(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン

 
第3章 褥瘡の治療


慢性期褥瘡の局所治療 Clinical Questions
深い褥瘡(D)の場合
3.Sをsにする 創の縮小


CQ1 どのような外用薬を用いたらよいか

推奨

A.アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート
【エビデンスレベル】
幼牛血液抽出物含有軟膏と創の縮小率を比較したランダム化比較試験が1編1あり、有意に平均縮小率が大きかった。また、エビデンスレベルIIとなるが、薬剤の色もしくは性状から判別できるので非盲検のランダム化比較試験である。

【解説】
  • 血管新生促進作用、創面の乾燥化促進作用、肉芽形成促進作用、表皮再生促進作用、創面縮小作用を有する2
  • 散剤基剤の滲出液減少効果は弱い3ので、滲出液の多いときは避ける。
  • 皮膚への刺激性はほとんどないので使いやすい。

【参考文献】
1. 水谷 弘,他.褥創に対する外用アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート散剤(ISP)の臨床効果―ソルコセリル軟膏との比較試験―.臨と研.1982;59:2097-112.
2. 布川和永,他.ラット実験的褥瘡モデルの確立に関する研究―外用Aluminum Chlorohydroxy Allantoinate散剤の褥瘡治療効果.応用薬理.1982;23:999-1011.
3. 野町昭三郎,大谷 清,木村哲彦.外用アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート散剤(ISP)の臨床評価 褥瘡に対するInactive Placeboとの多施設二重盲検試験成績.薬理と治療.1982;10(10):5793-812.



B.トラフェルミン
【エビデンスレベル】
創の縮小作用を検討した論文には、プラセボと比較したランダム化比較試験が1編1あり、創の縮小作用に有意差を認めている。また、ポビドンヨード・シュガー、GM-CSF、あるいは、低濃度のFGFと比較したランダム化比較試験が3編234あるが、こちらでは対照群との有意差を認めていない。以上よりエビデンスレベルIIとなるが、いずれも薬剤の色もしくは性状から判別できるので非盲検のランダム化比較試験である。

【解説】
  • FGF自体による血管新生作用や肉芽形成促進作用等によって創傷治癒を促進する567。さらには、創傷局所で炎症細胞を動員するとともに、TGF-βなどの成長因子を発現する8
  • 深い創底やポケットを有する褥瘡に用いる場合には、死腔を埋め湿潤を保持するために他の外用薬やドレッシング材などを併用するとよい。
  • 噴霧時はFGFの効果を減弱させないように、必ず消毒薬を洗浄・除去する。また、噴霧後はFGF受容体に結合するまでの約30秒間はポビドンヨードなどの消毒薬と接触を避ける。
  • 創傷治癒効果は強いが、スプレータイプのため単剤では創部の湿潤環境を維持しにくい。
  • 調製が煩雑であり、溶解後2週間以内に使用などの制限がある。

【参考文献】
1. Robson MC, Phillips LG, Lawrence WT, Bishop JB, Youngerman JS, Hayward PG, Broemeling LD, Heggers JP. The safety and effect of topically applied recombinant basic fibroblast growth factor on the healing of chronic pressure sores. Ann Surg. 1992;216(4):401-6; discussion 406-8.
2. 石橋康正,添田周吾,大浦武彦,他.遺伝子組み換えヒト型bFGF(KCB-1)の皮膚潰瘍に対する臨床評価 白糖・ポビドンヨード配合製剤を対照薬とした第III相臨床試験.臨床医薬.1996;12(10):2159-89.
3. Robson MC, Hill DP, Smith PD, Wang X, Meyer-Siegler K, Ko F, VandeBerg JS, Payne WG, Ochs D, Robson LE. Sequential cytokine therapy for pressure ulcers: clinical and mechanistic response. Ann Surg. 2000;231(4):600-11.
4. 石橋康正,添田周吾,大浦武彦,他.bFGF(KCB-1)の各種難治性皮膚潰瘍に対する臨床効果 二重盲検比較試験による用量反応試験.臨床医薬.1996;12(9):1809-34.
5. Okumura M, Okuda T, Nakamura T, Yajima M. Acceleration of wound healing in diabetic mice by basic fibroblast growth factor. Biol Pharm Bull. 1996;19(4):530-5.
6. Okumura M, Okuda T, Okamoto T, Nakamura T, Yajima M. Enhanced angiogenesis and granulation tissue formation by basic fibroblast growth factor in healing-impaired animals. Arzneimittelforschung. 1996;46(10):1021-6.
7. Okumura M, Okuda T, Nakamura T, Yajima M. Effect of basic fibroblast growth factor on wound healing in healing-impaired animal models. Arzneimittelforschung. 1996;46(5):547-51.
8. Tanaka E, Ase K, Okuda T, Okumura M, Nogimori K. Mechanism of acceleration of wound healing by basic fibroblast growth factor in genetically diabetic mice. Biol Pharm Bull. 1996;19(9):1141-8.



