(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ3 外科的治療
外科的治療に際しては,麻酔や術後体位など周術期の管理が重要であり,手術の施行は全身および局所の状態により,適応範囲や時期が制限される。「褥瘡予防・管理のアルゴリズム」(図1)で示されるように,外科的治療(手術療法)は褥瘡の局所治療の一分野として位置付けられている。すなわち,「外科的治療のアルゴリズム」(図3)のなかに記されている「褥瘡あり」とは,「全身観察・発生予測を行った患者で,外用剤・ドレッシング材などの保存的治療に抵抗する褥瘡」であることを前提としている。
手術対象となる褥瘡の範囲や手術施行のタイミングについての判断は困難なことが多い。そのため,外科的デブリードマンを検討する局所因子としての褥瘡の状態とは独立して,外科的適応に関する検討を行うこととした。また,保存的治療に抵抗する要因の一つであるポケットに対する外科的取り扱いについても,独立したCQとして検討した。さらに,深い褥瘡(D3以深)であっても,必ずしも再建術は必須ではなく,保存的治療により肉芽形成を促進し,創閉鎖を得ることもありうることから,外科的治療を外科的デブリードマンと外科的再建術に分けて検討した。壊死組織が除去された皮膚組織欠損創に対する保存的治療である陰圧閉鎖療法を一つのCQとして本項内で検討した。
手術対象となる褥瘡の範囲や手術施行のタイミングについての判断は困難なことが多い。そのため,外科的デブリードマンを検討する局所因子としての褥瘡の状態とは独立して,外科的適応に関する検討を行うこととした。また,保存的治療に抵抗する要因の一つであるポケットに対する外科的取り扱いについても,独立したCQとして検討した。さらに,深い褥瘡(D3以深)であっても,必ずしも再建術は必須ではなく,保存的治療により肉芽形成を促進し,創閉鎖を得ることもありうることから,外科的治療を外科的デブリードマンと外科的再建術に分けて検討した。壊死組織が除去された皮膚組織欠損創に対する保存的治療である陰圧閉鎖療法を一つのCQとして本項内で検討した。
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図1 褥瘡予防・管理のアルゴリズム |
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図3 外科的治療のアルゴリズム | |
褥瘡の感染,壊死組織,ポケットと外科的適応をアセスメントし,外科的デブリードマンを選択・実施する。その後,再建術の適応をアセスメントし,再建術または保存的治療を選択・実施する。 |
Clinical Question | 推奨度 | 推奨文 | |
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CQ 3.1 | 感染・炎症がある場合に外科的デブリードマンを行ってよいか | C1 | 膿汁や悪臭,あるいは骨髄炎を伴う感染巣には,外科的デブリードマンを行ってもよい。 |
CQ 3.2 | 壊死組織がある場合に,外科的デブリードマンはいつ行うか | C1 | 壊死組織と周囲の健常組織との境界が明瞭となった時期に外科的デブリードンを行ってもよい。 |
C1 | 感染が沈静化しているときに外科的デブリードマンを行ってもよい。 | ||
CQ 3.3 | ポケットがある場合,外科的に切開やデブリードマンを行ってもよいか | C1 | 保存的治療を行っても改善しないポケットは,外科的に切開やデブリードマンを行ってもよい。 |
CQ 3.4 | どのような場合に外科的デブリードマンの適応となるか | C1 | 保存的治療を優先するが,感染が鎮静化している時に,外科的デブリードマンを行ってもよい。 |
C1 | 深さが皮下組織以上に及ぶときには外科的デブリードマンを行ってもよい。 | ||
C1 | 外科的デブリードマンは局所の感染巣の局在,壊死組織の量および拡大範囲,創部の血行状態,痛みへの耐性に応じて適応を決定する。 | ||
CQ 3.5 | どのような場合に外科的再建術の適応となるか | C1 | 保存的治療に反応しない,皮下組織よりも深層に達した褥瘡に対して外科的再建術を行ってもよい。 |
C1 | 創の周囲組織が陳旧化・瘢痕化している場合には外科的再建術を行ってもよい。 | ||
C1 | 骨髄炎の治療として外科的切除・皮弁による外科的再建を行ってもよい。 | ||
CQ 3.6 | 特に有用性の高い外科的再建術があるか | C1 | 外科的再建術に関してはさまざまな術式・閉鎖法が報告されている。一方,再建法ごとの治療成績については十分なエビデンスがなく,特定の再建術は支持されない。 |
CQ 3.7 | 肉芽組織が少ない場合には,どのような物理療法があるか | C1 | 感染・壊死がコントロールされた創には陰圧閉鎖療法を行ってもよい。 |