(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ4 全身管理
【CQ 4.9】
褥瘡患者にはどのような栄養補給を行うのがよいか
【推奨文・推奨度】
褥瘡患者にはどのような栄養補給を行うのがよいか
【推奨文・推奨度】
① | 褥瘡治癒のための必要エネルギーとして,基礎エネルギー消費量(BEE)の1.5倍以上を補給することが勧められる。 [推奨度B] |
② | 必要量に見合った蛋白質を補給することが勧められる。 [推奨度B] |
【解説】
褥瘡に対する栄養補給に関してのシステマティック・レビューが2件ある1,2)。
必要エネルギー量については,NPUAP/EPUAPガイドライン3)において30〜35kcal/kgが望ましいとされている。また,褥瘡発生患者に対する栄養介入の効果を検討したランダム化比較試験4)の結果,1日あたり約300kcal付加して基礎エネルギー消費量(BEE)の約1.55倍のエネルギー投与を行った介入群は,対照群(BEEの1.16倍)にくらべて,褥瘡の総面積が介入8週後に有意に減少し,褥瘡の治癒速度が増したことが確認された。この研究は,栄養以外の要因を排除し,同一の栄養剤を使用して栄養介入の効果を明らかにしたため,今回具体的な必要エネルギー量を提示し,エビデンスBとした。
たんぱく質量については,褥瘡患者において経管栄養にて高蛋白質栄養剤(エネルギー比25%)の投与を行った場合,一般栄養剤を使用した例にくらべ,より褥瘡面積の縮小がみられた5)。また,低栄養状態にある褥瘡患者に対し,経管栄養あるいは食事サプリメントのいずれかで高たんぱく質食(24%たんぱく質(61g/L))を補給した群は,14%たんぱく質(37g/L)投与群にくらべ,介入8週間後に褥瘡表面積に有意な減少を認めたとの報告もある6)。しかし,エビデンスレベルは,対象症例数が少ないものや,研究デザインが十分でないため高くない。そのほか,褥瘡治療に必要とされる特有の栄養素を強化した栄養剤の使用が褥瘡治癒に有益であるか検討したランダム化比較試験では,栄養剤追加群でより褥瘡治癒率が高く,PUSHスコアもより改善したが,エネルギー,蛋白質の追加量と褥瘡治癒率およびPUSHスコアの比較では差はなかったと報告されている7)。しかし,例数が少なく,個々の栄養素と褥瘡治癒率,PUSHスコアとの関連が明らかにされていない。NPUAP/EPUAPガイドライン3)によると,具体的な投与量は疾患を考慮しながら1.25〜1.5g/kg/日を推奨しているが,新たに有用な文献がないため,数値の提示を見送った。
【文献】