(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン
第3章 褥瘡の治療
褥瘡局所治療の概要
II.ドレッシング材について
1.ドレッシング材選択の原則
創面評価に基づき、創の状態に適する湿潤環境をドレッシング材で保持し、治癒環境を整備する。基本的には、創の深さ(D)、滲出液(E)、大きさ(S)、炎症/感染(I)、肉芽組織(G)、壊死組織(N)、ポケット(P)の状態を観察して創アセスメントを行い、ドレッシング材を選択する。
創感染を認める場合には、全身的・局所的に感染制御を最優先にした処置を行う。壊死組織のある場合は外科的な切除以外に、自己融解によるデブリードマンを促進し、滲出液のドレナージを妨げない吸水性に優れるドレッシング材を選択する。また、創の状態に応じてドレッシング材の交換を適宜実施する。
感染が制御され良性肉芽に移行した創においては、滲出液(E)と深さ(D)に注目する。ドレッシング材は、創の深さに応じて選択し、過剰な滲出液を吸収保持する機能を持つ種類を選択する。また、創収縮や滲出液の減少に伴い、交換時に肉芽組織や新生表皮を損傷しない保湿性のよい閉鎖性ドレッシング材に適宜変更する。ドレッシング材を選択するに当たり、ドレッシング材交換時の組織損傷回避や汚染に対するバリア機能などが重視されるが、患者の使用感やQOLを考慮することも大切である。
創感染を認める場合には、全身的・局所的に感染制御を最優先にした処置を行う。壊死組織のある場合は外科的な切除以外に、自己融解によるデブリードマンを促進し、滲出液のドレナージを妨げない吸水性に優れるドレッシング材を選択する。また、創の状態に応じてドレッシング材の交換を適宜実施する。
感染が制御され良性肉芽に移行した創においては、滲出液(E)と深さ(D)に注目する。ドレッシング材は、創の深さに応じて選択し、過剰な滲出液を吸収保持する機能を持つ種類を選択する。また、創収縮や滲出液の減少に伴い、交換時に肉芽組織や新生表皮を損傷しない保湿性のよい閉鎖性ドレッシング材に適宜変更する。ドレッシング材を選択するに当たり、ドレッシング材交換時の組織損傷回避や汚染に対するバリア機能などが重視されるが、患者の使用感やQOLを考慮することも大切である。
2.ドレッシング材の機能
創面の乾燥状態は避けなくてはならないが、滲出液が創に貯留し創周囲皮膚が浸軟する状態も治癒環境としてはよくない。
湿潤環境を創面に形成する機能は、ドレッシング材それぞれに特徴がある。
1)創面を閉鎖し創面に湿潤環境を形成するドレッシング材:ハイドロコロイド
創面に密着させることで、閉鎖性環境の下でドレッシング材の親水性ポリマーが滲出液によりゲル状に変化し、創面に湿潤環境を保持する。なお、滲出液が多量の場合にはゲルの漏れが生じるため、ただちに交換が必要である。
2)乾燥した創を湿潤させるドレッシング材:ハイドロジェル
ドレッシング材に多量に含まれる水分によって乾燥した壊死組織を軟化させ、自己融解を促進する。
3)滲出液を吸収し保持するドレッシング材:アルギン酸塩、キチン、ハイドロファイバー®(銀含有製材を含む)、ハイドロポリマー、ポリウレタンフォーム
創に余分な滲出液を溜めないように創面の滲出液を吸収する。水分吸水力に優れ、かつ滲出液を保持する機能を持つ。深さのある創に充填し、過剰な滲出液を吸収する。
4)その他:ポリウレタンフィルム
以上のように、ドレッシング材は、湿潤環境を保持する効果を通して細胞遊走を助け、壊死組織の自己融解・排除を促進し、また、汚染を防止するバリア機能、疼痛緩和、創面の保温などの効果によって、創傷治療環境を形成することが明らかにされている。
湿潤環境を創面に形成する機能は、ドレッシング材それぞれに特徴がある。
1)創面を閉鎖し創面に湿潤環境を形成するドレッシング材:ハイドロコロイド
創面に密着させることで、閉鎖性環境の下でドレッシング材の親水性ポリマーが滲出液によりゲル状に変化し、創面に湿潤環境を保持する。なお、滲出液が多量の場合にはゲルの漏れが生じるため、ただちに交換が必要である。
2)乾燥した創を湿潤させるドレッシング材:ハイドロジェル
ドレッシング材に多量に含まれる水分によって乾燥した壊死組織を軟化させ、自己融解を促進する。
3)滲出液を吸収し保持するドレッシング材:アルギン酸塩、キチン、ハイドロファイバー®(銀含有製材を含む)、ハイドロポリマー、ポリウレタンフォーム