C.ブクラデシンナトリウム
【エビデンスレベル】
基剤のマクロゴールとのランダム化比較試験が1編1あり、創の縮小作用に有意差を認めている。エビデンスレベルIIである。

【解説】
  • 局所血流改善作用、血管新生促進作用、肉芽形成促進作用、表皮形成促進作用などにより創傷治癒を促進する2345
  • IL6、TGF-αなどのサイトカインの分泌合成を高めて細胞増殖を惹起する6
  • 創傷での潰瘍縮小・治癒促進作用による創傷の収縮作用を有するという報告もある78
  • 肉芽形成促進作用は強いが、使用に際しその特異臭が気になることがある。
  • 吸水性をもつマクロゴールを基剤として用いるため、滲出液等の減少により創面が乾燥しやすい。

【参考文献】
1. 新村真人,山本桂三,岸本三郎,他.褥瘡・皮膚潰瘍に対するDT-5621(ジブチリルサイクリックAMP含有軟膏)の臨床効果検討 基剤(マクロゴール)を対照とした二重盲検比較試験.薬理と治療.1990;18(7):2757-70.
2. 岡田忠彦,小屋和子.ブクラデシンNa含有軟膏の創傷後血管再構築に対する影響 鋳型血管法による検討.皮膚科紀要.1990;85(1):119-27.
3. 増沢幹男,大川 司,藤村響男,他.DBcAMPのヒト皮膚微小血管内皮細胞に対する細胞増殖作用の検討.皮膚科紀要.1990;85(3):453-6.
4. Falanga V, et al. Dibutyryl cyclic AMP by itself or in combination with growth factors can stimulate or inhibit growth of human keratinocytes and dermal fi broblasts. Wounds. 1991;3:70-8.
5. Iwasaki T, Chen JD, Kim JP, Wynn KC, Woodley DT. Dibutyryl cyclic AMP modulates keratinocyte migration without alteration of integrin expression. J Invest Dermatol. 1994;102(6):891-7.
6. Zhou LJ, Ono I. Stimulatory effects of dibutyryl cyclic adenosine monophosphate on cytokine production by keratinocytes and fibroblasts. Br J Dermatol. 2000;143(3):506-12.
7. 笠井義男,田村 清.DT-5621(ジブチリルサイクリックAMP含有軟膏)のラット皮膚熱傷創に対する効果 背部皮膚と腹部皮膚との比較.薬理と治療.1990;18:2919-24.
8. 岩崎利郎,小野承行,山口和政,他.加齢・低蛋白食負荷ラットの欠損創に対するDT-5621の治療効果.皮膚科紀要.1990;85(1):161-8.



D.プロスタグランジンE1
【エビデンスレベル】
塩化リゾチームとのランダム化比較試験が1編1あり、創の縮小作用に有意差を認めている。また、エビデンスレベルIIとなるが、薬剤の色もしくは性状から判別できるので非盲検のランダム化比較試験である。

【解説】
  • 皮膚血流増加作用、血管新生促進作用、表皮形成促進作用により創傷治癒を促進する234
  • 角化細胞と線維芽細胞に作用する23
  • 線維芽細胞からのIL6を増加させることで、さらに角化細胞に作用する56
  • 油脂性基剤が用いられている。
  • 血流改善作用が強い反面、局所の刺激作用がある。

