(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)

 
ガイドライン各論

CQ4 全身管理

【CQ 4.10】
褥瘡患者に特定の栄養素を補給することは有効か

【推奨文】
亜鉛,アルギニン,アスコルビン酸などが欠乏しないように補給してもよい。

【推奨度】 C1

【解説文】
褥瘡の予防および治癒における栄養補給のシステマティック・レビュー1)では,亜鉛が1件,アスコルビン酸2件が評価されている1)
亜鉛については,1〜2ヵ月間,硫酸亜鉛(200mg/day)を投与した10名と偽薬を服用させた8名の間で,褥瘡治癒に差異はなかったとの報告がある2)。ただし,症例数が少なく,医療処置,食事摂取,栄養状態や血清亜鉛値も明確にされていない。また,NPUAP/EPUAPガイドライン3)では,亜鉛欠乏が見られるときは40mg/日以上の補給をするとなっているが,亜鉛サプリメントの褥瘡治癒に対する効果に関してエビデンスレベルの高い文献がないため推奨度をC1とした。
アスコルビン酸が褥瘡治癒に与える影響を検証したランダム化比較試験4,5)では,500mgのアスコルビン酸を1日に2回,1ヵ月間服用させた場合,褥瘡表面積は,偽薬群では43%減少したのに対し,投与群では84%の減少が認められた。しかし,各群10名と症例が少ない。新たな有用文献がないため,推奨文は「欠乏がないように補給してもよい」とした。
アルギニンに関する文献6)は,ヒストリカル・コントロール試験が1件ある。日常生活が送れるものの,褥瘡を有する脊髄損傷患者18名にアルギニン9g/日を完治するまで摂取させた。過去に治癒した脊髄損傷患者17名を対照群として比較すると,文献から予測される治癒までに要する時間がより短縮した。しかし,対照群は,文献検索により抽出した過去の症例であり,栄養状態が不明で,条件も揃えたわけではないので,推奨度を上げるまでにはいたらなかった。したがって,推奨度はC1とした。

【文献】
1) Stratton RJ, Ek AC, Engfer M, et al:Enteral nutritional support in prevention and treatment of pressure ulcers:a systematic review and metaanalysis. Ageing Res Rev, 4(3):422-450, 2005. (レベルII)
2) Norris JR, Reynolds RE:The effect of oral zinc sulfate therapy on decubitus ulcer. J Am Geriatr Soc, 19:793-797, 1971.(レベルII)
3) National Pressure Ulcer Advisory Panel and European Pressure Ulcer Advisory Panel:Prevention and treatment of pressure ulcers:clinical practice guideline. National Pressure Ulcer Advisory Panel, Washington DC, 2009.
4) Taylor TV, Rimmer S, Day B, et al:Ascorbic acid supplementation in the treatment of pressure-sores. Lancet, 2(7880):544-546, 1974.(レベルII)
5) Ter Riet G, Kessels AG, Knipschild PG:Randmized clinical trial of ascorbic acid in the treatment of pressure ulcers. J Clin Epidemiol, 48(12): 1453-1460, 1995.(レベルII)
6) S Brewer, K Desneves, L Pearce, et al:Effect of an arginine-containing nutritional supplement on pressure ulcer in community spinal patients. J Wound Care, 19(7):311-316, 2010.(レベルIII)


 

 
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