創に余分な滲出液を溜めないように創面の滲出液を吸収する。水分吸水力に優れ、かつ滲出液を保持する機能を持つ。深さのある創に充填し、過剰な滲出液を吸収する。
4)その他:ポリウレタンフィルム
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以上のように、ドレッシング材は、湿潤環境を保持する効果を通して細胞遊走を助け、壊死組織の自己融解・排除を促進し、また、汚染を防止するバリア機能、疼痛緩和、創面の保温などの効果によって、創傷治療環境を形成することが明らかにされている。
3.今回検索したドレッシング材
現在、日本において入手可能で、薬事上認可されている皮膚欠損用創傷被覆材8種類である(表2)。また、皮膚欠損用創傷被覆材(ドレッシング材)8種類の医療機器分類を表3に示す。
表2 皮膚欠損用創傷被覆材(ドレッシング材)
表3 皮膚欠損用創傷被覆材(ドレッシング材)の医療機器分類
保険償還 | 使用材料 | 商品名 | 会社名(販社) | |||
技術料に包括 | ポリウレタンフィルム | オプサイト®ウンド | スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント(株) | |||
キュティフィルム®EX | テルモ(株) | |||||
テガダームTM トランスペアレントドレッシング | スリーエムヘルスケア(株) | |||||
バイオクルシーブ® | ジョンソン・エンド・ジョンソン(株) | |||||
パーミエイド®S | 日東メディカル(株) | |||||
特 定 保 険 医 療 材 料 | 皮 膚 欠 損 用 創 傷 被 覆 材 | 真 皮 に 至 る 創 傷 用 (A) | キチン | ベスキチン®W | ユニチカ(株) | |
ハイドロコロイド | アブソキュア®ーサジカル | 日東メディカル(株) | ||||
テガダームTM ライトハイドロコロイドドレッシング | スリーエムヘルスケア(株) | |||||
デュオアクティブ®ET | コンバテック ジャパン(株) | |||||
ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト®薄型 | スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント(株) | ||||
ハイドロジェル | ビューゲル® | 大鵬薬品工業(株) | ||||
ニュージェル® | ジョンソン・エンド・ジョンソン(株) | |||||
皮 下 組 織 に 至 る 創 傷 用 (B) | 標 準 型 (B1) | ハイドロコロイド | アブソキュア®ーウンド | 日東メディカル(株) | ||
コムフィール®アルカスドレッシング | コロプラスト(株) | |||||
テガダームTM ハイドロコロイドドレシッシング | スリーエムヘルスケア(株) | |||||
デュオアクティブ® | コンバテック ジャパン(株) | |||||
デュオアクティブ®CGF | コンバテック ジャパン(株) | |||||
ハイドロジェル | ジェリパーム®(ウェットシートI・II型) | 日本BXI(株) | ||||
キチン | ベスキチン®W-A | ユニチカ(株) | ||||
アルギン酸塩 | アルゴダーム® | スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント(株) | ||||
カルトスタット® | コンバテック ジャパン(株) | |||||
クラビオ®FG | 光洋産業(株) | |||||
アクティブヒール | 日東メディカル(株) | |||||
ソーブサン | アルケア(株) | |||||
ハイドロファイバー® | アクアセル® | コンバテック ジャパン(株) | ||||
アクアセル®Ag | コンバテック ジャパン(株) | |||||
ハイドロポリマー | ティエール® | ジョンソン・エンド・ジョンソン(株) | ||||
ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト® | スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント(株) | ||||