【参考文献】
1. 今村貞夫,相模成一郎,石橋康正,他.G-511軟膏の褥瘡・皮膚潰瘍に対する臨床試験 塩化リゾチーム軟膏を対照とした電話法による無作為割付け比較試験.臨床医薬.1994;10(1):127-47.
2. Matsumoto R, Shiroya T, Naka M, Omawari N, Shinomiya K, Fujitani B, Aishita H. Effect of OP-41483.alpha-CD, a prostacyclin analog, on a clamp-induced endothelial injury in rats. Life Sci. 1993;53(11):893-900.
3. Yuzuriha S, et al. Topical application of prostaglandin E1 ointment to cutaneous wounds in ischemic rabbit ears. Eur J Plast Surg. 1999;22:225-9.
4. 白地孝光,松本亮二,松本範人,他.各種実験的創傷モデルにおけるプロスタグランディンE1・α-シクロデキストリン包接化合物(PGE1・CD)含有軟膏の効果.西日本皮膚科.1994;56(3):499-507.
5. Zhang JZ, Maruyama K, Iwatsuki K, Ono I, Kaneko F. Effects of prostaglandin E1 on human keratinocytes and dermal fibroblasts: a possible mechanism for the healing of skin ulcers. Exp Dermatol. 1994;3(4):164-70.
6. 小野一郎,他.Prostaglandinの創傷治癒促進効果の発現機序についての研究.Progress in Medicine. 1994;14(9):2506-8.



E.塩化リゾチーム
【エビデンスレベル】
創の縮小作用を検討した論文には、ポビドンヨード・シュガー、ポビドンヨード・シュガーとの合剤と比較したランダム化比較試験が2編12あり、エビデンスレベルIIとなるが、症例数が少なく有意差検定を行ってない。また、薬剤の色もしくは性状から判別できるので非盲検のランダム化比較試験である。

【解説】
  • 表皮細胞の増殖促進作用と線維芽細胞の増殖促進作用を有する。また、ムコ多糖合成を刺激することで、創傷治癒を促進する3456
  • 創の収縮を期待して用いる。また、皮膚への刺激性はほとんどないので使いやすい。
  • 水分を23%含む乳剤性基剤を用いているため、滲出液の多いときは使用を控える。
  • 卵白アレルギー患者には注意する。

【参考文献】
1. リフラップ軟膏他剤配合臨床研究班.リフラップ軟膏とポビドンヨード・シュガー軟膏及びポビドンヨード・シュガー配合リフラップ軟膏の褥瘡に対する治療効果の比較検討.皮膚.1990;32(4):547-63.
2. リフラップ軟膏他剤配合臨床研究班.褥瘡に対するリフラップ軟膏とポビドンヨード・シュガー軟膏及びポビドンヨード・シュガー軟膏配合リフラップ軟膏の臨床効果の比較検討.皮膚.1990;32(4):564-73.
3. 石田寛友,井上 肇,河辺邦昭,他.塩化リゾチームのヘアレスラット表皮細胞の増殖に及ぼす影響と作用機序に関する検討.日本形成外科学会会誌.1989;9(4):326-35.
4. Brendolan S. Lysozyme's effect on the healing process of experimental wounds. Proc 2nd Inter Symp on Fleming's lysozyme. Milano. 1961;II(IX):51-63.
5. 高橋信博,向尾正昭.リゾチームの正常ヒト皮膚線維芽細胞に対する作用.基礎と臨床.1984;18(12):6306-11.
6. 高橋信博,深沢一也,川越清隆.KH-101軟膏(リフラップ(R)軟膏)の実験的創傷治癒に対する効果.基礎と臨床.1984;18(12):6312-18.



F.アズレン
【エビデンスレベル】
エキスパートオピニオン以外に創の縮小作用に関する論文はなく、エビデンスレベルVIである。

【解説】
  • 創面の保護作用により、創の縮小を促進する。
  • 抗炎症作用と浮腫抑制作用を有する12とされるが、その作用は弱く主には創の保護効果である。
  • 油脂性の白色ワセリンを基剤に用いているため、滲出液が多いときは使用を控える。

【参考文献】
1. 山崎英正,他.Guaiazuleneの薬理、特に抗炎症作用とHistamine遊離制御作用.日薬理誌.1958;54:362-77.
2. 宇田昭夫.Guaiazuleneほか2、3抗炎症性薬物の炎症性浮腫に対する制御作用態度.日薬理誌.1960;56:1151-63.



