(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)

 
ガイドライン各論

CQ2 ドレッシング材

【CQ 2.15】
褥瘡治療に,いわゆるラップ療法は有効か

【推奨文】
医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅等の療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし褥瘡の治療について十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで,患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである。

【推奨度】 C1

【解説】
「ラップ療法」の項目でエビデンスの収集を行った。専門家による症例報告やコメントは数多くあるが,標準的な治療法と比較した臨床試験は,ランダム化比較試験が1編,非ランダム化比較試験が2編しかない。
NPUAP分類III〜IV度の成人褥瘡患者を対象とした非ランダム化比較試験1)では,12週目のDESIGNスコアに関して,いわゆる「ラップ療法」群が対照群よりも有意に減少した(p=0.011)。完治率と悪化率は同等であった。一方,NPUAP分類II〜III度の成人褥瘡患者を対象とした多施設共同ランダム化比較試験2)では,いわゆる「ラップ療法」群と標準法群の間に,DESIGN-R,PUSHスコア,褥瘡面積の推移に有意差を認めなかった。医療費は,いわゆる「ラップ療法」が有意に安価であった。さらに,成人褥瘡患者を対象とした非ランダム化比較試験3)では,治療期間中央値は,いわゆる「ラップ療法」群と従来治療群の間に有意差はなかった(p=0.92)。1日当たりの経費の比較では,いわゆる「ラップ療法」群が有意に安価であった。これら3つの臨床試験では,悪化症例や有害事象などの安全性に2群間に有意差はなかったが,他方で,ラップ療法で悪化した褥瘡2症例を報告した症例報告が1編ある4)
以上の報告,ならびに2010年の日本褥瘡学会理事会見解より,褥瘡治療にあたっては医療用として認可された創傷被覆材の使用が望ましい。非医療用材料を用いた,いわゆる「ラップ療法」は医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし,褥瘡の治療について十分な知識と経験をもった医師の責任のもとで,患者・家族に十分説明をして同意を得たうえで実施すべきである。

【文献】
1) Takahashi J, Yokota O, Fujisawa Y, et al:An evaluation of polyvinylidene film dressing for treatment of pressure ulcers in older people. J Wound Care, 15(10):449-454, 2006.(レベルIII)
2) 水原章浩, 尾藤誠司, 大西山大, ほか:ラップ療法の治療効果〜ガイドラインによる標準法との比較検討. 褥瘡会誌, 13(2):134-141,2011.(レベルII)
3) 植田俊夫, 下窪咲子, 本田和代, ほか:褥創に対するラップ療法の有用性の検証. 褥瘡会誌, 8(4): 551-559, 2006.(レベルIII)
4) 盛山吉弘:不適切な湿潤療法による被害いわゆる“ラップ療法”の功罪. 日皮会誌, 120(11): 2187-2194, 2010.(レベルV)


 

 
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