(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン
第2章 褥瘡の予防と発生後のケア
褥瘡の予防と発生後のケア Clinical Questions
褥瘡の予防
7.患者教育
CQ1 | 褥瘡発生、再発を予防するために患者やその家族(介護者)へ指導・教育をどのように行えばよいか |
推奨
推奨度 C1 | 体位変換方法、予防具の種類や使用方法に関する内容の指導・教育を行ってもよい。 |
推奨度 C1 | 褥瘡の病態、危険因子、褥瘡ステージ、創傷治癒の原則、栄養管理方法、スキンケアと皮膚観察方法、排泄管理方法に関する内容の指導・教育を行ってもよい。 |
【エビデンスレベル】
患者やその家族への指導や教育内容等の具体的な教育プログラムはすべてが症例研究であり1,2,3,4、エビデンスレベルVである。
体位変換方法、予防具の種類、使用に関する教育内容の具体的な記載はエキスパートオピニオン以外になく、エビデンスレベルVIである。
体位変換方法、予防具の種類、使用に関する教育内容の具体的な記載はエキスパートオピニオン以外になく、エビデンスレベルVIである。
【解説】
- 体位変換方法では、ポジショニングや車椅子、座位の姿勢を含めた指導を行う。またその際に、体圧を測定することでリスクの認識が可能となり、理解力の向上に効果的であったとする症例報告がある1,2,3。予防具を選択する際にも、実際の体圧を測定することで、予防具の購入に至ったとの症例報告や1、理学療法士が積極的に指導にかかわることで、ケアの継続が可能となったとする症例報告がある4。
- 褥瘡発生、再発予防のための具体的な指導・教育内容を検討した臨床での比較研究論文はない。WOCN Clinical Practice Guideline5では、具体的教育内容の項目について記載があるが、エキスパートオピニオンに基づいたものである。
【参考文献】
1. | 佐藤征英,下畑由美,中原圭子,成松真由美,財前ひとみ,山下 恵,久保えつ子.坐骨部褥瘡が治癒した脊髄損傷者の一症例 再発予防に向けての退院調整.日本看護学会論文集:成人看護II.2005;36:390-1. |
2. | 堀 雅美,角谷暁子,折笠博子,濱田悦子,濱本千穂子,石倉直敬,川上重彦.褥瘡形成を繰り返す脊髄損傷患者への援助 再発予防にむけて.日本褥瘡学会誌.2001;3(3):351-4. |
3. | 小川奈緒美,田中秀子,豊田美和,斎藤 華.脊髄損傷で褥瘡のため入退院を繰り返す患者の治癒環境の整え 精神的関わりを通じて.日本創傷・オストミー・失禁ケア研究会誌.2002;5(2):26-30. |
4. | 塚原茂樹,近藤龍雄,竹内純子,水野智之,妹尾卓馬,菅沼千佳.褥瘡治療へのPTの積極的介入 訪問リハビリを通しての症例報告.理学療法研究,長野.2006;34:58-60. |
5. | Wound Ostomy and Continence Nurses Society. Guideline for Prevention and Management of Pressure Ulcers. WOCN Society, Glenview, IL. 2003;24. |
CQ2 | 褥瘡発生、再発を予防するために、患者やその家族(介護者)へ退院後どのように継続教育を行えばよいか |
推奨
推奨度 C1 | 医療者からの定期的な電話によるコンサルテーションを行ってもよい。 |
推奨度 C1 | 遠隔操作による画像を介して、定期的な医療者による皮膚アセスメントを行ってもよい。 |
【エビデンスレベル】
継続フォローの方法に関しては、退院後電話で毎月褥瘡に関して確認する方法とスケジュール化されていない方法を比較し、褥瘡予防に関する知識の向上を研究したランダム化比較試験が1編1あり、エビデンスレベルIIであるが、結果として褥瘡発生率や再発率まで言及していない。
退院後、ビデオ画像を介し定期的に医療者が皮膚観察を行う方法と、定期的な電話での相談を受ける方法、特にプログラム化されていない方法の3つのアプローチ方法を比較した非ランダム化比較試験が1編2あり、エビデンスレベルIIIである。
退院後、ビデオ画像を介し定期的に医療者が皮膚観察を行う方法と、定期的な電話での相談を受ける方法、特にプログラム化されていない方法の3つのアプローチ方法を比較した非ランダム化比較試験が1編2あり、エビデンスレベルIIIである。
【解説】
- 退院後電話で毎月褥瘡に関して確認する方法とスケジュール化されていない方法を比較し、退院後は、介入群がコントロール群よりも予防に関する知識は高かったが、統計学的有意差は出ておらず、発生率に関する評価も行っていないため、褥瘡予防知識が発生率や再発率に及ぼす影響は不明である1。そのため、定期的な電話のコンサルテーションの有効性を裏付けるものではない。
- 遠隔操作によるビデオ画像を用いた介入群が、褥瘡発生報告が最も高かったが有意差はなかった1。これは、ビデオを通して医療者の観察回数が多かったため、発見率が高かった可能性があると考察されている。発見された褥瘡も他の群に比較して、浅い褥瘡の割合が多かったことより、褥瘡早期発見に効果的であることが示唆される。
- 退院後は教育プログラムの有効性を長期的に評価する必要があるが、その有効性を長期的に調査した研究論文はない。褥瘡発生率や再発率、既存の褥瘡の治癒率などをアウトカムとした指標で継続的な評価を行うことが期待される。
【参考文献】
1. | Garber SL, Rintala DH, Holmes SA, Rodriguez GP, Friedman J. A structured educational model to improve pressure ulcer prevention knowledge in veterans with spinal cord dysfunction. J Rehabil Res Dev. 2002;39(5):575-88. |
2. | Phillips VL, Temkin A, Vesmarovich S, Burns R, Idleman L. Using telehealth interventions to prevent pressure ulcers in newly injured spinal cord injury patients post-discharge. Results from a pilot study. Int J Technol Assess Health Care. 1999;15(4):749-55. |