G.酸化亜鉛
【エビデンスレベル】
エキスパートオピニオン以外に創の縮小作用に関する論文はなく、エビデンスレベルVIである。

【解説】
  • 局所収斂作用、保護作用および軽度の防腐作用を発揮することで炎症を抑えるとともに組織修復を促進する1とされるが、その作用は弱い。
  • 古典的な外用薬ではあるが、創面の保護作用により創の縮小を促進する。
  • 油脂性の白色ワセリンを基剤に用いているため、滲出液が多いときは使用を控える。

【参考文献】
1. 日本薬局方解説書編集委員会 編.第十四改正日本薬局方 条文と注釈.廣川書店,東京.2001;1257-9.



H.幼牛血液抽出物
【エビデンスレベル】
褥瘡治療に関する対照群なしの非ランダム化比較試験は1編1あるが、エキスパートオピニオン以外に創の縮小作用を検討した論文はなく、エビデンスレベルVIである。

【解説】
  • 組織機能を賦活し、線維芽細胞増殖を促進することで、肉芽形成、血管再生を促進して創傷の治癒を速めるとされる2345
  • 創の縮小を期待して用いる。また、皮膚への刺激性はほとんどないので使いやすい。
  • 水分を25%含む乳剤性基剤を用いているため、滲出液の多いときは使用を控える。

【参考文献】
1. 前畑幸彦,松田ひろし,宮島良夫,高崎 優.高齢者褥瘡における幼牛血液摘出製剤(ソルコセリル軟膏)の使用経験.薬理と治療.1999;27(2):213-9.
2. 井上昌一,他.ソルコセリルの生化学的研究(第1報)―ソルコセリルの組織呼吸促進作用について―.基礎と臨.1974;8:4013-8.
3. 吉里勝利.培養ヒト線維芽細胞の増殖に対するNaHCO3の影響.Cyto-prot biol. 1984;2:79-83.
4. Iwasaki T, Chen JD, Kim JP, Wynn KC, Woodley DT. Dibutyryl cyclic AMP modulates keratinocyte migration without alteration of integrin expression. J Invest Dermatol. 1994;102(6):891-7.
5. 山浦哲明,石井 誠,楳原典光.幼牛血液より得られる組織呼吸賦活物質(Solcoseryl(R))のラットおよびウサギの創傷治癒促進作用.応用薬理.1983;25(2):275-82.



CQ2 どのようなドレッシング材を用いたらよいか

推奨
推奨度 B 創からの滲出液を吸収し、創に適切な湿潤環境を形成するアルギン酸塩の使用を推奨する。
推奨度 C1 ハイドロコロイドハイドロジェルハイドロポリマーポリウレタンフォームキチンハイドロファイバー®(銀含有製材を含む)を創からの滲出液の程度により選択し使用してもよい。


A.アルギン酸塩
【エビデンスレベル】
創傷面積の縮小率を検討したランダム化比較試験は2編12あり、エビデンスレベルIIである。なお、ハイドロコロイドの単独使用よりも、ハイドロコロイド使用前にアルギン酸塩を使用したほうが有意に縮小率が大きかった1。また、デキストラノマーと比較して有意に創傷面積が縮小した2と報告されている。

【解説】
  • 滲出液のナトリウムイオンと接触するとただちにゲル状に変化し、創面に湿潤環境を形成する。
  • 自重の約20倍の吸収力があり、滲出液の吸収速度が速い。

【参考文献】
1. Belmin J, Meaume S, Rabus MT, Bohbot S; Investigators of the Sequential Treatment of the Elderly with Pressure Sores (STEPS) Trial. Sequential treatment with calcium alginate dressings and hydrocolloid dressings accelerates pressure ulcer healing in older subjects: a multicenter randomized trial of sequential versus nonsequential treatment with hydrocolloid dressings alone. J Am Geriatr Soc. 2002;50(2):269-74.
2. Sayag J, Meaume S, Bohbot S. Healing properties of calcium alginate dressings. J Wound Care. 1996;5(8):357-62.



