(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)

 
ガイドライン各論

CQ1 外用剤

【CQ 1.7】
滲出液が多い場合,どのような外用剤を用いたらよいか

【推奨文・推奨度】
滲出液吸収作用を有するカデキソマー・ヨウ素,ポビドンヨード・シュガーを推奨する。 [推奨度B]
デキストラノマー,ヨウ素軟膏を用いてもよい。 [推奨度C1]

【解説】
カデキソマー・ヨウ素にはフィブリノリジン・デオキシリボヌクレアーゼ配合剤,デキストラノマー,デキストランポリマー(基剤)との間で滲出液量の改善率を検討した比較試験がある。フィブリノリジン・デオキシリボヌクレアーゼ配合剤との改善率の比較ではカデキソマー・ヨウ素65.8%,フィブリノリジン・デオキシリボヌクレアーゼ配合剤46.2%であり,カデキソマー・ヨウ素を用いた場合に改善率が有意に高かった(p<0.05)1)。また,デキストラノマーとの改善率の比較では,カデキソマー・ヨウ素65.2%,デキストラノマー18.2%であり,カデキソマー・ヨウ素を用いた場合に改善率が有意に高かった(p<0.01)2)。一方,デキストランポリマー(基剤)との改善率の比較では,カデキソマー・ヨウ素33.3%,デキストランポリマー24%であり,有意差はみられなかった3)
ポビドンヨード・シュガーには塩化リゾチーム軟膏との滲出液量の改善率を検討した比較試験が2件,幼牛血液抽出物含有軟膏との比較試験が1件ある。幼牛血液抽出物含有軟膏との比較では,ポビドンヨード・シュガー25%,幼牛血液抽出物含有軟膏0%であり,ポビドンヨード・シュガーを用いた場合に改善率が有意に高かった(p<0.01)4)。塩化リゾチーム軟膏との改善率の比較では,ポビドンヨード・シュガー25%,塩化リゾチーム軟膏33.3%であり有意差がみられなかった試験5)と,ポビドンヨード・シュガー49.1%,塩化リゾチーム軟膏27.8%であり,ポビドンヨード・シュガーを用いた場合に有意に高かった試験(p<0.01)6)とがある。また,ポピドンヨード・シュガー投与にてDESIGN点数が減少した症例を後ろ向きに調査したところ,滲出液量とDESIGN点数減少との間に関連性は見い出されなかった7)
デキストラノマーとヨウ素軟膏に関しては滲出液吸収効果について検討した症例報告がある。デキストラノマーは中等度以上の分泌液の症例が5例から1例に減少していた8)。ヨウ素軟膏についてはDESIGN-RまたはDESIGNのEが有意に改善したとの症例報告がある9,10)
以上より,滲出液が多い場合に使用する外用剤としては,カデキソマー・ヨウ素,ポビドンヨード・シュガーを推奨度B,デキストラノマー,ヨウ素軟膏を推奨度C1とした。

【文献】
1) 久木田淳, 大浦武彦, 青木虎吉, ほか:各種皮膚潰瘍に対するNI-009の臨床評価, エレースC軟膏の対照薬とした群間比較試験. 臨医薬, 6(4):817-848, 1990. (レベルII)
2) 石橋康正, 大河原章, 久木田淳, ほか:各種皮膚潰瘍に対するNI-009の臨床評価, デブリサンを対照薬とした群間比較試験. 臨医薬, 6(4):785-816, 1990.(レベルII)
3) 安西喬, 白取昭, 大友英一, ほか:各種皮膚潰瘍に対するNI-009の有用性の検討-基剤を対照とした群間比較-. 臨医薬, 5(12):2585-2612, 1989.(レベルII)
4) KT-136皮膚潰瘍比較試験研究班:白糖・ポピドンヨード配合軟膏(KT136)の皮膚潰瘍に対するソルコセリル軟膏(SS094 軟膏)との比較臨床試験. 薬理と治療, 17(4):1789-1813, 1994.(レベルII)
5) 斉藤義雄, 古瀬善朗, 石井敏直, ほか:褥瘡に対する白糖ポピドンヨード軟膏(ユーパスタコーワ)と塩化リゾチーム軟膏(リフラップ軟膏)配合白糖ポピドンヨード軟膏の無作為化比較試験による臨床研究. 薬理と治療, 22(5):2403-2413, 1994.(レベルII)
6) 今村貞夫, 内野治人, 井村裕夫, ほか:白糖・ポビドンヨード配合軟膏(KT-136)の褥瘡に対する有用性の検討-塩化リゾチーム軟膏を対照とした比較臨床試験-. 薬理と治療, 17(1):255-279, 1989.(レベルII)
7) 小林綾, 武藤里志, 千野賢一, ほか:「DESIGNツール」を用いた褥瘡局所治療薬の薬効評価. 褥瘡会誌, 10(2):111-116, 2008.(レベルV)
8) 堀尾武, 河合修三, 森口隆彦, ほか:褥瘡に対するSK-P-9701(デキストラノマーペスト)の臨床効果. 褥瘡会誌, 3(3):355-364, 2001.(レベルV)
9) 永井弥生, 天野博雄, 岡田悦子, ほか;褥瘡に対するヨードコート軟膏0.9%の治療効果. 新薬と臨床, 59(7):1215-1223, 2010.(レベルV)
10) 立花隆夫, 藤井紀和, 若林麻記子, ほか:黄色期褥瘡に対する0.9%ヨウ素含有軟膏の治療効果の検討. 褥瘡会誌, 12(4):513-519, 2010.(レベルV)


 

 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す