ハイドロサイト®AD | スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント(株) | |||||
異 形 型 (B2) | ハイドロコロイド | コムフィール®ペースト | コロプラスト(株) | |||
ハイドロジェル | イントラサイト ジェル システム | スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント(株) | ||||
グラニュゲル® | コンバテック ジャパン(株) | |||||
ジェリパーム®(粒状ゲル) | 日本BXI(株) | |||||
筋・骨に至る創傷用(C) | ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト®キャビティ | スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント(株) | |||
キチン | ベスキチン®F | ユニチカ(株) |
2005年日本褥瘡学会ガイドライン委員会作成より改変
表3 皮膚欠損用創傷被覆材(ドレッシング材)の医療機器分類
医療機器分類 | 管理 区分 | 保険償還 | 使用材料 | ||||
外 科 ・ 整 形 外 科 用 手 術 材 料 | 一般的名称 | ||||||
粘着性透明創傷被覆・保護材 | 管 理 医 療 機 器 | 技術料に包括 | ポリウレタンフィルム | ||||
局所管理親水性ゲル化創傷被覆・保護材 | 特 定 保 険 医 療 材 料 | 皮 膚 欠 損 用 創 傷 被 覆 材 | 真皮に至る創傷用 | キチン | |||
局所管理ハイドロゲル創傷被覆・保護材 | ハイドロコロイド | ||||||
局所管理フォーム状創傷被覆・保護材 | ポリウレタンフォーム | ||||||
局所管理ハイドロゲル創傷被覆・保護材 | ハイドロジェル | ||||||
二次治癒ハイドロゲル創傷被覆・保護材 | 高 度 管 理 医 療 機 器 | 皮下組織に 至る創傷用 | (標準型) | ハイドロコロイド | |||
ハイドロジェル | |||||||
二次治癒親水性ゲル化創傷被覆・保護材 | キチン | ||||||
アルギン酸塩 | |||||||
二次治癒フォーム状創傷被覆・保護材 | ハイドロファイバー® | ||||||
ハイドロポリマー | |||||||
ポリウレタンフォーム | |||||||
二次治癒ハイドロゲル創傷被覆・保護材 | (異形型) | ハイドロコロイド | |||||
ハイドロジェル | |||||||
深部体腔創傷被覆・保護材 | 筋・骨に至る創傷用 | ポリウレタンフォーム | |||||
キチン |
日本医療器材工業会 創傷被覆材部会作成分類
4.エビデンスの収集について
臨床上の疑問(CQ)すなわちPICOはDESIGNの項目ごとに各ドレッシング材の効果についてのエビデンスを検索して評価し、推奨度を決めた。たとえば“滲出液”を例に挙げると「○○ドレッシング材は従来のドレッシング材またはドレッシング法と比べ、Eをeにする効果はどうであるか?」をCQとし、1980年から2007年12月までのALL EBM Reviews(Keyword:pressure ulcer and dressing;Limit to:systematic review)、1966年から2007年12月までのMEDLINE(Keyword:pressure ulcer and dressing;Limit to:Abstracts, English, Human)、1982年から2007年12月までのCINAHL(Keyword:pressure ulcer and dressing;Limit to:Abstracts, English, Human)、1983年から2007年12月までの医学中央雑誌WEB版(Keyword:褥瘡性潰瘍;原著、人、治療に関する副標題)を検索した。
なお、今回の検索は、湿潤環境のコンセプトに基づいて行ったため、wet to dryドレッシング法は検索対象より除外した。
なお、今回の検索は、湿潤環境のコンセプトに基づいて行ったため、wet to dryドレッシング法は検索対象より除外した。