B.ハイドロコロイド
【エビデンスレベル】
生食ガーゼドレッシング法(wet to wet)と創の縮小率を比較したランダム化比較試験が2編12あり、エビデンスレベルIIとなるが、創の縮小率に有意差はない。

【解説】
  • 閉塞性の湿潤環境を創に形成し、血管新生促進と細胞遊走を妨げない環境を形成する。
  • 滲出液の吸収力は弱いので、滲出液の多いときは避ける。

【参考文献】
1. Colwell JC, Foreman MD, Trotter JP. A comparison of the efficacy and cost-effectiveness of two methods of managing pressure ulcers. Decubitus. 1993;6(4):28-36.
2. Xakellis GC, Chrischilles EA. Hydrocolloid versus saline-gauze dressings in treating pressure ulcers: a cost-effectiveness analysis. Arch Phys Med Rehabil. 1992;73(5):463-9.



C.ハイドロジェル
【エビデンスレベル】
創の縮小率を比較したランダム化比較試験が3編123あり、エビデンスレベルIIとなるが、生食ガーゼドレッシング法(wet to wet)、ハイドロコロイド、ポビドンヨードと比較して創の縮小率に有意差はない。

【解説】
  • シートタイプは創と創周囲皮膚を含めて密着させて被覆し、滲出液の漏れが認められる場合にはドレッシング交換を行う。
  • 充填タイプは創の深さに応じて皮膚面まで充填して使用する。

【参考文献】
1. Thomas DR, Goode PS, LaMaster K, Tennyson T. Acemannan hydrogel dressing versus saline dressing for pressure ulcers. A randomized, controlled trial. Adv Wound Care. 1998;11(6):273-6.
2. Mulder GD, Altman M, Seeley JE, Tintle T. Prospective randomized study of the efficacy of hydrogel, hydrocolloid, and saline solution-moistened dressings on the management of pressure ulcers. Wound Repair Regen. 1993;1(4):213-8.
3. Kaya AZ, Turani N, Akyüz M. The effectiveness of a hydrogel dressing compared with standard management of pressure ulcers. J Wound Care. 2005;14(1):42-4.



D.ハイドロポリマー
【エビデンスレベル】
ハイドロコロイドと創の縮小率を比較したランダム化比較試験が1編1あり、エビデンスレベルIIとなるが、創の縮小率に有意差はない。

【解説】
  • 創部へ湿潤環境を提供する。
  • 過剰な滲出液を速やかに吸収し、創傷周囲の健常皮膚の浸軟を防止する。
  • 窪みのある創傷部位へフィットし滲出液の貯留を防止する。
  • ハイドロコロイドとの治癒期間を比較したランダム化比較試験が1編2あるが、創の縮小率に関しての記載はない。

【参考文献】
1. Motta G, Dunham L, Dye T, Mentz J, O'Connell-Gifford E, Smith E. Clinical efficacy and cost-effectiveness of a new synthetic polymer sheet wound dressing. Ostomy Wound Manage. 1999;45(10):41, 44-6, 48-49.
2. Thomas S, Banks V, Bale S, Fear-Price M, Hagelstein S, Harding KG, Orpin J, Thomas N. A comparison of two dressings in the management of chronic wounds. J Wound Care. 1997;6(8):383-6.



E.ポリウレタンフォーム
【エビデンスレベル】
創の縮小作用を検討した論文には、ハイドロジェル、ハイドロコロイド、生食ガーゼ法と比較したランダム化比較試験が4編1234あり、エビデンスレベルIIであるが、いずれも対照群とは有意差を認めていない。

【解説】
  • 自重の10倍、ハイドロコロイドの約4倍の吸水力がある。
  • 余分な滲出液を中間層の親水性フォームで保持し、創面の湿潤環境を形成する。
  • 皮膚面は非固着性ポリウレタンのため、創および創周囲皮膚を損傷しない。また、ドレッシング材が滲出液により崩壊しないため、創に残渣を残さない。

【参考文献】
1. Sopata M, Luczak J, Ciupinska M. Effect of bacteriological status on pressure ulcer healing in patients with advanced cancer. J Wound Care. 2002;11(3):107-10.
2. Seeley J, Jensen JL, Hutcherson J. A randomized clinical study comparing a hydrocellular dressing to a hydrocolloid dressing in the management of pressure ulcers. Ostomy Wound Manage. 1999;45(6):39-44, 46-7.
3. Banks V, et al. The use of two dressings for moderately exuding pressure sores. J Wound Care. 1994;3:132-4.
4. Banks V, et al. Superfi cial pressure sores: comparing two regimes. J Wound Care. 1994;3:8-10.



