(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ4 全身管理
【CQ 4.4】
褥瘡発生の危険因子となる低栄養状態を確認する指標には何があるか
【推奨文・推奨度】
褥瘡発生の危険因子となる低栄養状態を確認する指標には何があるか
【推奨文・推奨度】
① | 炎症,脱水などがなければ血清アルブミン値を用いてもよい。 [推奨度C1] |
② | 体重減少率を用いてもよい。 [推奨度C1] |
③ | 喫食率(食事摂取量)を用いてもよい。 [推奨度C1] |
④ | 主観的包括的栄養評価(SGA)を用いてもよい。 [推奨度C1] |
⑤ | 高齢者にはMNA®(mini nutritional assessment) を用いてもよい。 [推奨度C1] |
【解説】
一般的に,臨床現場において低栄養状態を確認する指標としては,アルブミンなどの生化学検査,身体計測値,喫食率,栄養状態スクリーニングスケールなどが用いられている。
褥瘡の危険因子や褥瘡発症との関連を検討した分析疫学的研究では,生化学検査として総蛋白,アルブミン,プレアルブミンなどがあげられている。そのうち,多く用いられていた血清アルブミンが低値の場合には,褥瘡発生のリスクが高く1-7),とくに,3.5g/dL以下では,褥瘡発生のリスクが高い3-6)。ただし,血清アルブミン値は,炎症,脱水などさまざまな要因で変化するため,エビデンスレベルはC1とした。
体重は,大掛かりな測定設備を使用することなく栄養状態を表すもっとも簡便な指標であり,体重減少は褥瘡発生のリスクになると考えられている。褥瘡がステージIIIあるいはIVのレベルにある新規入院患者の栄養状態では,平常時体重比(%UBW)の減少が褥瘡のリスクとなる可能性が示唆されている8)。また,中等度,重度の低栄養状態にある外科患者は,健常時からの体重減少が,それぞれ9.6%,19.6%であり,良好患者とくらべて有意に減少していたとの報告がある(p<0.001)9)。活動がベッド上や座位に制限された入院患者がステージ2以上の褥瘡を発症するリスクについて検討したコホート研究では,体重減少が重要なリスクファクターであることが示唆された10)。また,EAUAPの栄養ガイドラインでは,「望まない体重減少(undesirable weight loss)」(過去6ヵ月間に通常時体重の10%,または過去1ヵ月間に5%を上回る減少)は,低栄養状態を示唆することがあり,定期的な体重測定を推奨している11)。文献レベルからエビデンスはC1とした。
喫食率と褥瘡との関連については十分なエビデンスはないが,日本の褥瘡発症例では,食事喫食率75%以下が全体の48%に認められている12)。また,ブレーデンスケールにおいては,食事摂取量が褥瘡発生のリスクアセスメント項目の一つにあげられており,特に喫食率50%以下では褥瘡発生リスクが高くなると考えられている13)。エビデンスレベルはC1となる。
主観的包括的栄養評価(SGA:subjective global assessment)は,1987年にDetskyらによって報告された栄養評価ツールであり,比較的精度の高いツールとして広く使用されている。ただし,褥瘡予防とSGAの関係についてはエキスパートオピニオンしかないのでC1とした。
栄養状態を評価するツールの横断研究13)では,3つのスクリーニングスケール(mini nutritional assessment:MNA, Bioelectrical impedance analysis:BIA, Barthel index:BI)のうち,簡易栄養状態評価表(MNA)が褥瘡発生のリスクとして最も強い相関があったとしている。また,MNAと他の栄養指標との関連についての横断研究では,炎症反応が反映する内臓蛋白(アルブミン,プレアルブミン)より栄養状態をスクリーニングするには有益であるかもしれないとしている14)。栄養評価ツールと褥瘡の関係についても有用な文献はなく,エビデンスレベルはC1とした。
【文献】