,骨突出部から離れた位置の発赤,発赤拡大のサインが現れると真皮か,それより深い皮膚欠損にいたることが示された。特に二重発赤と骨突出部から離れた位置の発赤の2つの指標を用いたステージIの予後診断精度は高く,悪化するd1褥瘡を予測することが可能である。
超音波診断法による褥瘡の深達度予測では,12例の褥瘡を観察し,観察初回時の視診と超音波診断法の画像所見から深部組織の損傷を予測できると述べた論文2)が1編ある。初回観察の画像には4タイプあり,深部組織の損傷を推測する画像(非連続的な筋膜,および不均一な低エコー領域)の診断精度は高かった。超音波診断法は深達度が不明な褥瘡の深部組織の損傷を予測することが可能である。
踵部褥瘡の深達度予測では,27例を観察し,観察初回時のABIと最終深達度の関係を調査した論文3)が1編ある。d1,d2の踵部褥瘡のABIは0.87,D3以上の踵部褥瘡のABIは0.48であり,ROC解析によるABIの分離値は0.6であった。ABIの測定は,踵部褥瘡の深達度を予測することが可能である。
褥瘡の深達度を予測するために,より詳細な発赤部の観察,超音波診断法やABIの測定などのツールを利用して予測の精度を上げることが可能である。
【文献】