F.キチン
【エビデンスレベル】
創傷面積縮小作用を検討した症例研究が2編12あり、エビデンスレベルVである。

【解説】
  • 吸水性および吸着性の作用により、創面の清浄化に有用である。
  • 肉芽形成促進、鎮痛、止血効果が報告されている。
  • 創の縮小率は治療初期において特に著しかった2

【参考文献】
1. 和田秀敏,宮岡達也,山野竜文.スポンジタイプキチン膜による褥瘡の治療.西日本皮膚科.1990;52(4):761-5.
2. 上山武郎.綿状キチンによる褥瘡の治療.新薬と臨床.1994;43(2):291-9.



G.ハイドロファイバー®(銀含有製材を含む)
【エビデンスレベル】
エキスパートオピニオン以外に創傷面積縮小作用を検討した論文はなく、エビデンスレベルVIである。

【解説】
  • カルボキシルメチルセルロースナトリウム100%からなる繊維が滲出液を吸収し、崩壊しないゲルを形成し、創部に湿潤環境を維持する。
  • ハイドロファイバー®が繊維内へ滲出液を保持し、創傷周囲健常皮膚の浸軟を防止する。
  • 創面に固着しにくいゲルを形成するため除去しやすく、交換時の二次損傷を防止する。
  • アルギン酸塩より吸収力は大きく、自重の約30倍の水分を吸収する。
  • 水分を繊維の縦方向へ吸収し、横方向への広がりをおさえるため、創傷周囲皮膚の浸軟を予防する。
  • 銀含有製材では銀イオンが放出され、滲出液に含まれた細菌を迅速かつ効果的に抗菌する。
  • 銀含有製材では、緑膿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)など、創傷部位に一般的に見られる細菌に対して抗菌効果を発揮する。



CQ3 どのような場合に外科的治療を行えばよいか

推奨
[手術適応について]
推奨度 C1 深さが、皮下組織以上に及ぶときには外科的治療(手術療法)を考慮してもよい。
[手術時期について]
推奨度 C1  感染が鎮静化しているときに外科的治療(手術療法)を行うことを考慮してもよい。


【エビデンスレベル】
外科的治療(手術療法)に関しての報告は、症例報告もしくは症例集積研究、あるいは、教科書的、総説的なエキスパートオピニオンであるものがほとんどである。エビデンスレベルVである。
なお、一般創傷を対象とする外科的閉鎖(植皮及び直接縫合)においては、感染を伴わない状態で行うべきとするコホート研究を2編12認めた。褥瘡を対象としたものでないが、手術適応に関し価値のあるエビデンス論文と思われる。

【解説】
  • 局所的な手術適応は、皮下組織より深層に達した褥瘡である34567891011121314151617181920。特に、筋組織を越え骨に達する褥瘡では、保存的治療のみでは治癒まで非常に長い期間を必要とする。保存的治療を漫然と継続するのではなく常に手術適応について検討しておくべきである21。例えば、保存的治療により創面が浅くなっても褥瘡が広範囲に及ぶ場合には、遊離植皮術の適応を考慮してもよい。
  • 保存的治療ではそれ以上の改善が期待しにくい場合、例えば創の周囲が強度に陳旧化・瘢痕化している場合22や、骨髄炎を伴う場合23深い褥瘡(D)の場合 4.Iをiにする 感染・炎症の制御 CQ5 どのような場合に外科的治療を行えばよいか 参照)には、その瘢痕や腐骨を外科的除去したうえで手術による創閉鎖を積極的に検討してもよい。
  • 手術は安定した全身状態で行うべきである21が、手術侵襲を過大評価しないようにする。その他に手術に際しては、再発に関する検討924が重要である。特に再発例や多発例では適応をより慎重にする必要がある91724
  • AHCPRの報告によれば、再発は13%25〜56%26と記載されているが、90%27とする報告もある。しかし、これらの報告は調査期間や部位、基礎疾患、術後管理などが統一されていないため、正確な数字とは言い難い。今後は術後管理を指導した上で再発率を求めるようにするべきである。特に術後の除圧管理は重要であり、適切な管理ができない場合には手術の適応について再検討すべきである28
  • 特に脊髄損傷患者5929の坐骨部褥瘡1124303132は再発率が高く、再発予防には単に創部の管理・ケアのみならず、喫煙9などの生活習慣、プッシュアップなどの日常的な予防行動、車椅子やクッションの適正使用(いわゆるシーティング)などの管理・指導、ならびにこれらに対する患者自身の意識が非常に重要である3233。これらの予防体制・環境が不十分なまま手術に踏み切ることは好ましいとは言えない。
  • 骨突出、関節拘縮2234、低栄養などの褥瘡発生危険因子を有する患者も術後に再発を来しやすいとされている。再発を来しやすい疾患名としては、糖尿病、心疾患9、腎不全などが挙げられるが、精神状態も検討すべきとする報告25がある。
  • 今回の委員会において、高度の認知症患者は手術適応を慎重にするほうがよいという意見が出た。また、褥瘡の手術のためには、約1か月の入院期間を考える必要があり、局所的に手術適応と考えられても長い入院期間に同意できない患者も少なくない。このため患者を取り巻く社会的環境についても考慮する必要がある1834
  • 手術時期に関しては、感染の鎮静化が重要とされている1115353637。このため術前の外科的デブリードマン(深い褥瘡(D)の場合 1.Nをnにする 壊死組織の除去 CQ1 外科的デブリードマンはどのように行えばよいか を参照)が必要となる。具体的指標としては、一般細菌は105CFU/gram以下かつβ溶連菌は検出限界以下という基準が提唱されている1223。あるいは、良性の肉芽組織の形成と滲出液の減少を認めたときを目安とする報告もある3738
  • 肉芽形成促進目的に人工真皮を使用する報告があるが、使用は壊死組織の除去後に限定される39。血液学的検査としては、血清Hb 10.0g/dL、血清Alb 3.0g/dL以上が望ましいが、必ずしもこの条件を満たす報告ばかりではなかったので、全身状態を見きわめた上で検討することとする13
  • なお、術式の差異のエビデンスについては、近年術式間での再発率を統計的に比較する後ろ向き症例研究やコホート研究が散見されるようになった404142。しかし、これらの報告は症例数が少なく、また、周術期の管理・ケア方法が統一化されていない現時点でこれらの研究結果を推奨することはむしろ混乱を招く可能性が高いと判断されるため、本ガイドラインではこれらの内容には言及せず文献の引用にとどめる。

【参考文献】
1. Krizek TJ, et al. Bacterial growth and skin graft survival. Surg Forum. 1967;18:518-9.
2. Robson MC, Lea CE, Dalton JB, Heggers JP. Quantitative bacteriology and delayed wound closure. Surg Forum. 1968;19:501-2.
3. Borman H, Maral T. The gluteal fasciocutaneous rotation-advancement flap with V-Y closure in the management of sacral pressure sores. Plast Reconstr Surg. 2002;109(7):2325-9.
4. Coşkunfirat OK, Ozgentaş HE. Gluteal perforator flaps for coverage of pressure sores at various locations. Plast Reconstr Surg. 2004;113(7):2012-7; discussion 2018-9.
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CQ4 どのような物理療法があるか

推奨
推奨度 B 電気刺激療法を推奨する。
推奨度 C1 陰圧閉鎖療法を行ってもよい。
推奨度 C1 光線療法(近赤外線あるいは紫外線)を行ってもよい。
推奨度 C1 水治療法を行ってもよい。
推奨度 C1 高圧酸素療法を行ってもよい。


A.電気刺激療法
【エビデンスレベル】
電気刺激療法130例、対照86例のメタ・アナリシス1で有意な有効性が認められた。エビデンスレベル I である。

【解説】
  • 線維芽細胞の活性化による創傷治癒促進効果、表皮細胞の遊走能の促進作用がある234
  • 各ガイドラインの推奨度は以下の通りである。WOCNの推奨度はA、AHCPRの推奨度はB、EPUAPの推奨度はCである。推奨度をAとすることができるだけのエビデンスがあるが、推奨度をBとした理由は3つのガイドラインの評価が分かれていることに加え、本邦での経験・報告例がないことである。

【参考文献】
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B.陰圧閉鎖療法
【エビデンスレベル】
褥瘡単独を対象としたランダム化比較試験の文献は1編1だけであり、有効性は証明されていない。エビデンスレベルIIである。コクランライブラリーのレビュー2では難治性潰瘍を対象にしたものであるが、陰圧閉鎖療法の付加効果は否定的である。

【解説】
  • 海外の文献はすべてVACを用いている123。本邦で陰圧閉鎖療法を用いている研究では、圧、スポンジなどが異なっている45
  • WOCNガイドランでは推奨度Aと高く評価されているが、エビデンスレベルが高い文献がないこと、EPUAPとAHCPRのガイドラインでは記載がないことから、推奨度はC1と判断した。

【参考文献】
1. Wanner MB, Schwarzl F, Strub B, Zaech GA, Pierer G. Vacuum-assisted wound closure for cheaper and more comfortable healing of pressure sores: a prospective study. Scand J Plast Reconstr Surg Hand Surg. 2003;37(1):28-33.
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C.光線療法(近赤外線あるいは紫外線)
【エビデンスレベル】
赤色光を含む近赤外線による治療ではランダム化比較試験1がある。有意差をもって有効であり、エビデンスレベルIIである。
紫外線の照射でもランダム化比較試験2があり、有意差が認められた。エビデンスレベルIIである。本邦でも症例集積報告3がある。

【解説】
  • 近赤外線の照射によって潰瘍周囲の血流量が増加し、創傷治癒促進効果があると言われているが、その直接的なメカニズムはまだ不明である123456。紫外線の照射でも創の縮小効果が認められた2が、症例数が少なく、照射紫外線も200〜400nmの幅である。
  • レーザー光は有効性が認められていない。
  • 光線療法に関しては、EPUAPのガイドラインでは推奨する記載がないこと(レーザー光はCとされている)、WOCN Clinical Practice Guidelineでも推奨する記載がないこと、また、AHCPRガイドラインではすべてCであると記載されていることから、推奨度はC1と判断した。

【参考文献】
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6. Verdote-Robertson R, et al. The use of low intensity Laser therapy for the treatment of open wounds in psychogeriatric patients: A pilot study. Phys Occup Ther Geriatr. 2000;18:1-19.



D.水治療法
【エビデンスレベル】
文献1のランダム化比較試験1があり、創の面積は対照と比較して有意に減少した。この文献はエビデンスレベルIIである。

【解説】
  • 文献1のランダム化比較試験は渦流が創部に直接当たらないようにした研究である。水治療による創収縮のメカニズムははっきりしていないが、細菌数の減少、保温効果、デブリードマン効果である可能性がある12
  • 水治療法に関しては、WOCN、AHCPR、EPUAPのガイドラインではSをsにするための手段としては記載されていない。推奨度をBとするエビデンスがあるが、推奨度をC1とした理由は、これら3つのガイドラインの記載がないこと、および本邦での経験が少ないことである。

【参考文献】
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2. 倉林 均,田村耕成,久保田一雄.温泉水による重症褥創の局所治療の検討.群馬医学.2001;(74):53-55.



E.高圧酸素療法
【エビデンスレベル】
高圧酸素療法の適応について症例報告があり、エビデンスレベルVである。

【解説】
  • 局所的あるいは全身的に高圧酸素療法を行う。かなり以前から適応が検討され、1970年前後に褥瘡への応用例が散発的に報告されたが、近年の報告は少ない12。AHCPRのガイドラインでは使用を勧める根拠はないとしている。

【参考文献】
1. 桜木康晴,横田晃和,藤原恒弘,他.褥創に対するOHPの治療効果について.日本高気圧環境医学会雑誌.1990;25(2):83-90.
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